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本を愛してやまないnoteディレクターがいま考えうる、出版社×noteでできること全部。

最近、出版社のnoteの利用が増えています。本が大好きなわたしとしては、出版社のあたらしい挑戦のお手伝いをできることが、とてもうれしいです。

今日は、「出版社がnoteをつかうとどんなことができるの?」「自社でHPをつくるのとなにがちがうの?」という疑問にお答えすべく、いま考えうる出版社がnoteでできることを、担当している文藝春秋さんの事例を中心にまとめていきます。

ちなみに、以下がこの記事の目次ですが、「書籍のプロモーションをする」「サブスクリプションメディアをはじめる」は、noteを使う大目的のはなし。「あたらしい書き手やクリエイターとつながる」以降は、その目的を達成させるためにぜひやってほしいことを具体的に書いています。後半が特にお伝えしたい内容になっていますので、どうぞお付き合いください。

書籍のプロモーションをする

noteを活用する目的としていちばん多いのは、「書籍のプロモーションをしたい」だと思います。たとえば、著者インタビューや試し読み、ときには全文公開してしまう事例も、noteで増えています。

2017年末からnoteをお使いいただいている早川書房さん(Hayakawa Books & Magazines(β))は、「noteはWEB版のPR誌」と考えて運用いただき、とても成功している事例です。

ほぼ毎日のようにさまざまなコンテンツが上がっていますが、編集部全員が各人の裁量でコンテンツを掲載しているのだそう。

具体的にどんな成果が出ているか?は、以前、早川書房の山口晶さんと溝口力丸さんにインタビューしたこちらの記事にくわしくまとまっていますので、ぜひご覧いただけたらと思いますが、全文公開した小野美由紀さん『ピュア』のPVが20万を超えたり(※インタビュー時点より更新。書籍の帯より)、電子書籍のセール情報記事からのコンバージョンが20%を超えたりと、その効果は凄まじいです。

(いきなり、大はしょりしてすみません笑)

サブスクリプションメディアをはじめる

昨年11月に文藝春秋さんが月刊誌『文藝春秋』の電子版文藝春秋digitalをnoteで始めたことをきっかけに、noteで課金制メディアをはじめる雑誌が徐々に出てきています。

これらのメディアは、noteの定期購読マガジンという機能を活用して、月額課金制でコンテンツを販売しています。イチから課金制のシステムを開発するのは人手もコストもめちゃくちゃかかりますが、noteの場合は初期費用ゼロですぐに始めることが可能。システムの保守ももちろんnoteが行なっていますので、メディア側は「いいコンテンツをつくる」ことに集中することができます

「いや、でも、WEBで読めるようになったら、その分、紙の読者が減っちゃうんじゃ……?」という不安をお持ちの方も多いと思います。実際にそうしたご相談がたくさんあります。

しかし、「紙の読者と食い合うことはない」と、「文藝春秋digital」のプロジェクトマネージャー・村井弦さんが東京新聞のインタビューで断言しています。

また、最近では、『TV Bros.』『LATINA』など、定期刊行を終了したり休刊になった雑誌が、次のフィールドとしてnoteを選ぶケースが出てきました。

さあ、「noteを使うとめっちゃよさそう!」なことばかり書いてきましたが、簡単にはじめられるからといって、はじめたらすぐに成果が出る、というわけではもちろんありません。ただコンテンツを掲載してくだけでは、noteというあたらしい場所であたらしい読者と出会うことは難しいと思っています。

noteのタグラインは「つくる、つながる、とどける。」。出版社の皆さんは「つくる」のプロですが、「つながる」「とどける」方法はデジタルと紙の本の流通とでは異なってきます。noteの中で「つながる」「とどける」ために、どんなことができるか?

ということで、ここからがこの記事の超・本題です!!

