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コロナ禍でも楽しく、自分たちらしく働くために、オフィスを解約しました。

2021年が始まりました。

新年明けましておめでとうございます。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

昨年は、兎にも角にもコロナに振り回される一年でしたが、昨年末ついにワクチンの承認がされたようなので、一刻も早く収束し、制限のない暮らしができるようになることを、ただただ願うばかりです。

さて、申し遅れました。
SHIFTBRAIN(シフトブレイン)の代表をしている加藤(@addsugar_takuma)と申します。

20年前に個人事業としてWebデザイナーを始めて、初めの10数年間は現場でモノづくりに関わっていました。その後、優秀なクリエーターたちが数多く入社してきてくれたおかげで、数年前からは、経営とプロデューサーの仕事を軸としています。最近は、アドミンチームと一緒になって、クリエーター達がわくわくできるような環境を作るための、制度や仕組みを作っては見直し日々試行錯誤しています。

世にある多くの会社と同じように、昨年はコロナ禍によって、弊社も働き方を大きく見直す機会となりました。悩みに悩んだ末、2021年1月末に青山のオフィスを解約し、フルリモートへ移行する決断をします。


「オフィスをなくして、フルリモートへ」

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僕らは2013年頃から会社として、小さな実験を繰り返してきました。同時に、組織の存在意義について考え、向き合い続ける中で徐々に見えてきた方針がありました。今回のオフィスをなくす決断は、あくまでもその方針に基づくものであり、また一過程に過ぎません。

当然自分たちの選択が100%正解だと言い切れるような自信はなく、今もなお暗中模索の状態です。そんな中、同じような悩みを抱えている経営者のみなさんや人事の方々がたくさんいるということを耳にしました。
僕らがここに至るまでにやってきたこと、感じたことをすべて記録することで、何か見えてくるものがあるかもしれない。少しでも何か感じ取ってもらって、お役に立てればと思います。

この10年の働き方の変化と歴史

先月18日に発売のWebDesigning2月号でCINRAの杉浦さんと対談しました。そこで話した内容とも重複しますが、IT・広告業界は、ここ10年の間に大きくその在り方を変えてきました。というのも働くことの価値観自体はもちろん、働く場所や労働時間などの環境すべてが、ドラスティックに変化してきたように思うのです。これは弊社も例外ではありません。少し長くなりますが、変遷の振り返りにお付き合いいただければと思います。

2010年~ 働き方の概念さえない時代

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10年前の当時、弊社は明治通り沿いの原宿近くのオフィスで、1フロアをCINRAとシェアしていました。
エントランスこそ、芝生と牛のフィギュアでほのぼのした世界観でしたが、ひとたび中に入れば、サイト公開前は2徹3徹が当たり前、土日祝日に出勤すれば、会社のコアメンバー達はだいたい出社。とにかく締め切りまで、ひたすらクオリティーアップに励む日々でした。そのある種の純粋さと、忙しさや過酷さの中で生まれる謎の一体感や達成感をエネルギーに、いただける案件は断らずにすべて受け、作り続けました。

大手の代理店やクライアントの仕事に関わる機会が急激に増え、CMで目にするような有名企業の案件に、僕の脳内アドレナリンがどくどくと流れ出していました。社内の誰よりも長い時間働くのが自分の役目だと信じ、ものづくりに没頭する日々。最初は輝いていたスタッフの目から光が消え、日に日に疲れていく変化に気づくこともなく、その後も徹夜を続けました。その状態が数か月続いた結果、社員が1人辞め2人辞め、結果的に半年で1/3のスタッフが退職してしまいました。

2013年~ どブラック企業からどホワイト企業へ

ただ「凄いものを作りたい」という信念に基づいてがむしゃらに頑張っていただけなので、当時は相当なショックを受けました。同時に独りよがりだった自分に気づき、「自分のやり方が間違っていた」と最終的には結論付けることもできました。
ここで一度考えがリセットされて、今までとは真逆の方向へ舵を切りはじめます。
「自分達らしさが出せない案件は受けない」
「クリエーターたちがわくわくすることに会社のお金を使う」
「クリエーターが苦手なことを会社がサポートする」
「働く時間を少しでも短くする」

クリエーター達の興味がどこに向いているのかを常に意識して耳を傾けるように意識しました。この頃から、実験的な試みを始めるようになります。例えば、海外に興味を持っているスタッフが多かったので、それなら機会を設けようと1か月ロンドンに一軒家を借り、全員が交代で行って働く「ロンドンサテライトオフィス」を作りました。また、花粉症でパフォーマンスが落ちるスタッフがいれば、避粉地の沖縄に行かせてみたりもしました。

●海外で見つけた、これからの働き方/ロンドン・サテライトオフィスでの「働き方の実験」ご報告 
https://shiftbrain.tumblr.com/post/89631337853

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●特派員ヤストモのしょうがなく沖縄にいますが何か?

