シフティングを使う(2)

2. 観察者のワーク

 セミナーでは、「観察者のワーク」というワークをやっていただきます。これは、どんなワークかというと、こちらが相手をどう思うかで相手がどう変化するかを体験していただくものです。量子力学では、観察することによって物質の振る舞いが変わるといいますが、それの人間版だと思っていただいてもかまいません。

 量子力学の世界に、2重スリットの実験という実験というものがあります。簡単に説明すると、2つのスリットを通して電子を放射すると通常は粒子性のある影ができるのですが、カメラで観察すると波動性のある干渉縞が出来るというものです。なぜこういう現象が起こるのか科学でも説明されていません。ただ、物理的現象も観察することで明確に変わるということを証明する実験として知られています。

 「観察者のワーク」というのは、この概念を応用したものです。他人に対して質問する時に、質問者のマインド設定でどれだけ相手が変わるかを理解してもらうというワークなのです。具体的には、普通の状態とあるマインド設定をしてもらった時とで、相手の回答がどう変化するかを見ていただきます。シフティングは主に対話形式で行いますが、それはこの質問する側のマインド設定がとても大切だからです。ひとりで自問自答する形で行うことができる人もいますが、それは実はこのマインド設定が上手くいくかどうかに関わっています。

 では、「観察者のワーク」とは具体的にどんなことを行うのでしょうか。例えば、「あなたが生まれてきた使命は何ですか?」とか、「あなたが本当にやりたいことは何ですか?」とか、ビジネスでは「あなたが仕事で本当にやりたいことは何ですか?」とかいう質問をします。最初は普通に質問しますが、次に胸の中のハートや光をイメージしてそこに問いかけるように質問するのです。そうすると、多くの人が全く違う答えをします。

 もちろん、同じ答えをする人もいるのですが、そういう人は頭で考えていることと、心で考えていることが一致しているのではないかと思っています。この質問は様々なバリエーションが可能であり、ビジネスなどでは「あなたが仕事でやりたいことは」みたいな質問にすることも可能です。

 このワークを行うことで、深いレベルで2つの気付きを得ることができます。ひとつは、「頭と心(魂)とで考えていることが違うということ」、もうひとつは「質問者のマインド設定で相手が変化すること」です。質問者のマインド設定で相手が変化することを理解することはシフティングにとって、とても大切なことです。なぜなら、質問者によって引き出せる結果の深さが変わってくるからです。同時に、これはひとりではシフティングが難しいことの説明にもなっています。自分がまだ慣れていない時点ではこの感覚を自分で理解するのが難しいので、他人に質問してもらった方がやりやすいのです。また、自分の問題は自分では直視しにくいという側面もあります。

 また、頭と心とが一致していないことに気付くこともとても大切です。頭と心とが一致していないことに気付くと、自分の中の問題の整理が出来てきます。

 正確にいうと、頭と心とエネルギーとの一致という表現の方がベターですが、現代人は頭で心やエネルギーを調整しようとしがちですが、人間は本来、エネルギーから心を、心から頭を調整する方がやりやすいのです。エネルギーというのは雰囲気とかと考えていただいてもいいのですが、エネルギーを整えるというのは形から入るということで、例えば服装を変える、服装の色を変える、制服を着る、髪型を変える、身体の姿勢などを変える、作法などを身に付ける、習慣付ける、整理整頓する、みたいなことになります。もちろん全部する必要はありませんが、そういうことをしてエネルギーを変えると頭も心も変わっていきます。もともと日本人は型から入るのが好きだと思うのですが、それはこういうところから来ているのだと思います。

 頭と心を一致させる説明をしましたが、逆に頭と心とが一致しないとどうなるのでしょうか。これはロールシフトを使っても分かるのですが、たとえば頭はやりたいと思っているのに心ではやりたくないと思っていたり、頭では何々をやりたいと思っているのに、心では全然別のことをやりたいと思っていたりして、ぜんぜん整合性がとれていないとやることが上手くいかなくなります。

 「引き寄せの法則」とか「願望実現」とかも、頭の想いと心の想いが全然違うケースが多々あります。そして全然実現されないと思い込んだりします。しかし、実は頭は引き寄せようと思っていても、心は全然望んでいなかったりすると実現することはありません。このようなことに気付くのにも、この「観察者のワーク」はシンプルですが、とても分かりやすいものなのです。

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