野生化するイノベーション

”経営資源の流動性が上がることで、
           イノベーションの破壊的な側面が強くなる”

生産性のジレンマ

イノベーションの種類は、2つに分けられる。

①プロダクトイノベーション(市場を創る)

②プロセスイノベーション(改善)

この2つはトレードオフの関係にある

イノベーションのジレンマ

市場を生み出すためには、ラディカルなプロダクトイノベーション
累積的なプロダクトイノベーションにつなげることが必要。

大企業はこれまでの投資や既存顧客があるため、不確実性の高いものに投資をすることが難しい。

新興企業は制約が少ない分、リスクをとることができるし、とらなければ生き残ることができない。

新興企業がラディカルイノベーションを累積させることに成功し、
市場を創ったあとに後発で大企業が参入しても手遅れとなる。

ラディカルなプロダクトイノベーションはどう生み出すのか

アニマルスピリッツ、野生化されていること、
つまり、経営資源の流動性が担保されている状態が必要。
マネジメントしようと思うとアニマルスピリッツが失われるというジレンマ
大企業は、CVCやオープンイノベーションによりアニマルスピリッツを飼いならそうとしている。

累積的なイノベーションの3つのルール


①私有財産制度:イノベーターへのインセンティブ
②科学的な合理主義:観察と実験による経験主義的な考え方(⇔宗教)
③資本コストの低下:取引費用が下がっていること

これらを整備しないと、ラディカルなイノベーションが市場化しない。

日本ではなぜ成長が停滞しているのか

戦時体制の集団主義が、戦後にも続いてしまったことが原因であり、年功序列や終身雇用の社会が変化に対する抵抗をもたらした。

イノベーションを増加させるには、スピンアウトの容易性を高めるなど、経営資源の流動性を高めることが必要。

野生化は何をもたらすのか

メリット
ラディカルなイノベーションが起こりやすい

デメリット
生産性の低い企業が生き残りやすい(流動性供給)
既存技術の累積的なイノベーションによる最終到達点の低下(機会費用)
格差を生み固定化される(規制緩和、自由競争、経済格差、保護主義)

このデメリットがもたらすコストは、企業が負うのか、政府が負うのか

野生化するイノベーションとの向き合い方

マクロの視点
①イノベーションの種づくり-基礎研究
②代替されるタスクへの従事者へのケア-セーフティーネット
③イノベーションと補完的なタスクに従事できる人をいかに増やすか-教育

個人の視点
今いる組織でなくても十分に自分の価値を出すことができて、他の組織にいつでも移ることができるけど、今の仕事が好きで意義を感じながらコミットしている状態が理想。

野生化するイノベーション 清水洋 新潮選書