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無門関・考察

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無門関の公案の、個人的な考察です。
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2022年2月の記事一覧

無門関第五則「香厳上樹」②

 第五則「香厳上樹」について綴ります。  今回は主に、評唱と頌についてです。  現代語訳はこちら。  いわゆる禅問答などをみると、思うんですけど。 「弁舌で相手をやり込められたら勝ち」みたいな風潮、ないですか?  昔は特にそうだったイメージがあります。  経典を片っ端から暗記し、その知識量と弁舌で相手を圧倒できたほうが偉い、とされる感じ。  もちろん、真に優れた禅僧も、たくさんおられると思うんですけど。  で、無門は、当時の禅を取り巻くそういう現状が、いやだったんじゃな

無門関第五則「香厳上樹」①

 第五則「香厳上樹」について、綴ります。  今回は主に、本則についてです。  現代語訳は、こちらをどうぞ。  香厳が、お弟子さんたちに、ちょっと突拍子もないシチュエーションを持ち出して考えさせている、という場面です。  しかし、今までの公案に比べると、まだ考えやすいように感じています。  とりあえず、「いったいなぜ、そんな状況に」と、双方につっこみたい気持ちで一杯なのですが、それはひとまずこっちに置いておきます。 「何故達磨は西からやって来たのですか」  こう訊いた樹の

無門関第四則「胡子無鬚」②

 無門関第四則についてです。  今回は、最後に注意事項があります。必ず読んでください。  今回は、前回の続きを綴ります。  公案の現代語訳は、こちら。  第一則で、「人や物は、それを眺める人によっては、その姿が大きく変わることがある」ということが書かれていました。  だから、余計なフィルターは、できる限り外して眺めるほうがいいと。  或庵は、ある人間の本質に、達磨を見たように感じた。  そして、もしかしたら、明晰夢を見ているような状態だったため、姿形というフィルターが外

無門関第四則「胡子無鬚」①

 胡子無鬚について、あれこれ綴ります。  現代語訳については前回をご覧ください。  そもそも、現代に伝わる達磨像には、髭はあります。  この公案が作られた当時もそうだったはずです。  現実の達磨には、髭は、あるのです。  ではなぜ、或庵は「達磨は、なぜ髭がないんだろう?」と言ったのか。 「達磨は、髭がない」ではない。 「達磨は、髭がないと思う」でもない。 「達磨は、髭がないほうがいい」でもない。 「達磨は、髭がなくても不思議はない」でもない。 「達磨は、なぜ髭がないん

無門関第三則「倶胝豎指」

 倶胝豎指に関して、いろいろ綴ります。  公案の現代語訳については、前回をご覧ください。  今回、倶胝の「一指頭の禅」の核心について、独自の見解を綴ってます。  あくまでも私の推測に過ぎませんが、それでも、もしかしたら、これを読んだら「一指頭の禅」を実際にあなたが受けた場合、その効果が著しく損なわれる可能性があります。  なので、それが嫌だと思う方は、ここで読むのをやめてください。  それでもいいという方だけ、お読みください。  私としては、読んで頂けたら、やはり嬉しいです

無門関第二則「百丈野狐」②後半

 百丈野狐、後半について綴ります。  公案の現代語訳については、前々回をご覧ください。  その晩、百丈が昼間の出来事を弟子の皆に話して聞かせた。  すると、黄檗という弟子が、百丈に質問を投げかけた。  百丈がそれに答えようとした。  そしたら、黄檗が百丈をいきなり張り倒した。  百丈はそれを笑って喜んだ。  簡単に言うと、こういう流れです。  普通に考えると、多分わけがわからない。  ここで、前半部について考えたことが、結構重要になってきます。  この中身を踏まえて綴りま

無門関第二則「百丈野狐」①前半

 今回は、老人が成仏するまでの前半について、綴ります。  公案の現代語訳については、前回をご覧ください。  私は、仏教についてはあまり詳しくないので、そもそも、悟りを得たらどうなると考えられているのか、よく知りません。  仏教の開祖である釈迦は、「この世の出来事には全て、原因がある。それを正しく理解すれば、苦しみを避けることが出来る」というようなことを教えた人だと、私は勝手に解釈しているんですが、この、苦しみとその原因の法則のことを多分「因果」と呼ぶんでしょう。  そして、

無門関第一則「趙州狗子」

 これから不定期に、無門関の公案について、あれこれ考えます。  京極夏彦の「鉄鼠の檻」を読んだ際、作中に登場した公案に興味を惹かれたのが切欠です。  つまり、私は禅宗の僧侶ではないので、自由にやります。  修行している人じゃなければ公案は触っちゃダメ、っていうのなら、そもそも公案集は門外不出になってなければダメでしょ。  岩波文庫から現代語訳の書籍が出ている時点で、素人でも自由に考えていいものなのだと、私は解釈しました。  ろくでもないことを書くかも知れませんが、怒らないでく