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人事のための面接ハンドブック⑨ 自社の「魅力」の伝え方

採用面接における人事の役割は、大きく2つ。応募者の力を『引き出す』ことと、自社の「想い」「魅力」「事情」をきちんと『伝える』ことです。

前回のコラムでは、『伝える』の項目の1つ目、入社後のパフォーマンスに影響を与える「想い」について書きました。

今回は2番目の「魅力」について。自分の会社の良さ、事業のおもしろさなどを、ポイントを絞ってしっかりと伝えていきましょう。

「仕事内容」「社風」「人」で考える

企業の「魅力」として語れる切り口は、大きくわけて3つあります。仕事内容・社風・人です。

仕事内容には、事業そのものの伸びしろや、身につく専門性、扱える仕事の領域の広さなどが考えられます。特に地方の中小企業だと、大企業に比べ分業が進んでいないぶん、裁量の大きさよる個人の成長や、働く充実感はアピールしやすい場合も多いでしょう。

社風とは、企業文化です。過度なルールがなく、働き方を会社に相談できるとか、個人の会社での振る舞いがその会社そのものに影響を与えることができるとか。ローカルや中小であっても、その組織“ならではの良さ”は必ずあるので、そこを伝えてあげます。

人には、働く社員さん・職員さんの人柄や関係性があります。「この人と働きたい」といったポジティブな気持ちは、仕事をするうえでの大きなモチベーションのひとつ。まずは人事の方自身がそう思ってもらえるような振る舞いを心がけると同時に、魅力ある社員さんを紹介したり、関係性を感じてもらえるようなエピソードを用意したりしておきましょう。

「どこが魅力か?」は企業次第

仕事内容・社風・人のなかで、どこを魅力として強調すべきかは、会社ごとにかなり異なります。

例えば、『地方発、グローバルに挑戦するモノづくり企業』を掲げていても、「世界で成果を出している」事業の魅力や可能性を前面に推したい場合もあれば、ローカルに根ざした価値観や社風を第一の強みとしたうえで、「プラス要因として実は世界も見ている」とアピールする場合もあるでしょう。

大切なのは、自社における魅力の内容・バランスを把握したうえで、「来てほしいと思う人材に訴えたい話」をしっかり伝えることです。欲張って見栄を張らず、「これがうちのウリだ」と感じるものを選んで、信じてあげてほしいと思います。

また、4つ目のポイントとして「福利厚生」も魅力になり得る要素です。ただし、福利厚生を「ここが充実してます!」と訴え過ぎると、そこだけがモチベーションになってしまい、逆にズレが生じることもよくあります。過度に強調しないことも必要でしょう。(福利厚生については、別のコラムで改めて解説します。)

他からの評価+自分がそこにいる理由

自社のどこに魅力があるのかは、なかなか冷静に把握することはできません。以前、こちらのコラムでも解説しましたが、人事には基本的に「悪い話」しか集まってこない。魅力を知るには、社員の方やお客さんの声を丁寧に拾うことが大切です。

一方で、面接の場では人事自身も、いち個人の意見として「自社で魅力だと思う部分」を伝えてみてほしいと思います。

たまに「うちの会社なんて……」と言う方もいるのですが、僕の目からは「そう言いながらも楽しそうに働いてるな」って見える人事さんは結構いるものです。仮に入社の理由が消極的だった過去があっても、「ある程度自由にさせてもらえる」とか「家族との時間が取りやすい」とか、その人なりに働き続けている動機が必ずあるんですね。

まずは自らそういった部分に目を向け、温度感の伴う情報として自社の魅力を伝えるよう意識してみてください。

(第10回『自社の「事情」の伝え方』に続きます。)


北川雄士/Yuji Kitagawa

滋賀県彦根市生まれ。株式会社いろあわせ代表取締役。
広告代理店、ITベンチャー企業の人事部門責任者の経験を経て、2014年にフリーの人事として独立。これまでに数千人の面接を経て来た。2015年末にUターン。ひと・もの・まちを“掛け合わせ”、それぞれが持ついろや魅力を大切にしたいとの想いで、株式会社いろあわせを設立。現在『しがと、しごと。』をはじめ、行政や地元企業と共に地域発の採用の仕組みや場づくり・まちづくりを積極的に実践中。(TwitterFacebook

(編集:佐々木将史

しがと、じんじ。について

“滋賀ではたらく魅力を再発見する”『しがと、しごと。』プロジェクトの一環で運営される、ローカルで採用活動に取り組む人事担当者のコミュニティです。

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