ジャン・リュック・ゴダールの映画にもちらっと“出演”している「Banco」という書体
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。
Banco(バンコ)(1951)
Banco(バンコ)は、タイトル用のディスプレイ書体で、1951年にFonderie Olive鋳造所のためにロジェ・エスコフォン(Roger Excoffon)によってデザインされました。この書体は、1981年に創刊されたスケートボード雑誌『Thrasher』の書体として世界的には有名です。
Thrasherのウェブサイト
書体デザイナー、ロジェ・エスコフォン(Roger Excoffon)
ロジェ・エスコフォン(Roger Excoffon)(1910–1983)は、フランスの書体デザイナー、グラフィックデザイナー。マルセイユに生まれ、エクス・アン・プロヴァンス大学(the University of Aix-en-Provence)で法律を学んだ後、パリに移り、印刷所で見習いをします。1947年(37歳)、自身の広告代理店を設立し、同時にマルセイユの小さな鋳造所「オリーブ鋳造所(Fonderie Olive)」のデザイン・ディレクターに就任。
ロジェ・エスコフォン氏がデザインした他の書体
Mistral(1953)
Calypso(1958)
Antique Olive(1962-1966)
エスコフォンの書体で最も有名なのはMistralとAntique Olive(アンティークオリーブ)で、後者は1962年から1966年にかけてデザインされました。ロジェ・エスコフォン氏の最大のクライアントだったエールフランス(Air France)は、新しいロゴが導入される2009年まで、ロゴとしてAntique Olive(アンティークオリーブ)をカスタマイズしたものを使用していました。
ロジェ・エスコフォンの書体は、一見地味に見えるサンセリフのAntique Oliveでも有機的な躍動感が備わっています。
Banco(バンコ)の使われ方
書体Bancoに戻りますが、このちょっと現代の日本人視点からは使いづらい書体はどのように使われているのか、その実例を見ていきましょう。
映画『気狂いピエロ』(1965)
ジャン=リュック・ゴダール監督の1965年のフランス・イタリア合作映画『気狂いピエロ』(きちがいピエロ、フランス語: Pierrot Le Fou)。アンナ・カリーナ、ジャン=ポール・ベルモンド主演。日本公開は1967年。
Boucherie Chevaline(フランス南東部にある肉屋さん)
フランスでは、Bancoからインスピレーションを受けた手描きの文字をまちなかに多く見かけるようです。
ジル・マルシャル(Gilles Marchal)のポスターか楽譜
ジル・マルシャル(Gilles Marchal)がカバーしたリー・ヘイズルウッドの曲、「Pauvre Buddy River」のポスターもしくは楽譜。
映画『ビッグ・リボウスキ』のポスター(1998)
ボブ・マーリーのアルバム『Natty Dread』の広告
ボブ・マーリーのアルバム『Natty Dread』の発売を告知する Island Records の雑誌広告 (出所不明)。
まとめ
このBancoという書体、誕生した国である「フランスらしい」かといえば、そういうわけでもく、この「整っているがカジュアルである」というキャラクターが書体の本質であり、らしさです。鎌倉にあるタイだったかなー、アジア料理のレストラン・カフェのロゴにも使われていました。それに違和感があるかといえば、無くよく馴染んでいました。Bancoには、ちょっとした野暮ったさがあるようにみえるんですが、なんというか不思議な、劣化しない親しみやすさがあります。
いや、やっぱりちょっと「フランスっぽさ」はある気がします……。フランスらしさを演出するのに有効というわけじゃないんですが。
参照
※1
よろしければサポートをお願いします。サポート頂いた金額は、書籍購入や研究に利用させていただきます。