vs秋田 1-0

 相手に良いようにボールを動かされて抵抗できずに喫した前半の2失点が重く伸し掛かり、相手が籠り出す時間帯まで形も作れずに敗れた水戸戦。最後に1点を返して前へのパワーを出した点はポジティブに捉えたいが、そこまでの内容が内容だけに何とも言い難い。

 兎にも角にも目の前の相手に挑む姿勢を持ち戦いたい今節の相手は秋田。秋田一体の一言でどのようなチームなのかが表現できる。
 前蹴って球際競ってAPT削る十八番のスタイル。最近は縦一辺倒ではなくミドルプレスも取り入れており、自陣に入ってきたところで一気に襲い掛かる形もある。これを徹底して毎年同じような順位で安定しているので、クラブとしては成功であろう。

 前節のような入り方をすればまず間違いなく開始数分で劣勢になると思われる。相手の圧力を逆手に取れれば言うことないが、多くは求めずロストの位置をなるべく敵陣にしたい。アウェイでは終盤にサイドからサイドに振って1ポイントを得た。相手の出力が減る時間帯まで何とかして誤魔化せれば勝機はある。

メンバー

 ウチは前節から2枚変更。小柳→風間、エド→惇希。小柳は契約上出場不可。エドの不在はアクシデントか勘繰りたくなるが、惇希が久しぶりにスタメン。ベンチには細貝も入った。

 対する秋田はスコアレスドローに終わった愛媛戦から1枚変更。諸岡→藤山。

前半

 秋田のキックオフで試合が始まったが、立ち上がりからウチはかなりアグレッシブに入った。風間とアマのCH2枚がセカンドボールに臆することなく突っ込んで相手とデュエル。マイボールになれば惇希が自陣からガンガン仕掛けていく。

 ウチの最初のチャンスは5分。梨誉の左足ミドルをブロックされたこぼれ球を瀬畠が回収し、酒井を経由して風間に縦パスが通る。風間はターンして前を向き、相手が寄せてくる前に右大外の田頭に付ける。そのタイミングでハーフスペースにいた仙波が前にスプリントしてスペースを作ると、その内側にいた梨誉に渡す。梨誉は1stタッチで前を向き、再び田頭へ。仙波のランニングによって作り出されたスペースに田頭が侵入し、そこから中にふわりと柔らかいクロス。このボールは河田の頭上を越え、ファーにいた惇希が胸でコントロールして風間に落とす。風間は右足でのフィニッシュを模索したがコースを切られていたためターンで左足に持ち替えて狙う。これは目の前の相手に当たってしまうが、こぼれ球に河田が反応。プッシュしたかったが、山田の飛び出しによって防がれる。
 セットプレーに起因する流れだったのである程度ウチが押し込んだ状態でスタートしたが、それでもハーフスペース使っての前進の仕方はここ数試合影を潜めていたものだった。

 秋田も直後の6分にチャンスを迎える。喜岡のフィードを吉田が頭で落として村松が斜めのパスを刺す。1列後ろに顔を出していた小松がパスを受けるとすぐに前を向いて、そのまま左足を振り抜く。虚を突くタイミングで放たれたシュートは櫛引も見送るほかなかったが、バーにクリーンヒット。
 秋田のトップが落ちた時のマークの受け渡しが中途半端になり、プレッシャーがかからずにシュートまで持っていかれた。

 10分過ぎた辺りからは対秋田戦っぽい展開になる。ウチも一歩も引かずに身体を当てに行くのでピッチ上に手を付く選手が増加。時にはウチが球際で勝ってカウンターのチャンスにも関わらず(コンタクトのない)頭部の痛みを装ってプレーの中断を誘発するなどの「らしさ」を見せた。危険な状況ならば止めるのもやむを得ないと納得するが、再開時には秋田の陣形は整っているし、倒れていた当該選手がいの一番にプレスに来るしで笑うしかない。ウチのベンチが抗議するのも当然である。
 それでも意図してか意図せずか、ボールを持つことを嫌う相手にボール支配率60%を超えるほど保持させた。秋田は敵陣に入ってボールを回しはするがクリエイティビティには難があるので有効打は少ない。基本的にCKかロングスローで時間かけて重心押し上げてくるので、櫛引はしきりに「(ラインを)上げろ」と叫んでいた。

 フィジカルコンタクトが増える中でもウチは冷静に対処して時計の針を進めつつ、駆け引きを行う。梨誉の推進力によって藤山にイエローカードを叩きつけたし、河田は喜岡とやり合いながらも上手くファウルを誘う。

 攻撃はやや淡泊ながら、1つ1つのプレーに気迫を感じる内容で前半をスコアレスで折り返す。

後半

 後半開始から秋田は栗本→小野原。戦術的意図があってのカード選択であろうが、カードを1枚もらっているCHを代えなかったことが結果として大きく響く。

 後半になってもウチは惇希がガンガン縦に仕掛けていく。右の田頭も徐々に前へ向かう姿勢を強く見せ、少しずつボールが動く位置が前に。

 そして55分、ここで1つ大きく局面が変わる。藤山のコントロールが大きくなったところを河田が回収したが、その際に藤山の無謀なチャレンジが河田の足に入る。この危険なプレーで2枚目の警告を受け、秋田は10人に。
 中盤の枚数を維持するために秋田ベンチは慌ただしくなり、前線の枚数を削る選択。57分、吉田→水谷。

