【エッセイ】定食屋さんの豚汁には七味唐辛子ははずせない
原材料費の値上がりで、どこもかしこも値上がりラッシュの中、ご飯のおかわりが無料で何杯も食べられる定食屋さんに行ってきた。ちなみに、現在、日本ではお米はほとんど値上がりしていないらしい。
入り口付近の食券発行機で、ホッケ定食を選び、さらに、追加でサラダを選び、味噌汁から豚汁に変更した。
席につくと、コップに入ったお水と引き換えに、食券を店員さんに渡した。
ふと横を見ると、消毒スプレーがある。それで手を消毒する。消毒スプレーを置くと、七味唐辛子が入ってるべき容器が空であると気づいた。
『豚汁には七味唐辛子でしょ!』
それもあるが、何せストレスが溜まると、異常に辛いものを食べたくなる。
カラシ・ワサビ・ショウガ・七味唐辛子・タバスコをバッグに忍ばせて、コンビニやスーパーに売られているソーセージ・お寿司などに大量にかけて食べたりする。
定食屋さんのお味噌汁や豚汁にも、小さじ山盛り一杯くらいは七味唐辛子を入れるのが当たり前だった。
(店員さんも忙しいだろうから、ホッケ定食が運ばれたタイミングで、七味唐辛子を入れてもらおう)
ホッケ定食が運ばれてくるのを待つ間、気持ちはすっかり七味唐辛子に支配されていた。
なぜなら、定食屋さんの店員さんはキビキビした働きをするから、ホッケ定食をテーブルに置いた途端、踵を返してスタスタと歩いて行ってしまう。だから、七味唐辛子を頼むタイミングは1秒たりとも遅れてはならない。
緊張の面持ちで待つこと約10分、とうとうそのときが来た!
「ホッケ定食、豚汁変更になります。以上でよろしいでしょうか?」
「は、はい! し、七味唐辛子をお願いします」
わたしは、空になってる七味唐辛子の瓶を右手で軽く指し示しながら言った。
店員さんが七味唐辛子を持ってるくる間、ホッケ定食には一切手をつけなかった。
まずは、汁物から手をつける。つまり、豚汁に七味唐辛子を入れないことには、今晩の夕食ははじまらないのだ。
ホッケ定食を10分待つよりも長く感じられた。
でも、実際は1分程度だったろうか。
しかし、ついに、とうとう瓶に入った七味唐辛子がテーブルに運ばれてきたのだ!
右手の指で瓶をもつと、それを軽く左右に揺らして、七味唐辛子がたっぷり確認し、一振り、二振り、三振り、四振り、五振りはした。
茶色の豚汁は、赤色の粉がどんどん増えていった。
軽く箸で豚汁を混ぜると、お椀をそっと唇に近づけた。
ゴクッ。ひと口飲むと、それはもうピリピリと辛いだけの液体だった。
(はぁ~、ストレスが減っていく~)
ゴクッ。ふた口目では、豚汁に入ってるであろう野菜や豚肉の旨味エキスを充分に味わおうと、舌がその味を捜しだそうとした。
(うん、確かに、出汁がよくでている)
その後、ホッケや白飯を味わい。ホッケ・白飯・豚汁の至福の三角地帯をグルグルまわった。
ご飯を2回おかわりし、満腹で大満足のお腹をさすりながら、店をあとにするのだった。
ボロアパートについてから、サラダがついていなかったことに気づき、悔しくなって地団駄を踏みながら『でも、プラマイゼロじゃん』と前向きに開き直れたのは、また別の話である。
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