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ポルノグラフィティ『ワン・ウーマン・ショー~甘い幻~』歌詞解釈/そうそれは友に、できるならあなたに

外出自粛のゴールデンウィーク、ねこまつさんのブログを日がな一日読んでいまして。

まさに上質な授業を受けているみたいに、は~~なるほど~~と感嘆の声を漏らし続ける贅沢な時間でした。

歌詞に限らず僕の関心事の多くは「言葉」に紐づいていて、しかもポルノグラフィティという大好きなミュージシャンが「戯れ甲斐のある」言葉たちを放ってくれるもんだから、もう一生退屈する気がしません。

で、こうしちゃいられん、何か書きたい!!と笑。

『ワン・ウーマン・ショー~甘い幻~』は、2014年にリリースされた41thシングル。

「見んさい」シングルと題された『俺セレ』に続く「聞きんさい」シングルです。

とにかく美しいバラード。最初から最後まで晴一さんのギターが雄弁。

彼の「泣きのギター」が天下一品ゆえに、ポルノは「もはやツインボーカル」と言われることもありますが、この曲がまさにそう。

テレキャスが奏でる叫びのような音は、昂る恋心のようでもあり、尽きせぬ悲しみの泉でもあり。

しかしながらリリースされた当時は、タイトルとMVが攻めすぎてて「ポルノどうした??」とファンの中でも困惑が広がっていた印象。

MVは、単純に「満点の星空の下で演奏する2人」とかにしたくない!という矜持を感じる意欲作。しかしYouTubeのショートバージョンだと確かによくわかりません。

(この曲に限らず、ポルノには「MVをフルで公開してくれ!!」と思うことが多々ありますね笑)

また『ワッツイン?』のインタビューでは、晴一さんが「僕としては狙いに狙ったものだったけど、すごく受け入れられたという感触にはならなかった」と話していて、なんというか、ちょっともったいない曲。

でもこの曲めちゃくちゃ良いんですよ!ということを少しでも言いたくて、noteを書いています。

「こんな私でも幸せになれるかな?」
冗談みたいにあなたに聞いたけど
星降る夜空の見守る口づけが
本当の気持ちを言葉にさせたの

二人称で「あなた」に呼びかけるスタイルで始まる歌詞です。状況はとてもわかりやすい。「5W1H」がちゃんとしてます。

まあ、とはいえ表現技法はふんだんに使われてて、仮にそういうの一切なくストレートに書くとしたら、

流れ星の瞬く夜 あなたと口づけをしたら
本当の気持ちを言いたくなった
「こんな私でも幸せになれるかな?」と
冗談みたいに聞いてみた

みたいな感じになっちゃいます。悪くはないけどフツーですね。

(「星降る」は流れ星じゃなくて単に「雨が降る」とかのネガティブなイメージを重ねてると読んでもいいんですが、流れ星のほうがあとあと都合がいいので、流れさせときます。)

なんせ倒置法で、「こんな私でも幸せになれるかな?」が前奏もなしに飛び込んでくるところに意味があるんだと思います。

つまり、「つい口を衝いて出てきてしまった台詞」であることが表現からも読み取れる。そしてあとから「口づけ」のせいなんだ、と補う……という心の動きですね。

「口づけ」を主語にしてるのも地味にポイントです。あまり見ない用法なのに、なんだか違和感もなくサラッと聞こえてしまう。晴一さんの術中に完全にハマっている。

口の悪い友達が言うわ
ずっと朝からニヤついてるって
あなたのことを考えてたから
本当 馬鹿みたいね

「ずっと朝から」ってことは、第1連の「星降る夜空」とは違うタイミング……たぶん、「口づけ」の翌日以降。

この曲は、過去と現在とを行きつ戻りつする、じつは少し複雑な構成になっているみたいです。

さて。

早速核心なんですが、この『ワン・ウーマン・ショー』に登場人物は全部で何人でしょうか。

私、あなた、友達、で3人?