 数的優位になったとはいえ、必ずしも追い風になるとは限らないのがこのスポーツの難しさ。アウェイチームが数的不利に陥った場合、往々にして割り切って引き籠って耐える選択をする。こうなると、破壊力に長けているわけではないウチとすると、どうやって崩すかが問われる。ただ、相手が退場するタイミングで櫛引が出場している選手全員をセンターサークル付近に集め、狙いの確認と認識の共有を行った。

 想定通り秋田は1stプレスを捨てて4-4のブロックを敷いて対処してきた。ウチとすると縦パスを刺す隙間が全然ないので、外回りのパスが多くなってしまう。スタンドからは早く攻めろといった雰囲気が醸し出されたが、こういう展開で攻め急いで下手なロストから引っ繰り返されて仕留められるのが一番嫌なシチュエーション。まずは横に動かして相手に否が応にもスライドさせて、ズレたところに刺し込む必要がある。あとは自ら運んで相手の立ち位置を無効化するプレーも有効。
 そういった意味では中を固めることで生じる大外のスペースを惇希と田頭が突っ掛けるのは意味がある。また、仙波が前線と中盤の橋渡しとして要所で顔を出してボールを引き出してくれるのが非常に大きい。1つ斜めが通るだけで局面が変わるので、気の利く仙波の存在は貴重。それと、アマがタイミングを見て3列目から飛び出したり、勇利也がハーフスペースを動いたりといった仕組みも見せた。

 64分にウチに決定機。左サイドからの攻撃ではフィニッシュに至らずに一旦後ろで作り直して右サイドへ。仙波・田頭・風間の連動した動きで3枚を引き付けた。才藤が喰い付いたことを見逃さなかった田頭がコーナー付近のスペースにボールを解放し、そこに河田が斜めに走り込む。河田がワンタッチで低いクロスを入れると、瞬間的な速さでマークを剥がした梨誉が右足でドンピシャで合わせたが、山田の右手に防がれる。

 65分、秋田は佐藤→梶谷、河村→畑の2枚替え。
 67分、ウチも河田→佐川で最初のカードを切る。

 72分、ウチにビッグチャンス。勇利也がアバウトながら左サイドのコーナー付近にボールを落とし、そこに梨誉が走る。梨誉が深さを作り、アマに戻すと、アマは早めにクロスを選択。これはニアでクリアされるも、そのボールを風間が右足でボレー。上手く力を抜いてミートに徹したシュートはディフレクトによってコースが変わり枠を捉えていたものの、山田が右手を伸ばして防いだ。

 チャンスを作りながらも決め切れない閉塞感が漂っていたスタジアムだったが、その空気感を打破したのは頼れる14番だった。
 自陣から風間が対角のボールを惇希に通す。惇希は間合いを探りながら急加速で縦に仕掛けて左足でクロス。これはウチの選手同士で重なってシュートに至らなかったものの、そこからすぐにプレスを掛けて蹴り捨てさせる。
 自陣右サイドのスローインの流れから最終ラインでボールを回して左に大きく張った勇利也へ渡る。勇利也→惇希→佐川→勇利也とテンポ良く繋ぎ、一度瀬畠に戻す。そこから再び勇利也がCHの位置で受けて右サイドの田頭へ。田頭は滞空時間の長い高いクロスを入れると、佐川がマークのミスマッチを活かして村松の上から頭を出してボールに当てて折り返すと、梨誉が下がりながら頭でコースを変える。ボールはゆっくりとゴールに吸い込まれていった。75分、ようやく先制に成功。
 サイドを振る大きな展開で相手を揺さぶり、佐川の特徴を生かす見事なクロスボール。そして注文通り競り勝つ佐川も流石だし、最後に仕留める梨誉は言うことがない。

 ゴールした勢いそのままに田頭が右サイドをぶち抜いてシュートまで持っていくなど積極的な姿勢を見せたが、残り15分のクローズの仕方はそれはそれで難しいのも事実。現に81分に才藤に決定的なヘディングを打たれているが櫛引が間一髪で防いだ。そこからもリードする展開に慣れずに見ている側は卒倒しそうだったが、クリーンシートでクローズ。実に350日ぶりにホームで勝利を手にする。

雑感

 再現性も立ち位置もクソくらえと言わんばかりの試合(誉め言葉)。梨誉がヒーローインタビューで言及していたように、戦術で頭でっかちになるのではなく、まずは目の前の局面を変えるために戦うことを第一にした。試合の入りから90分間継続して戦っているなと感じたし、見ている者に何かを訴えるには十分であった。勿論、ビルドアップでは噛み合わせ活かしながら前進させるなどの収穫も得た。
 常にこのように上手くいくことは断じてないし、相手が10人になることも稀。それは仕方ないし、自分たちだけで全てを変えることはできない。しかし、どんな局面でも自分たちのできる限りのベストを尽くす姿勢を示してくれるだけで、我々は勇気づけられる。
 失うものは何もない。抽象的な表現に終止するが、相手に襲い掛かる気迫を次も見たい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?