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シカク運営振り返り記 第17回 Bと私の歪んだ関係 その1(たけしげみゆき)

 私とBは、私が専門学校2年生の19歳、Bが大学4年生の23歳のときに出会い、わりとすぐ付き合い始めた。そしてお互いの卒業直後から準備を始め、ミニコミ書店を開店したのは、連載第1回から振り返ってきた通りだ。

 Bの頭の中には、いつも何かのアイデアが詰まっていた。次回のライブのパフォーマンス(彼は現代音楽のミュージシャンで、ライブのたびに奇抜なパフォーマンスを行っていた)、漫画や芸術や音楽作品、新しいビジネスや生き方についてなど。大阪のはしっこで育った19歳の私にとって、23歳で都会育ちのミュージシャンであるBの話は、日々新しい世界を見せてくれるような刺激にあふれていた。

 Bの口癖は「○○は俺が先に思いついてたのに」だった。路上でドーナツを売る店とか、スムージーとか、ジャンルは問わず何かが流行のきざしを見せると、Bはたびたびそう言った。彼の頭にはいつも流行を先取りするアイデアが詰まっていたようなので、実行していたら実業家にでもなっていたかもしれない。だが残念ながら彼には実行力も計画性も技術も知識も気合いもなかったため、アイデアが実行されることはなかった。

 だから私が専門学校でデザインを勉強していると知って、Bはとても喜んだ。「俺はアイデアは出せるけど、それを形にする力がなかった。でもみゆきはデザインができるから、俺がアイデアを出してみゆきが形にできる。俺らめっちゃいい組み合わせやな」というようなことをよく言っていた。
 実際、シカク最初期のホームページやチラシなどは、Bが監修・私が作業という形で作っていた。私が作業している間、BはDIYで本棚を作ったり、ブログやTwitterで情報発信をしたり、アルバイトで外貨を稼いだり、知り合いのミュージシャンに作品を置いてもらうよう頼んだりと、彼なりの働きを見せていた。

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