……しかしそれ、なんか「その友達要る?」ってことになっちゃいますよね。

晴一さんの信条は「物語の中に出てきたピストルは必ず撃たれなければならない」。劇作家チェーホフの言葉。

だとしたら、このやたらと登場する「友達」は「あなた」と同一人物なんでしょう。きっと。だから登場人物は2人です。

晴一さんはラバップ会報のインタビューでも、歌詞については「"俺だな"という感じ」と語っていました。

で、その「友達」表記は、決して「恋人」にはなれなかったことの証

星が瞬くロマンティックな舞台で、「口づけ」までは進んでも、恋の契りを結ぶには至らなかった。

その「口づけ」の翌日に、「朝からニヤついてる」と言ってくる相手の男性……。プレイボーイ感がありますね。

そもそもこの「口づけ」は自分と相手のどっちからアクションを起こしたのか明記されていません。どっちだろう。

主人公の女性がこれだけ悩んでいるんだから、たぶん相手の男性側……な気もしますが、成熟したこの大人の女性が自分を律しきれずにキスをしてしまい、それゆえに悩んでいる可能性もありそう。

……と書いたのですが、改めて次の連を見たら「これ主人公側からやったな?」と思うようになりました笑。

場面は「例の夜」に戻ります。

目と目が合ったら 戻れなくなっていた
これまでの恋と 違うと思った
星降る夜空の大きなスクリーンが
映し出したのは "ワン・ウーマン・ショー"でした

この前半の2行、「ついキスをしてしまった言い訳」のように読めませんか?

第2連の「あなたのことを考えてたから/本当 馬鹿みたいね」はたぶんダイアローグではなくモノローグだと思いますが、サビの「目と目が~」は正直どっちともとれる。

でも、最後の連で「友達」のセリフとして「目と目が合ったら~」が出てくることを考えると、ここは口に出して言っちゃってるセリフな気がします。

「いきなりキスしてごめん。目と目が合ったら、戻れなくなってた。これまでの恋と違う気がして」

「目と目が合ったらすぐその気になるのが、お前の悪い癖だよ」

こんな具合の会話でしょうか。

そして「大きなスクリーン」……タイトルにもなっている「ワン・ウーマン・ショー」。

恋愛を舞台にたとえている。ポルノファンには、ピンと来るはず。

もしこれが戯曲なら なんてひどいストーリーだろう
進むことも戻ることもできずに
ただひとり舞台に立っているだけなのだから
——『アゲハ蝶
舞台の真ん中に躍り出るほどの
役どころじゃないと自分がわかっている
——『ジョバイロ

あえて曲のイメージを重ね合わせてみます。

『ワン・ウーマン・ショー』の「あなた」は、「ヒラリヒラリと舞い遊ぶように姿見せたアゲハ蝶」のように極彩色の素敵な人であり、

この恋は「あなたが気付かせた恋があなたなしで育っていく」ような儚く悲しいものだった。

しかもその舞台は「星降る夜空」、つまり流れ星の混じる夜空。

と来れば、

人は誰も哀れな星 瞬いては流れていく
燃え尽きると知りながらも誰かに気付いて欲しかった

この2行までも想起できそうです。

詳しくはねこまつさんの『ジョバイロ』解釈に譲りますが、流れ星というのは「一瞬だけ美しく流れたその直後には、燃え尽きることが確定している」存在。

だって「友達」の男性に、関係性が壊れる危険さえ冒してキスまでしてるんだからこれは相当な「賭け」のはずで、まさに流れ星の一瞬の煌めきのような燃え上がり方。

それでいて、「すぐに燃え尽きる=相手にされないで恋が終わる」こともまた、「星降る夜空」の流れ星のメタファーにより暗示されているように思います。

そして『アゲハ蝶』の、この一節にも注目してみたい。

詩人がたったひとひらの言の葉に込めた 意味をついに知ることはない
そう それは友に できるならあなたに届けばいいと思う

ここにも「友」が出てきます。一ヶ所だけ。

これだけ綺麗に無駄なく構築されている『アゲハ蝶』の世界観に、ただ一度だけ姿を現す「友」。

解釈の分かれるところだと思いますが、これも「あなた」と同じなのでは、という線で考えてみます。

詩人(=自分)の言葉の意味が「友」に届けばいい……いやできるなら「あなた」に届いてくれ。

一瞬だけ「友」と呼んで気持ちを押し隠し、それでもこらえきれずに「あなた」と言ってしまう。

「友」のままで満足していればよかった、と考えると筋が通ります。

あなたに逢えた それだけでよかった
世界に光が満ちた
夢で逢えるだけでよかったのに
愛されたいと願ってしまった

流星のきらめく夜には「あなた」と呼び、恋に破れ、「友達」という呼び方へと戻っていく、『ワン・ウーマン・ショー』の主人公となんだか似ていませんか?