こんにちは、SHIFTBRAIN広報担当です。 このたび特派員ヤストモ(kaminaly)の「しょうがなく沖縄にいますが何か?」日記が短期間ですがスタートしました。 計2~3回程度ゆるく続きますがどうぞよろしくお願いします。 ------...

Posted by SHIFTBRAIN Inc. / シフトブレイン on Wednesday, March 11, 2015

他にも、挑戦的な実験の一つとして、一旦収支は度外視した上で、本当に自分たちがワクワクできる面白い案件だけを受注するようにしました。予想通り、創業以来初となる大赤字になりましたが、ひるむことなくその姿勢を貫いているうちに、一つ、また一つと賞をいただけるようになりました。数年後には、それまで一度しか受賞経験のなかったはずのアワードの、何十枚もの賞状で棚が埋め尽くされるようになり、それに伴って自然と優秀なクリエーターたちも多く集まるようになっていきました。

2016年~ 働き方の未来に触れる

これまでいろんな取り組みをしながらも、あくまで「実験」と称していたのが、ある文献に出会って、世の働き方が大きく変わっていくことを確信します。2016年に厚生労働省のサイトにアップされた「働き方の未来2035」というものです。
国がこの文章を公式に発表したことは、当時の自分にとって大きな衝撃でした。まだ読んでいない方がいたら、ぜひ一度読んでみてほしいなと思います。
優秀な人たちが頭をひねって予測した「働き方の未来2035」の中には、下記のようなことが書かれていました。

3.1 時間や空間にしばられない働き方に
~2035年には、各個人が、自分の意思で働く場所と時間を選べる時代、自分のライフスタイルが自分で選べる時代に変化している事こそが重要である。(〜中略〜)働いた「時間」だけで報酬を決めるのではない、成果による評価が一段と重要になる。その結果、不必要な長時間労働はなくなり、かつ、是正に向けた施策が取られるようになる。

3.2 より充実感がもてる働き方に
~2035年には、「働く」という活動が、単にお金を得るためではなく、社会への貢献や、周りの人との助け合いや地域との共生、自己の充実感など、多様な目的をもって行動することも包摂する社会になっている。誰かを働かせる、誰かに働かされるという関係ではなく、共に支え合い、それぞれが自分の得意なことを発揮でき、生き生きとした活動ができる、どんな人でも活躍の場がある社会を創っていくことになる。自立した個人が自律的に多様なスタイルで「働く」ことが求められる。つまり、「働く」ことの定義が大きく変わる。

出典:厚生労働省「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」報告書

2018年~ WORKS GOOD!が生まれる

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「働き方の未来2035」にある「より充実感がもてる働き方」を突き詰めて考えていくと、「どうしたら充実感が得られるのか」という話になり、働くことそのものを一律化して定義すること自体が難しくなると思います。
その結果、「あえて定義しない」という選択の末に行きついたひとつの答えが「WORKS GOOD! いい働き方をするために、いい生き方を考える」という思想でした。
各々のクリエーターがどんな人生を目指すのかに真摯に向き合って、それを実現化するためのツールとして働き方を定義していく。
そのために、まずは一人ひとりが人生について考える時間が必要だと思い至り、15周年という節目のタイミングだったこともあって、GWと公休を組み合わせ全社一斉で16連休を実施しました。また、今までの人生を振り返る棚卸のような作業をするために、ライターさんに一人につき2時間の取材をしてもらい、それらを一冊の本にまとめました。これには、自分の人生だけでなく他のスタッフたちの人生にも触れて理解してもらおうという目的もありました。

2019年~ 形骸化する福利厚生と経済バランス

「WORKS GOOD!」のスローガンは社内からの評判もよく、自分としても数年間悩んできたモヤモヤが解消され、一つの方針として定めることができたような気がしていました。しかし、ここからまた大きな問題が生まれることとなります。「WORKS GOOD!」の思想自体は良かったものの、次第に一企業としての経済活動とのバランスが取れなくなったのです。

始めのうちはみんな喜んでいた福利厚生も次第に慣れてしまい、要求度合も高まる傾向にありました。また、売上に対しての評価指標も設けていなかったので、積極的に案件を取りにいくという姿勢も薄まっていきました。
結果、好きな案件に集中できるという点においてはスタッフたちのレベルは上がりながらも、利益がついていかないために、給与を上げたくても上げられないというジレンマが生じます。結果、優秀なクリエーターたちが事業会社に高額の年収を提示されて転職してしまうという状態に陥ることになりました。

