Q&A:なぜ給付に所得制限を設けないほうがいいのですか?

Q.なぜ給付に所得制限を設けないほうがいいのですか?

A.対象者を絞りこむのにかかる時間の間に失われるものが大きいうえに、支援を必要としている人を取りこぼすリスクが大きいからです。

まず、支援を必要とする人ほど差し迫った状態にいるので、時間をかけること自体が失敗です。いくら「対象者を適切に絞りこんだ精度の高い給付制度」を作ったところで、手遅れならば無効です。

また、今は余裕があっても、1年以内の間に事業や仕事、収入や資産が激変してしまう人もいるでしょう。しかしそうした生計の激変が政府への申告情報に反映されるまでにはさらに時間がかかります。申告情報を見て「おお!君は確かに生活に困窮しているのだね!」と分かった頃にはすでに生活の再建は困難です。

給付においては、迅速、一律で対象者が広いことが善とされます。

給付は一律迅速であるときに最も効果的である。だからこそ、給付と、給付以外の各種の社会保障の組み合わせが、個々の事情に対応するために必要なのです。

どうやら今の政権はそのことを理解できていないようです。しかし、日本のリベラルや反政権派の一部が「富裕層にも配られる給付金はムダ」という脊髄反射的な噛み付き方をしていることが、「給付の時期を遅らせてでも所得制限をつけよう」という現政権の愚行を後押ししているのも事実です。(くれぐれも念のため言っておきますが、日本のリベラルや政権不支持層がみんなそうだというわけではありません)

単独一発で万事解決できる政策などありません。どの政策も、他の政策との適切な組み合わせと調整によって効果を発揮します。一点だけを見てわずかな視野で揚げ足取り的に行き当たりばったりにする類いの政権批判は、むしろ国民の被害を広げてしまいます。

一律の給付と多様な社会保障の組み合わせによって一人一人の人間を見るのがリベラリズムではないでしょうか。

長期継続的な給付であれば、制度を続けながら検証、改善、修正、変更し、給付額に階段をつけたり給付に例外を設けるなどの精緻化を進めていくのもいいでしょう。

しかし、差し迫って時限的にやらなければならない給付では、早く行き渡ることと取りこぼされる人がいないことが善であり、遅さと取りこぼしは明確な悪です。ですから、今はまず一律に、迅速に、全国の人と事業(特に中小零細個人)に、一刻も早く、給付をするべきなのです。


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