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地球「市民」でありながらにして株式会社地球の「株主」でもあるのです。

『水野:真っ先に思い浮かぶのは、政治が動いて再生可能エネルギー100%社会の旗を振ることですが、進みませんねえ。斎藤:ええ。現在のように、経済成長至上主義の政治や既得権益層にとっては、ドラスティックな手を打たず、いまのまま資本主義を続けていったほうが利益を得ることができるわけですから。マルクスの有名な言葉に「大洪水よ、我が亡き後に来たれ」というものがあります。つまり自分たちは逃げ切ることさえできれば、後はどうなろうが知ったこっちゃないと。~水野:成長を求めて悪あがきすることで、超富裕層をのぞく圧倒的多数の人が貧しくなるのは、この20年、30年を見ても明らかです。それでもなかなか成長教から抜けられないんです。私自身は、「閉じた経済圏」への橋渡しとして、株式への現金配当を廃止することが重要だと考えています。現金の代わりに、株主には現物サービスを配当する。そうすれば、現物サービスではメリットを享受しにくい外国人株主は自然と遠のくでしょう。そうすれば、ROEを上げろ、10%以上にしろと恫喝するような風潮が消えていく。もし企業が利潤率(ROE)を現在の地代(リートの利回り)以下にするなら、ROEは3%あれば十分だと考えられます。金額にしておよそ40兆円。これを人件費に振り替えれば、人件費をだいたい2割ぐらい増やすことができます。家計はその一部を地域の銀行に預けて、銀行が株主となって地域の企業を支えればいいんです。つまり、これは地域の住民が出資者になることですから、利子として現物サービスの配当を受けることになるわけです。斎藤:資本を社会化するイメージですね。私もその方向がいいと思っています。『未来への大分岐』で議論したマイケル・ハートも同様に、資本の社会化の重要性を強く訴えていました。ギリシャ元財務相で経済学者のヤニス・バルファキスも、ベーシック・インカムではなく、ユニバーサル・ベーシック配当というアイデアを提出しています。これは、あらゆる企業の株式の一部を社会化し、配当を国民全員に分配するというものです。つまり市民、国民すべてを株主とみなすわけですね。ベーシック・インカムも1つの手ですが、私は、彼のアイデアのほうに魅力を感じています。これからますますオートメーション化が進んで、機械が勝手にモノをつくったり、サービスをしたりするようになるわけですよね。機械が勝手に生み出したモノやサービスを、「これはオレの物だ」と独占するのは、よくよく考えると非合理なわけです。そのモノ・サービスを生み出すための機械や情報は、大勢の人の知識や情報が関わっている。だったら、生み出されたモノやサービスを社会化して、共有の財産としてみんなでシェアしようと。水野:できればそこに、地域性を強く入れたいというのが私の考えです。日本でいえば、現在は明らかに東京一極集中になっていますから、地方分権を進めて、できるだけ地域に密着した教育機関や企業、金融機関を充実させていくべきでしょう。大きな企業は会社分割して、地域ごとに分社化する。地域のなかでなるべく自給自足できるような形で、現物のベーシック配当をすれば、「より遠く、より速く、より合理的に」という近代システムを脱して、「より近く、よりゆっくり、より寛容に」生きる社会に移行することができますから。斎藤 はい。そのようなポスト資本主義の構想が、<大分岐の時代>に求められているのです。』

ポスト資本主義は「地に根を這った生活」を基本にする「原点回帰」な気がします。よく島国根性とか村社会とか揶揄されますが「明日も会うヒト」とは基本的に争いを回避する結果に成るはずです。いわば地球「市民」でありながらにして株式会社地球の「株主」でもあるのです。

人類は資本主義を本当にこのまま続けられるか
斎藤幸平と水野和夫が次の社会を構想する
https://toyokeizai.net/articles/-/313357

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