さて、残りの歌詞も見ていきましょう。

仲の良さそうな家族連れに
自分重ねて慌てて消した
笑っちゃうほど恋をしてたの
本当 大人なのにね

「こんな私でも幸せになれるかな?」
冗談みたいにあなたに聞いたけど
星降る夜空の見守る口づけが
本当の気持ちを言葉にさせたの

家族連れのくだりはとってもストレートに意味がわかります。「友達」に「朝からニヤついてる」とか言われたあとか、別の日なんでしょうね。

そしてまたあの夜を思い出す。冒頭のリフレイン。

J-POPにおいて、サビの同じフレーズが何度も繰り返されることは珍しくありません。

しかし『ワン・ウーマン・ショー』の場合は特に意味もなくリフレインされてるわけではなく、「主人公があの夜を何度でも思い出している」ことの表現になっています。

「家族連れ」を見て、恋をしすぎてる自分を自嘲気味に笑って、冒頭の夜の場面をもう一度思い出す。自分のセリフをもう一度なぞる。

これがあるからこそ、Cメロにおける「私」のモノローグ、そしてラスサビでの「友達」の返答へとつながっていきます。

聞かせてよ あの時の あの瞬間に
その胸に浮かんだ答えは何?

~ギターソロ~

目と目が合ったら すぐその気になるのが
悪い癖だと 友達は言うわ
星降る夜空に朝日の幕が下り
静かに消えたのは 甘い幻

歌詞解釈なのに「ギターソロ」と入れざるを得なかった。(あまりにも存在感があって無視できなかった)

流れとしては、「こんな私でも幸せになれるのかな?」という問いの「答えは何?」と自問し、泣きのギターを経て、「すぐその気になるの、悪い癖だよ」という相手のはぐらかしを思い出す。

だからこそラスサビで使われる言葉は「あなた」じゃなくて「友達」。無回答ってことは、「友達のままでいようよ」という宣告に等しいから。

こんなに1曲を通してあれこれ回想したり自嘲したりしてきたのに、ラスサビまできて結局「友達」……。ちっとも進展しない。救いがない。

そして「星降る夜空に朝日の幕が下り」る。

この最後のフレーズがほんとに好きです。「夜明け」をこれほど言葉少なに美しく切なく表現した人が他にいるでしょうか。普通は喜びの象徴であるはずの「夜明け」が、ここでは静かなピリオドのように使われます。

ウソも痛みも綺麗に隠し、見て見ぬ振りをしてくれる優しい夜のしじまは、昇る太陽に焼き尽くされた。

全てを白々と見せる、嫌いな朝がやってきた。「甘い幻」は、近づくことのできないオアシスのように消えていく。

かくして、"ワン・ウーマン・ショー"の舞台はお仕舞いです。

全体的には平易な言葉で構成されている曲だけど、やっぱりまぎれもなく晴一節全開。

ライブではまだ一回しか聴いたことがないです。2015年、ダイキャスの横アリ追加公演。ツアー本編では演奏されなかっただけに喜びもひとしおでした。

また聴きたいな。進化し続けるポルノグラフィティなら、歌うたびに新しく素敵な「ツー・マン・ショー」を見せてくれる気がします。

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資本主義なのでサポートは欲しいです。

あなたに逢えた それだけでよかった 世界に光が満ちた
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人文学の素人。たまにライター。都立西高67期→東大文学部国文(→広告)/漱石研究初心者/いいねやフォローで出るリアクションメッセージはポルノグラフィティの歌詞です。

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