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需要と供給のバランスを考えれば「玉の輿」などこの世には存在しない。

婚活において「いい人がいない」と愚痴をこぼす輩は全員、あることを忘れている。
それは「【自分】という商品が、他人から『選ばれる』立場にある」ということだ。

理想を高く掲げるのは、あなたの自由。だが自身とかけ離れた条件を望んだところで、該当する人とあなたはおそらくマッチングしない。

国籍、出身地、家族構成、学歴、身長」は、誰もが変えられないスペックである。産まれる家は選べないし、過去は変えられない。止まってしまった身長も、加齢とともに縮むことはあれど、伸びることはまれだ。
対して「職業(収入)、体型、外見」については、現時点がイマイチであっても、将来的に変化する可能性を秘めている。伸びしろの期待できそうな人ならば、長い目で見るというのもアリだろう。

人は、同じステージの人としか出会えない

私は最初、相手の男性に求める条件を以下にしていた。

・身長:170センチ以上
・年収:600万円以上
・居住地:首都圏
・学歴:高卒以上
・国籍:日本人

他にもいくつか項目があったが、あとは「不問」にしておいた。

「年齢」「体型」「婚歴」という、およそ誰もが何らかの条件を指定しそうな項目をブランクにしたのは、マッチング確率をアップさせようという魂胆だ。還暦以上だってダンディーな人はいるし、巨漢だってやせればいいし、婚歴はどうでもいい。「過去にこだわない」のは、私の菩薩的長所だ。

前回述べた通り、私は婚活サイトに登録して半年間、偽のプロフィールでマッチングした男性たちの誰とも会わず、メッセージのやりとりだけで過ごしてしまった。
けっこうな数のリアルデータが収集できたという意味で取材的には収穫あったが、肝心の「出会い」に到達した人はゼロ。
「これじゃアカン」とプロフィールを等身大の私に変更し、同時に相手の条件も変えた。

・身長:170センチ以上
・年収:500万円以上
・居住地:不問
・学歴:高卒以上
・国籍:不問

年収の最低ラインを下げ、居住地と国籍をブランクにしたのは、「ありのままの私」でマッチングする自信がなかったからだ。情けない。

47歳。バツイチ。外見は「ちょうどいいブス」レベル。
性格は温厚だし、酒もそこそこ飲める。当時はアイコス愛煙家だったので、喫煙者の男性もOK。嫁向きというよりも飲み友達向きなキャラは、リアルではモテても婚活界でモテるとは言い難い。

婚活界において「35歳」のラインは、マッチング確率を天と地ほどに分ける。男性の浅はかな知識では「35を過ぎたら子供は期待できない」という思い込みがあるため、実際はまだ産めるとしても「35歳以上」の女性はマッチングのフィルターに引っかからなくなってしまう

35歳以上でマッチング件数を増やすためには、子供を望まないゾーン(アバウト50歳以上)まで条件に入れるか、子供を持つことを目的としていない婚活男性(少数派)とのマッチングを根気よく待つしかない。47歳ならなおのこと、条件を緩めにしなければ誰ともマッチングしなくなる。

熟女は万人受けではない。それが現実だ。

受け身がダメなら、自分から行くしかない

婚活界は女性上位(アクションを起こすのは男性で、女性はマッチングした相手から選べばいい)である。だがアラフィフの熟女は、待機しているだけでは滅多にマッチングしない。

アプローチ上等。私は女豹だ(笑)。受け身でいるより「狙った男を落とす」ほうが、感覚的には向いている。
すぐさま私はマッチング画面に移動し、出てくる男たちを「アリ/ナシ」で分別した。アリの男性に対しては「いいね!」(ハートマーク)をつけるようにした。

私が登録していた婚活サイトは、「いいね!」をつけると相手に「○○さんがいいね!しました」と通知が飛ぶ。メッセージを出すよりライトに「あなたを気に入っています」というアプローチになる。その通知からプロフィールを見てもらい、相手も私のことを気に入れば、メッセージが飛んでくる。

