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【体験の形式知化】なりたい人を素数まで分解して、相手との距離を明確に知る。

ビジネスも含め、人生においての最高の学び方は、自分の周りにいる方のうち、強いあこがれを感じる人を、なりたいと強く願う部分の一部を切り取り、伺いを立て、分析し、自分の血と肉とし、実践の中の試行錯誤で自分のものにすることが、成長におけるなによりもの近道だと進言する。

私には、今も目指すべき先輩方が数名いる。人間性、仕事の進め方、私生活含めて全て圧倒的なハイパフォーマンスを出せる方々だ。

そのうち、ある方は、私も含め、皆がその人は分身、コピーロボットがいると信じてしまうくらいに活動量が異常に高い。朝、沖縄にいて、昼、私たちと東京で打合せをして、夜は北海道で打合せをして、日本の個人年間寄付総額以上の数字を管理するような人だ。だから、昔私がその先輩のようになりたい、と言った際、周りは全員口を揃えて、無理だと言った。

それでも私はなりたかった。私は欲張りなのだ。その力を追い求めて、所属している企業から出向して飛び出し、「貴方のようになりたい」と宣言して、その人の隣に座り、朝から晩まで、横で仕事をすることを始めた。

ただ、ずっと共に仕事をすればするほど、どんなに頑張れど、瞳の前に光がパチパチと飛ぶほどの残業を繰り返せど、どうやっているか聞けば聞くほど、何をしても圧倒的な距離感しか感じられなかった。

気が付けば、なりたいと思う項目は、一切身についたと感じることなく、Excel上で巻物のようになっていた。頭だけがフル回転していて、手足が動いてくれない、そういった悔しい気持ちばかりが蓄積されていった。

横について3ヵ月、一種の指標として、身についたことを報告する機会をいただき「こうですか?」と聞いた際、「肌に触れてない」と言われた。

横について半年、「こうですか?」と聞いた際は、「産毛にかすった」と言われた。前進は、していた。が、違いはよくわからなかった。

横について9ヵ月、なりたいと思う項目の巻物リストを眺めながら、全てを追い求めるより、自分が心から切望するスキルを3つに絞ることにした。①チャーミングさ、②圧倒的な業務完遂力、③短期間での専門的な知識のインプットとアウトプット、の3つだ。

それを目指していくことを改めて宣言した際、「少し肌に触れた」と言われ、よし、やってみようと決めた。

①は意識改革、③はマインドと体力強化を始めた。①③を意識すると、自分以外の人の働き方をフォローする、また業務を依頼する機会が増えた。そして、自分一人で出来ることは限られていることがよくわかる。与えられている時間は、人に対して限りがあることを認識した。それだけで、働き方は急速にドライブしたと感じている。

ただ②だけはどうしても時間がまとわりつく。ヨーイ、ドン、で行うと、時は人にとって平等だからこそ、一番スキルの差が圧倒的に、どうしても感じてしまう。走っても、筋力的に追いつけない。でも、筋力だけじゃない違和感をずっと感じていた。

1年を経つ前に、その先輩を追い求めて行った出向先の局長と面談があった。その時、赤裸々にその悩みを話した。経験値の差はわかってます、周りの人との協働も時間も理解しました、ただ何か見落としているような気がします、と。

間髪言わず、

「素数まで落とし込んだか?」

と言われた。

素数?とボヤっとその人の顔を見ていると、机の上においてある分厚い本を指さされた。

「その本には、この会社の、管理職にはならなかったが、この会社を支えて来た先駆者たちの仕事の仕方が細かく書かれている。当時、その先駆者が、どのように働き、どのように考えて判断してきたかの内容だ。スキルといった内容ではないが、そうなりたいと思うなら、スキル一つを分解して、その一つ一つの距離を測ることで、君がやるべきことが見えるはず。」

言われて、あぁ、と思った。どこかで諦めていた感覚が、また強い気持ちを取り戻した。そして、その場で、やるべきことが定まった。

横について1年、報告を行った。その際、はじめて「私はこうなりたい」といったことは言わなかった。自分の仮説に沿って、時間の使い方についてだけ確認をした。業務時間外で、インプットを集約しているタイミングと、アウトプットを論理立てるタイミングを重点的に。

その日は、肌に触れるといった会話はもうなかった。その方は和やかに、そして真面目に、夜が明ける前まで議論に付き合ってくれた。

ここに、その議論の全ては書けないが、一つ形式知化するとなれば、インプットとアウトプットの速度と精度を高めたいのであれば、業務時間外に、思考を止めないことだ。

人生においては仕事以外にやるべきことはたくさんある。当たり前だ。仕事だけの人生に意味はないと私は思う。誰かと一緒に何かをしている時、他のことを考えていたら失礼だ。

ただ、移動している時間、寝る直前、風呂、トイレ等々、一人になる機会は様々ある。その際、自分で何をするかを選択できる。

私はインプットとアウトプットの速度と精度を高めたかった。だから、一人の時間はその時間に費やした。

そうすると、アウトプットを行う際、劇的な変化が生まれた。止まらず書ける、ということだ。そして、空いた時間が、また新たな思考をする時間に充てられるということだ。

もし、誰かになりたいと感じるのであれば、その人となりを認識した後、素数のように細かな単位まで落とし込み、且つ、時間の使い方、といった軸を組み込むことをまずお勧めする。人に与えられている唯一無二の平等な権利としては、今、この瞬間、この時間の使い方だけなのだから。

もちろん、なりたいと感じてもすぐになれるわけではない。ただ、素数まで落とし込むことで、相手との距離感をより明確にわかることで、足りないことが見え、何をすべきかが理解できるだろう。そして、なりたいと感じる自分像に、力強く、進んでいけるだろう。

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鹿(Shika)


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