2020年〜 独立採算制で完全自由化

完全自由化

WORKS GOOD!の方針は崩さずに、スタッフが能動的に仕事に向かって稼いでいくためにはどうしたらよいかを考えて行き着いた先が、MOLTSさんが作った「独立採算制+社内売買制」でした。
小さなチームが1つの会社のように独立採算で運営されており、利益還元のシステムも明確なので、自分の収入さえもコントロールできるというシステムです。MOLTSさんではこれを個人単位で運用していましたが、SHIFTBRAINではチーム単位にカスタマイズして導入することにしました。

詳しくは下記の資料を見ていただければと思いますが、簡単に説明すると、まず社内を3つのチームに分け、それぞれのチームにコミットライン(自分のいるチームのスタッフの給与の合計×2.5倍)を課します。会社側との約束としてはこのコミットラインを守ることのみとし、出社の有無や案件を受ける受けないなどもすべてチームの判断に委ねる完全自由化された仕組みです。会社に問い合わせがきた案件は即座に社内にシェアされ、最もモチベーションの高いチームが元請けとなります。そして、社内の別のチームへ依頼する場合は、チーム間において別会社のようにお金のやりとりも行います。
コミットラインを超えた利益の40%はチームのボーナスとして半期ごとに還元されるので、チーム単位で自分たちの給与のコントロールが可能になるというシステムです。
独立採算制はチームに裁量権が移り、自由度が増す反面、各チームが自分たちのチームのことだけを考えてしまうという悪い面もあります。

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組織に所属し続ける意味とは何なのか。SHIFTBRAINのクリエーターであるということは一体何なのか?この問いにはっきりとした答えを持つためには、今一度原点であるミッションやビジョンから立ち返って言語化していく必要がありました。その後、コピーライターの西山と毎週定例ミーテイングをしていく中で生まれたのが、新しいSHIFTBRAINのスローガン「SIGHT RENEWAL」という言葉です。これは社名である「SHIFTBRAIN」とも共通する価値観ですが、「事実は事実としてあった上で、それを全く別の視点から見つめ、新たな価値を生み出していくこと」という意味合いがあります。そしてMISSIONは「みんなで楽しみながらつくり、課題をクリアする。」VISIONは「世界を、明るいほうへシフトする」と決めました。ちょうどそのあたりから、世の中がコロナによって活動を停止し、自分たちの働き方もリモートが主体となっていきます。

●MVVS for SHIFTBRAIN

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2021年~ withコロナ時代のオフィスと働き方

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さて、2020年から導入した「独立採算制+社内売買制」によって、収入自体もスタッフがコントロールできるシステムの土台ができました。
加えて、チームのコミットラインさえ達成していれば、働く場所も時間もスタッフが自由に選べます。ただし、この「コミットライン」だけは、唯一スタッフたちの重荷として存在してしまいます。ここをどう軽減していくのかが課題で、スタッフが自身の給与以上に稼がなければならない数字、主に会社の運営に関わるお金をなるべく減らす必要がありました。ここがクリアできればスタッフたちの負担を減らすことができ、より自由にものづくりに集中してもらうことができます。
そこで真っ先に思いついた人件費以外の固定費として、「オフィスの賃料」がありました。現状出社しているのは僕と数人のスタッフだけで、その人数で使うには280平米はあまりにも広すぎました。そこでコロナ収束後の出社形態について社内アンケートを実施した結果、スタッフ全員が定期的に集まりたいという思いはありながらも、その頻度については「月1回以内」が70%という結果でした。

ただ、オフィスは「働く場所」という機能面だけではなく、存在していること自体にも意味があるのも事実です。デジタル化が進んでいるとはいえ、人は目で見て触れられるものにより強い愛着を持ちます。そういう意味で、オフィスを完全に無くしてすべてデジタルに移行するというのは、愛着や帰属意識を持つ対象がなくなってしまい変化のインパクトが大き過ぎるかもしれない。でも、使っていないスペースをただ持て余しているのは明らかに経費の無駄遣いです。
悩みに悩んだ結果、自分たちの居場所として実在する場所を持ちながらも、そのスペースや機能をフレキシブルに変化させられる場所こそが、これからの自分たちの新しいオフィスの形なのではないかという考えに辿りつきました。そして偶然見つけたのが「AOYAMA SHARE GREEN」です。現オフィスから徒歩数分の場所でした。

