冥剣サーベラスの担い手
オルフェは断言できる。世に魔剣の類は数あれど、自分が引き抜いたのはまごうことなき『外れ』であると。
それは決して、彼女の得物……獄炎の冥剣サーベラスがなまくらということを意味しない。揺らめく炎のごとき刀身に、常にまとわりつく黒い炎。鎧ごと敵を切り裂くことだってできる。
だが。
『あはははははは!』
「止まりなさいこのバカ剣! ……ギャー! そこの人たち、どいて! どいてぇぇぇ!』
商人を取り囲んでいたらしい野盗たちがギョッとしたように振り返る。その手には量産型と思しき魔剣。サーベラスはこれを嗅ぎつけたのだ。
サーベラスは意思持つ刃。自律行動も可能。そこが問題だった。
この駄剣、他の魔剣を見ると嬉々として『遊び』に行ってしまうのだ。戒めのために鎖で繋いでも、まったく止められる気がしない。
今日もまた、サーベラスは勢い余って魔剣をへし折り、その持ち主から悲鳴と血飛沫を上げさせるのだ。
【続く】
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