忍殺TRPG関連SS【ニンジャズ・ダイアリー】#0401

◇これはなに?◇

 当記事はしかながニンジャスレイヤーTRPGを遊ぶためにネオサイタマへ送り出したニンジャたちの視点で書いた掌編テキストカラテです。ヘッズにはたぶんスレイト方式の短編集といえば伝わるかと思う。ダイスは絡んだり絡まなかったりする。よろしくね。

 なお、今回はちょっと特別であり、複数の情景が紹介される。



■ネオサイタマ ソウカイヤスカウト部門オフィス■
 「……イサン、オニイサン!」「ム……」オフィス机で仮眠を取っていたアベレージはゆっくりと目を開ける。眼前に立っていたのはいかにもヤクザじみた若いニンジャ。堅物じみた伊達眼鏡だけが嫌に浮いている。彼は呆れたように言った。「仕事疲れッスか? 休憩時間もう終わってますよ」「アア……スマンな、インシネレイト=サン」アベレージは小さく伸びをし、インシネレイトの差し出す書類を受け取った。インシネレイトが笑う。「スカウト部門筆頭もそろそろ誰かに譲って、引退したほうがいいんじゃないスか?」「そうかもな。いい加減お前も俺を踏み台にして上に行け。所詮俺は平均的なソウカイニンジャに過ぎんぞ」


■ネザーキョウ モミジ森林地帯■
「ハァーッ、ハァーッ!」生き残りゲニンは必死に駆ける。それでも脳裏に浮かぶのは絶望的なゴールのみだ。カラテジャイアントパンダ狩り。まさか陣頭指揮を取るセンシ、ニアデスまでもが返り討ちに遭うとは……「ウオーッ!」「い、イヤーッ!」重い足音が追ってくる。10フィートを超える巨躯にカラテ生成黒帯をつけた忌まわしきケモノが。逃げきれない。ゲニンは目を瞑る……「イヤーッ!」「アバーッ!?」「え」だから彼は何が起こったかを把握できない。足を止めて振り向くと、そこにはヒラキになったカラテジャイアントパンダ。そしてその前に立つ小柄な少女……のニンジャ。鮮やかな桃色の髪にぶかぶかのミリタリーコート。ネザーキョウのセンシではあるまい。しかし屈強なカラテの持ち主であることは見てわかった。「キル完了」ザンシンを解いた少女は振り返り、意外そうにゲニンを見つめてからアイサツを繰り出した。「……ドーモ。オーキッドです。きみ、まだいたの」


■岡山県 ニンジャ遺跡前■
「お姉さま、準備が整いました」思案に耽っていたディスグレイスは顔を上げる。側にいるのはキールバック。初めて会った当初とその姿はほとんど変わらない。ディスグレイスは微笑した。「お姉さま?」「いいえ……ウフフ! ごめんなさいね。思えば遠くまで来たものだと、感慨深く思っていたのです」10年前。ザイバツとアマクダリを交えた三つ巴の抗争。割れた月。ゾンビーニンジャ騒動……様々な苦難を乗り越え、ディスグレイスはここにいる。今もなおブッダは彼女を見ていない。「シャープキラー=サンは?」「向こうで新入社員たちにレクチャー中です」「ヨロシイ。それがひと段落したら突入しますよ」ディスグレイスは決断的に言った。そして眼前の遺跡を見上げる。かつてキセイ・ニンジャに騙されて開け放ち、中に囚われていた(らしい)ヴィナタ・ニンジャの住まう場所を。今回のスカウトは、極めて厳しい仕事となるだろう。せめてドラゴン・ユカノの力を借りられれば、また違ったのかもしれないが。

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