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月刊「左利きの女」【烽火書房で取り扱いする本】

京都市にあるBut not for me内に間借りで運営している本屋・烽火書房で取り扱っている本を紹介していきます。

リトルプレス的な魅力にあふれている

月刊「左利きの女」。現在003まで発刊されている(ここでは主に002を例にとって話していく)。勝手に分類するのであれば、リトルプレスと呼ばれる部類の本に近い。リトルプレスとは、おおよそ以下のような本が該当すると思われる(もちろん例外はあるし、今回紹介する月刊「左利きの女」の部数や儲けがどうなのかを説明する意図ではない)。

・どこの本屋でも買えたり取り寄せできるわけではない(ことが多い)
・発行される部数が少ない(ことが多い)
・発行元は大きな出版社ではない(ことが多い)
・売れてもそれほど儲かるものではない(ことが多い)

ぼくはリトルプレス的な本が大好きなのだけれど、身も蓋もない言い方でまとめてしまえば、「大きな元手や卸先を持っているわけでもない人が、儲かりもしないのにわざわざ印刷してつくる(ことがおおい)」のがリトルプレスだろう。

だから自然と本の内容は、好きなものを徹底的に紹介したいだとか、実はこういうことがあるんですよという気づきだとかが一冊に凝縮されていくことになる。いってしまえば、リトルプレスとは「フェチ」と「再発見」のメディアなのだ。

月刊「左利きの女」はその雑誌名の通り、毎号左利きの女の人へのインタビューが敢行され、一冊にまとめられる。左利きにフィーチャーするというのはフェチな気もするし、一方でそういったフェティシズムでくくってしまうことに対して、新たな気づきを与えてもくれる。

インタビューでは、左利きで得したことがないかだとか、あるいは損したことはないかといったことが徹底的に質問される。左利きであることは、その対象の女性にとって、すごくネガティブな想い出があるかもしれないし、あるいはポジティブな経験があったかもしれないし、意識したことがないかもしれない。けれど、左利きであるという切り口から、知りもしないその女性のことを妙に身近に感じてしまうようなインタビューになっている。

月刊「左利きの女」は、まさしく「フェチ」と「再発見」にあふれていて、とても魅力的な雑誌だ。

本の大きさと注釈

月刊「左利きの女」は、その判型とデザインも魅力的だ。わかりやすく特徴的なのはその大きさだろう。大きさは、B4変形サイズ 234mm × 318mm。つまり、ちょっと大きい。ちょっと大きい本というのは、本棚に収めたり平台に置いたりするのにちょっと工夫がいる。こだわらなければ、選ばない大きさといって良いかもしれない。同書はこの大きさが効果的で、ページを繰るたびその判型を活かした大きな写真が登場し、「左利きの女」の表情を切り取ったり、左手が大きく映し出される。上で述べたように、登場する女性を妙に身近に感じてしまうのは、本の大きさに依るところが大きいような気もする。

そして、もうひとつ注目したいのは、インタビューページにぎっしりと詰め込まれた注釈だ。論旨を理解させるために論文などでは注釈は多く入るが、この本で扱われている注釈は個性的だ。「腕時計」「コピペ」など、寄り道的なキーワードにさえ注釈があてがわれている。ここにも「フェチ」と「再発見」の魅力が詰め込まれているように感じてしまう。また、間延びしかねないB4変形という大き目の判型を選んだことにたいして、注釈がデザイン要素として効果的に機能しており、紙面を引き締めている。デザイン的にもコンテンツ的にも注釈が果たしている役割は大きいように感じる。

5,6年前にリトルプレスやZINEの魅力に気づき、集めるようになった僕にとって、ど真ん中の魅力を持つ月刊「左利きの女」。どうやら月刊では発刊されていないようだが、続刊が楽しみだ。