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アラサーが久々のサウナにカプセルイン大塚を訪れた

これはコロナにより在宅勤務を強いられたアラサーがカプセルイン大塚に行った感想です。それ以上でもそれ以下でもありません。



6月16日火曜日。在宅勤務2か月経過。職場はもちろん友人との飲み会も実施されない状況が続き、私の行動範囲はほぼ固定された。家か、家周辺の2択である。目にする景色は変わらないのに時間だけは過ぎてゆき、気付けば今年もあと198日である。リビングデッドと化した私のTwitterに1つの通知が届く。

カプセルイン大塚(サウナ&カプセル)さんにフォローされました

リビングデッドの脳みそでは理解するのに少々時間を要した。
「あぁ、大塚駅北口のサウナ屋さんだ。」
大塚に住んで1年。銭湯やサウナは好きな方だがカプセルイン大塚には行った事がなかった。場所・雰囲気・客層、全て想像ではあったが気楽に訪れてはいけない気がしていた。なぜかは分からない。ただ本能でそう感じていた。

サウナ…大浴場…水風呂…

混濁した意識の中、ようやくその行為の尊さを徐々に思い出してきた。
気付いた時には18時に退勤するつもりで仕事をこなしていた。


気怠げなガールズバーのお姉さんの声が地面を這う大塚駅北口を足早に通り抜け、駅から徒歩1分でカプセルイン大塚に辿り着く。立地の良さに気が付かなかった。シンプルな看板を少し眺め、深く考えないようにしてエレベーターに乗り込んだ。

乗った瞬間、カプセルイン大塚が始まった。
年季の入ったエレベーター、擦れた階表示ボタン、明らかに外とは異なる匂い。ここはもう大塚ではない。「カプセルイン大塚」なのだ。

エレベーターを降りると笑顔で元気なおじさまが説明をしてくれる。Twitterのアカウントをそのまま人間にしたような明るい方だった。ちなみに支払いはPayPayと楽天Payが使える。エレベーターと看板から現金しか使えないと予想していた私は良い意味で期待を裏切られた。

更衣室で着替えたら別のエレベーターで8階へ。いよいよサウナとご対面である。鼓動が早くなるのを感じる。この先に待つのは天国か地獄か。早く知りたい気持ちとずっとこのままエレベーターが昇り続ける事を願う私がいた。

チン、と音が鳴り扉がゆっくりと開く。目の前に広がるのは天国でも地獄でもない。サウナへの入り口だ。ただ、今まで私が経験してきたものとは異なる気がした。写真と映像でしか見たことが無い「昭和」を感じた。平成生まれの私が経験してもいない「昭和」を語るのは可笑しな気がするが、どの歴史博物館よりも生の昭和を感じた。設備が古いが清掃は行き届いており清潔である。しかし端々からノスタルジーを感じるのである。不思議な感覚だった。

年季の入ったサウナの注意書きの横に真新しいコロナウイルス対策の注意書きが貼られている。同時に入るのは3人までとの事だが、中は誰もおらず私一人の貸し切り状態だった。木製のドアに久々に触れる。隙間から溢れた熱気が私に飛び掛かってきた。お預けをくらっていた犬のようだ、と自然に笑みがこぼれた。

誰もいないサウナの右端の席に座る。その瞬間、自分との対話が始まる。
久しくサウナを訪れていなかった為かとめどなく流れる汗。サウナなので汗をかくのは当然だが、エアコンで快適な室内でただパソコンに向き合うだけの日々に汗は生じない。汗もこの日を待ちわびていたような気さえした。 気がしただけだ。ただの運動不足である。

滝のように流れる汗を傍目に、自分との対話を続けた。サウナは不思議である。仕事や夕飯のような現実的な事柄から始まり、いつの間にか生きる目的や宇宙の存在理由にまで考えが及ぶ。つい10分前まで生きる屍だった私の脳がフルスピードで回転している事を実感した。
これだ、これだよサウナ。
ドーパミンの横溢を止めるのは憚られたが、久しぶりのサウナだったのであまり無理せずに出る事にした。

フロアに戻るとひんやりとした空気が全身を包み込む。そしてほぼ無意識で本丸の水風呂へ足が進む。手足、頭に少し水をかけて慣らしてから全身浸かるのが私のやり方は身体に染みついていた。

つま先、足裏、足首、くるぶし…少しずつ水面が上昇してくる。1つの身体なのに足と頭は別世界に属しているような感覚にさえ陥る。急激な温度差によって身体を強く意識させられるも、水と身体の境界が無くなるような感覚もある。水風呂ってこんなに気持ち良かったのだろうか。コロナ明けだった為か、想像の10倍はキマッた。

脱衣所に戻るとまた「昭和」を感じた。正体は備え付けの整髪料だった。幼い頃に祖父と訪れた地元の温泉と同じ整髪料から漂う香り。紳士を感じさせる品の良い匂いが私の中の昭和を形成していた。「お前にはまだ早い」と笑う祖父を思い出しながら真似して整髪料をつけてみた。

あの香りが似合うようになったか確かめる為に、何度でも足を運ぼう。
そう思わせてくれたカプセルイン大塚だった。

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※なお、カプセルイン大塚の創設は1994年らしいので私が感じた昭和は本当に感覚だけのものでした。

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