冒頭で「オフィスをなくして、フルリモートへ」と啖呵を切っていたのに、「残すのかい!」とつっこまれてしまいそうですが、そうなんです、完全には無くせませんでした。
ただ、出社の義務はないので、使いたいスタッフだけが使う場所にはなります。広さは今のオフィスの1/10と狭いですが、コワーキングスペースのような自由席もあり、必要に応じて予約できるMTGスペースも用意されています。その都度変化に対応してくれる柔軟さを持っているところが気に入って契約に至りました。

●AOYAMA SHARE GREEN
https://share-green.com/

フレキシブルに働ける手当をつくり、「会う時間」を今まで以上に大切にする

狭いながらも柔軟な形態を取れる新オフィスへの移転によって、賃料をこれまでの1/6に抑えることができました。また、頻繁に通わなくなったことで通勤費も浮かせられます。さて、ここで節約できたお金を使って、固定オフィスがあった今までの環境以上に快適で高いパフォーマンスが出せるような環境を作らなければなりません。
まず取り組んだのはスタッフたちへの手当です。ほとんどのスタッフは自宅をメインの仕事場としているので、手当として毎月¥15,000を支払うことに決めました。ただ、人によって集中できる環境は異なります。自宅が快適という人もいれば、自宅では子どもがいて集中できないという人、半分ほどは出社した方が仕事が捗るという人など様々です。このように、快適な仕事環境というのは人によって千差万別で、すべてに対応することは難しいのですが、かといって皆一律では選択肢がなく窮屈です。そこで、主とする場所(自宅、コワーキングなどの自宅外、オフィス)によって3つのコースから選べるような制度を作りました。

手当

もう一つは、出社頻度についてのアンケートにあった「1、2ヶ月に一度は出社したい」というスタッフの声を、どのような形として実現するのかを考えなければなりません。
昨年の3月から突発的に完全リモートワークになりましたが、日々進化するクラウドサービスのおかげで、実際は業務に直接大きな支障を来すことはありませんでした。一方で、表からは見えづらいところで問題になっていたのが「スタッフ間の関係性の悪化」でした。
「メールよりも電話、電話よりも会って話す方が思いが伝わる」とよく言われますが、仕事上においてもそれはやはり例外ではありません。日々slack上で交わされる大量のデータとしての会話だけを用いて、その奥に潜む思いや感情までをも共有することは難しい。そのやりとりの中で生じた細かなストレスの積み重ねによって、チーム間や個人間において不要な衝突が生まれてきました。
その改善案を模索する中で、日々の円滑なコミュニケーションのために各々努めるのは前提として、もっと根本的な会社への帰属意識やチーム間の信頼構築を育む体験の機会を作れないかと考えるようになりました。そうした思考の中で行きついたのが、2014年に行ったロンドンサテライトオフィスでの経験でした。刺激的な場所で仲間たちと会社や個人の未来について語り合ったことは、何年経っても色褪せない経験として記憶に残っています。さすがにこのコロナの状況で海外へ行くことはできませんし、毎月場所を変えるのも難しいとは思います。でもその中でも工夫しながら、地方と東京を組み合わせて月に一度はみんなで集まり、丸一日お互いの理解のために時間を費やすような催しを作ることにしました。

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場所に縛られない働き方によって生まれた変化

今まで書いてきた制度や方針を社内に伝えていくと、スタッフたちにも変化が現れてきました。出社義務がなくなったことで、それまでオフィスからの距離を基準に選んでいた住居を「自分たちの人生にとって快適な場所」として捉え直し、移住し始めたのです。
今のところは実家に戻るケースが多く、福井、茨城、岐阜、大阪と、地方で働くスタッフも増えてきました。
また個人の移住だけに留まらないケースも出てきています。というのも、昨年誘致の件で大きな話題となった『広島ではたらく、という選択』を知って広島に強い興味を持ち、江田島という瀬戸内海の離島への移住を検討しているスタッフがいるのですが、これを機にその地を会社の一拠点とする準備を進めることにしました。

コロナがいつまで続くか、テクノロジーがどのように変化していくかは誰にもわからない中で、大切にしたいのは自分たちらしさかもしれません。冒頭でお伝えした通り、今でもフルリモートの決断が正解かどうかはわかりませんが、最適な働き方の答えを求めることではなく、その過程を楽しみながら考え、適応していくことこそが僕たちにとって大事なのではないかと気づかされました。つまり自分たちもSIGHT RENEWALし続けることで、自分たちらしい働き方の未来をつくっていくーー。そんな誓いとともに、2021年をスタートしたいと思っています。

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Illustration: Sunao Nakamura