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yonige『健全な社会』

STAY HOME

マンガ『ソラニン』で種田に迫られた選択。
自らなのか、偶然なのか芽衣子を始め周囲の近い人間達にも分からない。
yonigeがアジカントリビュートで歌った『ソラニン』は原作ファンには、とてつもなくエモーショナルなもので、感傷的になる為にある曲と言っても過言ではない。
今作ではその経緯を踏まえ冒頭のM1.M2をアジカンの後藤正文がプロデュースしている。
牛丸ありさは今作について「特別何もない」と語っているが、例えばステイホームの続く今の日常の中でうちで過ごすには不便がないのに急に、夜寝る前にアメリカンチェリーを食べたいなと、ふと買い出しに出掛ける、ほんの少し遠いスーパー。自電車で小雨の中、帰り際に急いでもいないのにスマートフォンがポケットから地面に滑り落ちる。画面は割れていないがケースのフチが削れてしまった、悲劇ではないけど何となく悲しい。
牛丸ありさは今作について、そのような日本特有のやるせない感情を描きたいと語っているのではないか。
実際にM1『11月24日』の歌詞はそれを歌っている。
自分の感情に変化はない、だけどなんか悲しい。

アルバムはM4に『Intro』とインタールードがあり、元チャットモンチーのベース福岡晃子によるプロデュース曲との線引きに置かれていて『往生際』『あかるいみらい』ともろにチャットモンチー的なアプローチで聴きやすい。
今作のハイライトはプロデューサー陣に寄る楽曲のみならずM8『春一番』での牛丸ありさの弾き語りにもある。これまためちゃくちゃエモーショナルなのだ。
既発の『みたいなこと』を挟みラストのM10『ピオニー』と穏やかに終わる今作はこれまでの作品とは違うドラマチックなアルバムになっている。

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