シフティングの原理(3)

3. 自分という存在の幻想に気付く

 よく自分探しという話があります。でも、そもそも自分というものがどういう概念かという根本的な話が抜けているように感じます。それを実感として理解できるのがロールシフトです。自分の中に複数の自分がいることを実感的に体験していただきます。

 具体的なやり方としては、左目と右目のどちらかを手で隠していただきながら、質問に答えていただくという形をとります。その時、左目と右目で違う自分を選択してもらい、その間の調整をする訳です。

 違う自分、と言われても良く分からないかもしれませんが、人間には普通でも二人の自分がいます。アクセルを踏む自分とブレーキを踏む自分です。そして、そのどちらもが自分の一部なのです。学問的に証明された話ではありませんが、人間にはアクセルを踏む自分とブレーキを踏む自分がいて初めて、バランスの取れた選択ができるのではないかと私は考えています。

 たとえば、会社を辞めたいと思っている自分と、会社を辞めるのは怖いと思っている自分みたいな感じです。アクセルだけのクルマは危険ですが、逆にブレーキだけのクルマは前に進めません。人間の意識も、きっとそういう構造になっているのだと思います。

 人間が問題を抱えている多くの場合、この二人の自分の間の調整が出来ていません。アクセルをぐっと踏みながら、同時にブレーキをぐっと踏んでいる、そういう感じだと思います。それを左目と右目の人格として呼び出し、会話をしてもらいます。

 調整が出来たらベターですが、調整が出来なくても自分の中の何が問題かを理解できますし、自分がその問題を引き寄せていることが理解できるようになります。そして、往々にして、一人の自分が全然話を聞いてもらっていなくて問題を発生させていることがありますので、そういう場合は話を聞くだけでも大きな変化があるのではないかと思っています。

 分かりやすい事例では、大阪のコンサルタントの方ですが、他人の予定に振り回されるというものがありました。他人中心の自分と自分中心の自分で会話をしていただき、この件は、スケジュールで調整するという話で落ち着きました。

 また、スピリチュアルな仕事を表に出したいのに出せないという女性は、スピリチュアルを表に出したい自分と、表に出すと攻撃されて怖いという自分との間で会話をしていただき、表に出すことによって友達をつくり、攻撃されにくい形にするということで合意していただきました。

 ある女性はうっかりミスを直したいということだったので、うっかりミスをした方が上手く物事が運ぶと思っている自分と、他人との関係できっちりしたいという自分とで会話をしていただき、休みの日はうっかりミスをするけれど仕事の日はうっかりミスをしない、ということで合意いただきました。

 このように、自分の中で会話をすることによって、自分の中で何が問題になっていて、どうしたらそれが解決できるかが明確になります。また、慣れると自分会議をできる人もいます。

 ロールシフトは、こういう単純な問題を解決するのにも使えますし、もう少し高度な問題を解決することにも使えます。代表的なものが自分の中にいる男性性と女性性の対話です。自分の中の男性性と女性性を対話させることにより、自分の中にある問題に気付くことができます。

 ある女性にご自身の中の男性性と女性性の対話をしていただいた時、急に知人の男性との間の問題がそっくりご自身の中の男性性と女性性の間の問題であることに気付かれて、びっくりされていたこともあります。

 また別の女性は、頭の自分と心の自分で対話していただいた時に、頭の自分の男性の好みと、心の自分の男性の好みが全く違っていたことに気付かれました。そのために、頭では好みではないと思っていた男性からのアプローチが多いことに、ご自身で納得されていました。

 問題は、その原因が分かると8割は解決していると私は考えています。まずはロールシフトで問題の原因を認識することがとても大切です。次に自分の中の二人の自分で調整してもらうためには、普通のビジネスの交渉と同じで、お互いに妥協する落としどころを探らないといけません。

 もちろん平行線のままでも原因を認識すればかなり改善されるのですが、なるべくお互いに納得した方がベターです。この辺りになると、完全にビジネスの交渉と同じで、お互いのメリット、デメリットを明確にして、お互いに納得できるアイデアを探していく、みたいな形となります。

 よく、全ての問題は内にあるとか、外に起こっている問題は自分の内の問題の反映であるといいます。しかし、それをどう調べて、どう解決するかを示したものはとても少ないと思います。ロールシフトは、この「全ての問題は内にある」ということを明確にし、自分の中の問題を調整するツールなのです。

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