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各種感想・考察文

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既存作品の感想や考察など。 作品の形態やジャンルはいろいろ。
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2022年7月の記事一覧

「放送禁止」1 考察①

 2003年より、フジテレビで不定期に放送された「放送禁止」シリーズ。  その第一回について、考察を綴ります。  随分昔の作品ですから、何一つ考慮せずネタバレします。  20年近く前の作品ですが、DVDで販売されていますから、よろしければ御覧ください。  YouTubeにフル動画が上がっているようですが、公式チャンネルなのか判らない上、音声が一部途切れているようなので、そちらはあまりおすすめしません。  このドラマシリーズは、いわゆるフェイクドキュメンタリーです。  ドキュ

「放送禁止」1 考察②

「放送禁止」第1回の考察について、綴ります。  前回、「財前は、実行犯ではあるが、黒幕ではない」と書きました。  では、他に怪しいのは、誰か。  そのあたりについて、書こうかと思います。 ■なぜ廃ビルで肝試しができたの?  取材陣が、昼間、撮影のためにビルに入るとき、財前は入り口の鍵を開けます。  つまり、この建物は、昼間ですら、普段は施錠されているということです。ならば夜は当然施錠されてるに決まっています。  ではなぜ、若者4人は、ビルに入れたのでしょう。  鍵が開い

「放送禁止」1 考察③

「放送禁止」第1回の考察について、綴ります。  今回は、前回の続き。 「他に誰が、どの程度怪しいのか」について綴る予定です。 ■藤堂について  財前と同様、一連の失踪事件に深く関与していそうだと、簡単に推測できるのが、藤堂です。  取材チームが襲われたのが、藤堂の別荘、しかも、藤堂のインタビューの真っ最中です。無関係であるはずがない。  ただ、この人の場合は、あんまり中心人物である感じがしません。  どこか小物っぽいんですよね。  藤堂は、小さな出版社を経営していた

ルパン三世・原作のススメ

 色気のある悪党が好きです。  ただ目つき顔つき性格口ぶりが悪いだけとか、ただただ粗暴なだけとか、頭の悪さを暴力だけでカバーしようとするとか、そういう下品な馬鹿はお呼びでない。  いつもどこか冷静で、笑っているときでもどこか酷薄で、蜜のように甘く、毒針のように鋭く、己の才覚一つで欲しいものをすべて手に入れていく、底の知れない悪党が好きなんです。  あくまでも、作品のキャラクターとしてということですよ。  現実の犯罪者はダメ。  現実でそんな人間に目をつけられたら、人生棒に振

「放送禁止」1 考察④

 「放送禁止」第1回の考察を、綴ります。  今回は、あのビルの中で、何が起っていたのか、そして、この物語の真相についての考察を綴ってまとめます。 ■ビルの3階に残っていたもの  廃ビルの3階に元々どんな会社や団体が契約していたのか、今では設備はあらかた撤去されているので想像するしかないんですが、わずかに残っている痕跡が、「壁に描かれたZと読めるマーク」と「仏画らしき絵」です。  パッと見て「新興宗教団体が入ってたのかもな」という印象になります。  Zが何かのシンボルマ

芥川龍之介「藪の中」考察①

 芥川龍之介の「藪の中」について、あれこれ綴ります。  未読の方は、青空文庫にテキストがありますから、是非お読みください。 ■概要  非常に短い短編です。  文章の最後まで目を通すだけなら、30分もかからないと思います。  長い時間を必要とするのはそこから先、というタイプの作品。  黒澤明の映画「羅生門」の原作となった小説です。  芥川は「羅生門」という題の小説のほうが有名なので、集客のことを考えて、映画のタイトルと、いわゆるお白洲の舞台設定だけ、羅生門に変えてみた、と

芥川龍之介「藪の中」考察②

芥川龍之介「藪の中」について、綴ります。  今回は、前半四人の証言について、それぞれ個別に考えます。  次回、後半三人の証言について個別に考え、その後関連させて考えていく予定です。   ■木樵りの物語について  男の死骸の発見者の証言です。  私には、この作中の登場人物の中で、この木樵りの証言が最も信頼がおけるように感じられます。  その根拠は後述しますが、木樵りの証言は、まずそのまま受け取ってもよかろうかと、私は判断しました。    木樵りが発見した死体の状況は以下の通

芥川龍之介「藪の中」考察③

 芥川龍之介「藪の中」の考察について、綴ります。  今回は、後半3人の供述について。  後日追記編集するかも知れません。  なお今回は、3人の供述について、「事実として話していること」と「主観による推測」は記していますが、「嘘や隠蔽」を詳細に判別するということはあまりしません。それは次回以降の予定。  今回はあくまで「こう供述していた」「それによりこう考えられる」程度のことを記す予定です。 ■多襄丸の白状について  本件の容疑者として捕らえられたのは、多襄丸という盗人で

芥川龍之介「藪の中」考察④

 芥川龍之介「藪の中」について、綴ります。  今回はまず、時系列のまとめから。 ■時系列  ほぼ事実と思われることを列挙します。 日時不明 武広と真砂が結婚する。 昨日     武広と真砂がふたりで若狭へ出立する。 昨日午頃   旅法師が武広と真砂を、関山から山科への路上で見かける。 昨日午少し過ぎ 多襄丸が、武広と真砂と出会う。 この間、多襄丸と武広と真砂との間で何かがあり、武広が死ぬ。 昨日午後7~9時 多襄丸が、粟田口で捕らえられる。 今朝      木樵