あたらしい書き手やクリエイターとつながる

「文藝春秋digital」はもともと、「紙のコンテンツをウェブに展開する」ということを主にやっていましたが、それだけではnoteであたらしい読者を獲得するには十分ではないと思いました。

そこでおすすめしたのは「note発のコンテンツをつくる」ということ。そうして、「ウェブから紙へ」をコンセプトにした「From 文藝春秋digital 今月のRE-PUBLISH」という新連載がはじまりました。「文藝春秋digital」に先に掲載された作品が、再編集されて雑誌に掲載されるという企画です。

このコーナーにはこれまで、岡田悠さん嘉島唯さんカツセマサヒコさん夏生さえりさんといったnoteで人気のクリエイターの記事が掲載されています。しかも、雑誌の挿絵には、noteで募集したイラストを起用! noteの中であたらしいクリエイターとつながり、一緒にコンテンツをつくりあげているのです

こうした試みは、紙の雑誌を読むことのなかったであろう若い読者に『文藝春秋』のことを知ってもらい、ファンになってもらうことにつながります。

イベントで読者との接点をつくる

noteではクリエイター支援の一環で、クリエイターとのイベントを開催しています。文藝春秋さんとも過去2回、イベントを行いました。

メディアとファンとのつながりをより濃いものにするためには、中の人の声や思いが伝わり、インタラクティブにやりとりができるようなイベントが、非常に有効だと考えています。

イベントではテーマにもこだわっています。雑誌に掲載しているコンテンツをそのままイベントにするのではなく、テーマをずらして企画しています。noteは「編集」「メディア」に興味を持っている人や、「自分でも文章を書いている」人が多いので、そうした人に届くようなイベントのテーマにしました。

そうすることで、あたらしい層に「文藝春秋digital」のことを知ってもらえるきっかけになったと思っています。また、中の人がどういう思いでメディアを運営しているのかを伝えること、「顔の見えるメディア」にすることは、いまの時代とても大事なことではないでしょうか

ちなみに、noteでイベントを開催すると、noteにイベントレポートをあげてくださる方がとても多いです! これにより二次的にイベントが拡散していく効果もあります。

読者参加型の企画で読者発のコンテンツを集める

メディアを運営する=コンテンツを全部自分たちで用意しなくてはいけない、と思っていらっしゃる方も多いかもしれません。しかし、noteにはクリエイターがたくさんいるので、「読者にコンテンツをつくってもらう」のがおすすめです

「文藝春秋digital」では、村上春樹さんの新刊『猫を棄てる』の発売に合わせて、感想文を募るコンテストを実施したところ、250を超える投稿が集まり、大変な盛り上がりを見せました。

光文社新書さんは、自分の好きな光文社新書の1冊について語ってもらう「#私の光文社新書」企画を実施し、さまざまなタイトルについてのアツい感想文が集まっています。

こうして集まったnoteを読んでいると、ファンの「好き」がつまったコンテンツって、やっぱり強いなぁと思います

マガジン機能を使うと、そうしたファンの声をまとめて見せることができるので、「こんなにアツいファンがいるんだぞ!」ということを可視化することもできます。noteは、ファンの輪をつなげていける場所なのです。

読者コミュニティをつくる

noteには今年の2月に、コミュニティ機能「サークル」が誕生しました。出版社さんにもぜひ使ってほしいなぁと思っていたら、ポプラ社さんがはじめていました!!

ポプラ社さんのサークルでは、小説好きの人たちとポプラ社の中の人(主に編集者)が、おすすめ本を紹介しあったり、読書会などをしていくそうです。

そう、サークルはまさに、ファンと一緒に「好き」を語り合ったりして、つながりを濃くしていくのにぴったり! noteでは今後、サークル機能の無料版の開発も見据えて、コミュニティ支援に力を入れていく予定です。

出版社がnoteを使う最大のメリットは?

noteを発信の場として選んでいただく理由として、「コストが安い」というのは、大きなメリットだと思います。無料のアカウントでも始められるし、法人向けのnote proプランでも、初期費用ゼロの月額5万円。

自前でイチからサイトを構築するより、明らかに初期コストも運用コストも安く始めることができます。

でも、私はそれ以上に大きな、noteを活用する理由があると思っています。それは、noteには本や活字が大好きな読者がたくさんいるということ。そして、素晴らしい書き手がたくさんいるということ、です。

わたしたちはnoteを「クリエイターの街」だと考えていますが、noteという街の住人になった暁には、その街でたくさんの住人と交流し、仲良くなっていただきたいと思っています。

それは企業でもメディアでも同じこと。一方的に情報を提供するのではなく、「noteにたくさんいる読書好きのひとや素敵な書き手と、どうやってつながるか?」を考えながら、noteをたのしんで使ってみてください。

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この記事では文藝春秋さんの事例を中心にお話ししましたが、他にもnoteをご活用いただいている出版社の事例はたくさんあります。

出版業界向けに開催したnote活用セミナーの動画がYouTubeにアップされているので、よろしければぜひご覧ください👇


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