アッシーの1日 (1)





青年が気だるそうに目を覚ます

頭には鈍器で殴られたような酷く重い痛み

ぬるく気の抜けた炭酸水のペットボトルに手を伸ばし、思わずため息をこぼす

そして重く閉ざされた記憶を慎重に手繰り寄せる


――
彼は2日前、渋谷で行われたお魚系YouTuberきまぐれクックのオフ会に参加した。
夢にまで見た憧れの人に会えるのを何ヶ月も待ち望んでいたが、結局最後まで一言も話すことが出来ずにオフ会は終了した。
彼は悲しみに暮れ、帰宅後オフ会のビンゴゲーム大会で手に入れた2等の黒霧島を飲み漁り1人で枕を濡らしながら寝床に着いたのだった。
そのままぐっすり20時間の睡眠を経て今に至る
――

全てを思い出し、頬を赤く染める


そんなこの男の名は、「後藤アンダルシア」
通称アッシー

日系アメリカ人の父親を持つ、アフロ頭がトレードマークの青年である


アッシーは気を紛らわす為に録画しておいたモニタリングを視聴する。

モニタリングとイッテQだけは毎週欠かさないのが彼のポリシーだ。

モニタリングを見終わり少し外気に触れようとサンダルを履いて自宅を出る。

今日は風が心地よく夜独特の鼻を透き通る匂いが全身の毛穴から全細胞にに染み渡る

しかし、辺りを見回すと世界に1人取り残されたように人の気配は無く、ただ永遠と静寂が続いている

アッシーは背筋に少し寒気を感じながら足早にコンビニへと歩を進めた。




アッシーに大きな影が迫っていることを彼はまだ知る由もない。

―AM2:15―


p.s
頑張れアッシー
負けるなアッシー

担当:面高

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