すもも女王の誕生
前回はりんごが旅立つまでを記した。
すじことりんごが去ったことで、預かりねこはすもも一匹になった。
ここ全部すももの縄張り
りんごがいたときは、二階の和室がりんごの居場所になっていたのだが、すもも一匹となったことでここも空き部屋となった。
会社は3LDKの間取りだが、在庫部屋(弊社は倉庫に在庫管理を委託していない)の一室を除き、すももはどこでも出入り自由となったわけである。
会社だから夜間は人はいない。そんなわけで、すももこそが会社のあるじとなり、ほぼ全部屋がその縄張りとなった。
最初はうんともすんとも言わなかったのに、四六時中ニャーニャー言うようになった。ためしにすももの声を録音して聞かせてみたが、これにも反応してニャーニャー言う。面白がって多重録音していたら大変なことになった。
女王さまの振る舞い
なにせ、すももは24時間ずっと会社にいる。あれもそれも全部すももの匂いがつき、「ぜんぶすももの」になった。
人間はごはんを出し、トイレを掃除する下僕である。よって、すももの命令を聞かなければならない。
二階の書斎の本棚の上に到達すればニャーと鳴いて「にんげんみにこい、すごいぞ」と呼ぶし、和室のエアコンの上にも二段ジャンプで飛び乗り、これまたニャーと鳴いて「どうだ、にんげんにはのれないだろう」と満足げである。
人間の世俗の仕事などすもも女王には関係がない。階下で仕事をしていてもしょっちゅう二階に呼び出され、「すももはすごいね!」と称えねばならないのである。
お触り厳禁
女王さまは気高い。
ちゅ〜るやおもちゃには気が向けば応じるが、お触りは厳禁である。
呼んだらすぐに来い、ごはんとトイレ掃除は欠かすな、触らせてはやらない……それはまったく見事な女王さまぶりであった。
ついに最後の最後まで、僕は頬を少し撫でるのが精一杯で、しかもそれも、ちゅ〜るをあげているわずかの時間だけという始末であった。
そんな女王さまによる絶対王政にも終わりの日が訪れる。現社長・わらびの来訪である。縄張りに侵入されたすもも女王と、ねこもにんげんも大好きなわらびとの間は一触即発となるが、その顛末については次回記そう。
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