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「朝食」

目覚ましがけたたましい音を立て、ボクを「世界」に引きずり出した。ボクはいつも感じる不快感を頭の隅に残しつつ、仕方なくベットから体を起こし、カーテンと窓を開けた。

ボクはベットに腰をかけたまま、いつもの朝一番の仕事、つまり、愛機のパソコンを立ち上げた。

立ち上げると言っても、ウインドウズ98からかなり早くなり、最新OSのウインドウズ01になると、その作業にほとんど時間を要しなくなった。つまり、電源を入れると同時に、パソコンが使えるようになったのである。

パソコンが立ち上がると、それと同時にインターネット・エクスプローラー7.03も立ち上がるようになっている。すると画面には、いつものように、インターネットから配信されてくるプッシュ型のニュースが現れた。どうやら、大したニュースはないらしい。

次に、これも朝の日課である、電子メールのチェック作業。昨日の夜もちゃんと全てのメールを読んでから寝たのだが、既に夜の間に、時差のある世界各地の友人、仕事先、ダイレクトメール会社から、約50通あまりのメールが送られてきていた。一部、仕事に関係あるメールはモバイルに移し、残ったメールを読み始めた。文中から、あらかじめ登録しておいた単語量の「重さ」によって、その内容を自動判定し、いらないメールは勝手に捨ててくれるソフトが一般化してから、この種の作業は本当に楽になった。

とりあえず、一覧メニューで全てのメールの送り主をチェックしていると、その一番下に、妻からのメールが届いている事が分かった。ボクが寝てから送信したらしい。これも、いつものことである。

メールは直接会ってしゃべったり、電話をかけることとは違い、好きな時に送れ、好きな時に読めるので、お互いの時間を拘束することなくコミュニケーションがとれる、大変便利なツールである。

さっそく妻のメールの番号を入力して読んでみると、今日の妻の予定が現れた。どうやら彼女は、今夜は大好きなミュージシャンのコンサートに行くらしい。そういえば、最近は、そのことについてのメールばかりであった。これで明日のメールは、そのコンサートの感想でいっぱいになるだろう。

ボクたちは、こうして頻繁にメールをやり取りすることによって、非常にいいコミュニケーションをとっている。お互いのスケジュールや、それぞれの会社で起こったこと、楽しかったことなどをメールでやりとりすることで、2人の考えていることや感じていることが、本当に手に取るように分かる。不満や愚痴も直接ぶつけるわけではないので、お互い冷静になって、相手の意見を聞くことができる。だからボクたちは、ケンカらしいケンカをすることもない。

直接的な会話だけがコミュニケーションではない。逆にそうすることによって、失敗する夫婦が増えている中、メールでしか接点がないとはいえ、ボクたちは下手な夫婦より、よっぽどうまくいっている。

一通り全部のメールを読み終えてから、ボクはキッチンにいって朝食の準備を始めた。

僕はしっかり朝食を摂るタイプである。ご飯に味噌汁は欠かせない。いつもその他に、おかずを2品ほど作ってしまうので、毎朝どうしても時間が足りなくなってしまう。妻が手伝ってくれればいいのだが、それは叶わぬ願いである。とは言いつつも、ボクも別に料理は嫌いではない。だから、毎朝文句は言いつつも、実際は結構楽しみながら朝食を作っているのである。

味噌汁が軽く煮立ち、どうにか支度が整った。今日も、我ながらいいデキである。

テーブルの上に食器の準備をしてから、ボクは再び自分の部屋に行き、パソコンの画面上であらかじめ登録してある妻のアドレスをクリックし、「朝食ができたよ」というメールを送信した。

すると、しばらくしてから、隣の部屋で、妻が起きだす気配がした。

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