こちらから一発目のメッセージを送らないあたりアプローチとしては弱めではあるが、実際この「いいね!」は9割くらいの確率でメッセージに繋がったのだから、アクションとしては及第点だろう。

マッチングと「いいね!」アプローチにより複数の「そこそこイケメン」と出会えそうなノリになってきた私は、調子こいて「いっそハイレベルなイケメンとも出会ってみようかな」などと欲が出た。

そこの婚活サイトでは、手動で条件検索をすることもできる。マッチングには出現しなかったイケメンたちも、検索結果にはヒットする。

私は「30~50代、身長180センチ以上、年収1千万以上、バツイチ子供なし」という条件で検索をかけた。

若すぎてもジジイ過ぎても微妙だし、180あれば高身長の私が小さく見えるし、年収は高ければラッキーだ。これらは自分的にはマストな条件ではないが、世間的にはイケメンの類になる。
未婚を対象としないのは、バツイチのほうが結婚に対して無駄に幻想を抱いていないから。バツが2以上あるのは、結婚生活に対し「堪え性のない」タイプか、安易に結婚してしまう「後先考えない」タイプなので除外した。完全に己を棚上げした条件だ。

ヒットしたのは100名以上。全員チェックする根気はさすがになかったので、私のプロフィールと相手が出している条件のマッチング確率が高いほうから上位20名に「いいね!」をつけてみた。

結果、メッセージが飛んできたのはたったの1名。先のマッチング経由に比べたら、驚くほど確率が低い(しかも1往復でメッセージも途切れた)。

婚活サイトもリアルも同じ。探せばハイレベルなイケメンなどあちこちにいるが、そいつらが私を好むかは別の話
私的にハイレベルだと思ったイケメンたちは、きっと20~30代の石原さとみみたいな娘たちにアプローチしているのだろう。あるいは自分と釣り合いのとれる学歴と収入の「未婚」女性か。

忘れてはいけない。ここは婚活サイトである。

男女とも、婚活する必要のない「出会いに恵まれている」人は婚活サイトにはいない(※)。
つまり、検索でヒットしたハイレベルイケメンたちも、日常では「あまり出会いがない」人だ。

だが若い女性が婚活サイトで激モテするのと同様、スペックの高い男性はマッチング確率も格段に高い。女性からの積極的なアプローチも多く「いいね!」レベルでは華麗にスルーされるのがオチだ。

ハイレベルイケメンの中には、アラフィフ熟女に対し「怖いモノ見たさ」くらいの好奇心を抱く男性がいるかもしれない。だが、お近づきになりたいと思うほどの奇特な人は、滅多にいない。

メッセージのやりとりだって手間がかかるし、デートとなれば時間やお金もかかってくる。
いくら婚活するほど心に余裕があっても、時間的に暇なわけではない。同時進行する人数はその人のキャパ次第だが、リアルでもモテそうな男性は「熟女に限る」というタイプでもない限り、フレッシュで美味な女性を優先し、珍味や発酵系は除外する

頭ではわかっていても、実際に反応がないとガッカリする。
婚活界において、自分はその程度なんだという「現実」を突きつけられ、私はちょっぴり心が折れた。

落ち込んでばかりはいられない。明日も仕事だ。ここは酒をかっくらってサッサと寝るのが正解だ。私は冷蔵庫から発泡酒の500ml缶を取り出し、腰に手を当ててグビグビと飲んだ。

ふと、鏡に映る自分と目が合った。
ジャージの上下。寝癖のままの髪。
誰もいない、独り暮らしの自宅仕事だからって、無防備にもほどがある。

(女ヤモメはこれだから……)

ため息をつき、残りの缶ビール(否、発泡酒)を飲み干した私は、着替えもせずベッドにダイブした。
カーテンの隙間から、青い月がわずかに覗いていた。

(つづく)

※婚活サイトなんかやる必要のないイケメン(20代)も、実際には遭遇した(そしてデートもした)。そのネタについては今後書くので乞うご期待。

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