「耕さない田んぼ」には持続可能な地域文化のヒントがある
房総半島のはずれにある千葉県鴨川市。
小野薫さんは、ここ鴨川市の里山エリアで「房総の美味しいをつなぐ伝え手としての活動」に勤しんでいます。
もともと鴨川市に生まれ育ち、2011年にUターンした小野さん。
かつて「地元にはなにもない」と東京へ進学、就職してPR関係の仕事をしていましたが、現在は「FUSABUSA」という屋号で、主にふたつの事業に取り組んでいます。
ひとつ目は「ふさぶさ田と里」。
実家が代々所有していた田んぼを引継ぎ「耕さない田んぼ」でお米づくりをしています。田んぼを含めた里の豊かな自然には、活かせる素材がたくさん。そんな素材の発掘にも力をいれています。
ふたつ目は「ふさぶさnaya」。
食堂として地元産のお料理を提供するだけではなく、地元の食材を使い、ジャムなどの加工品づくりや地域の伝統を学ぶワークショップを開催。
できあがった商品をただ味わうだけではなく、そこに至るまでのストーリーを伝え、新しい価値を提供しています。
Uターンをして約10年。「地域文化の伝え手」として多岐にわたる仕事を手がける小野さんですが、ここに至るまでには様々な葛藤があったといいます。
小野さん自身、多くの経験を通して気づいたことは、昔ながらの知恵の中に「持続可能」な取り組みへのヒントが眠っているということ。
「外から何かを持ってこなくても、自分の足元や身近にあることで活かせることってたくさんあったんですね。それを形にしていくことが、実は一番自然で、持続可能なことだったんです」
小野さんが現在、取り組んでいる「耕さない田んぼ」は、不耕起栽培と呼ばれます。通常の田んぼとは違い、冬にも水を張り農薬や化学肥料を使わずお米を生産します。
水を張ることでミミズなどのいきものが生息するようになり、田んぼに必要な栄養分がつくられます。肥料などを入れて人工的に土に栄養をつけるのではなく、自然の力で豊かな土壌がつくられるのです。
この農法は、岩澤信夫氏(2012年没)が20年以上をかけて確立させた方法。環境に負荷をかけないお米づくりとして、いま注目を集めているそう。
伝統的なお米や加工品づくりと向き合いながら、今の時代に合った、新しい農法へ。
「自然の力の素晴らしさを感じ、無理なく様々な要素が循環していくことで、持続可能な営みが生まれていくことに改めて気づかされました」
小野さんの"仕事場"をのぞいてみたい。そんなあなたに、この旅を。
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