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新規ゲーム開発/ゲーム運用に潜む罠について ~グリー、アカツキのゲーム開発のキーマンが語る~

ゲームプロデュースにおける将来の展望や、さまざまな課題・解決策など、実践的なナレッジを交換できる場として、2020年10月20日にオンラインで初開催された「SHIFT Game Producer Meetup #1」。1LDK 代表取締役 朝岡勇太さんをファシリテーターに、WFS(グリー) Studio本部 Studio1部 副部長 栗山知也さん、アカツキ ゲーム事業統括本部 企画職能GM 菅隆一さん、SHIFTエンターテインメントビジネスユニット BU長 清水恭兵がパネルディスカッションを行いました。そのディスカッションの内容をお届けします! 

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ゲーム開発で大事なのは、意義と目的をしっかり共有すること

今回、行われたディスカッションのメインテーマは「新規ゲーム開発/ゲーム運用に潜む罠について」。最初に1LDK社の朝岡さんが話題としてとり上げたのは「新規開発の問題点」でした。予算やターゲットを考慮し、面白いゲームをつくっていく。その一方で、期日通りにゲームをリリースしなくてはいけない。各社どうしているのか、朝岡さんから疑問が投げかけられました。

アカツキ社の菅さんからその対策としてあがったのは、「情報の透明性と速報性」。なぜ、そのプロジェクトが存在し、誰に、何のためにやるのか、アカツキ社ではメンバーへの「意義・目的」の共有を大事にしているとのことです。「意義・目的を企画書の承認段階で伝えて終わりではなく、定期的にそれを発表する場を設けています」と菅さん。

さらに、アカツキ社では「どんどん権限を移譲して、可視化する文化があります」と菅さんが紹介してくれました。デリゲーションボードを利用して、権限の範囲を公開。メンバーは問題点などを誰に聞けばいいかクリアになり、オープンにするデメリットをみんな感じていなとのことです。

ゲーム開発で注意するべきことは「少数精鋭のチームであること」

非常に数多くのゲームをリリースしているグリー社。そのなかでWFS社に所属している栗山さんに、ゲームを開発する際、「規律を守るという観点で気にしていることは?」と朝岡さんが質問。栗山さんからは「シンプルな話、むやみに人を増やさないこと」との答えが返ってきました。「人を増やすことで問題が解決すると思って増員したら、新たな問題が発生するということがたくさんある」と朝岡さんも納得。「互いにリスペクトするという社の文化と、各メンバーがプロフェッショナルであることを前提としつつ、小回りがきくチームにしておくことが大事」と栗山さんは教えてくれました。

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栗山さんの話を受け、さらに朝岡さんが「チーム体制」について質問。WFS社では、「新しい驚きを世界中に届ける」というミッションのもと、新作の種をつねにつくりつづけているそうです。そして社としてロジックを超えてオリジナルタイトルに挑戦しつづける、という意思があるため研究開発フェーズが重要であり、そのようなフェーズにおいては、運営タイトルとの兼務も含めてチームは数名体制とのこと。プロジェクト化していくなかで、少数精鋭のメンバーでスタートとなることが多いそうです。

グリー出身である菅さんも、栗山さんに質問を投げかけます。菅さんが在籍当時、WFS社で推進していた「ゲームエンジン戦略」について、「現状はどうなのか」と聞きました。「ゲームエンジン戦略」とは、あるゲームのエンジンを流用し、違うタイトルに乗せて開発コストを下げ、効率よくヒットに導き収益をアップさせる戦略。その現状は、「多くのタイトルを開発してきたなかで、エンジンに限らず、『このタイトルのこれを使おう』というのは割と当たり前にやるようにやっている。積み上げてきたことと、新しく挑戦することを織り交ぜながらバランスよく」というのが栗山さんの返答でした。

ゲーム開発では、人と向き合って対話を重んじる文化がヒットに繋がっている

時間が経過するごとに、ますます盛り上がりをみせるパネルディスカッション。そんなパネラーに朝岡さんが投げかけたテーマが「どうやってヒットを生むチームをつくり上げているか」でした。それについて回答したのが栗山さん。「WFS社には『挑戦する、何度でも』、『内省を経て、より高みへ』という標語があり、プロジェクトやマイルストンごとによかったことと悪かったことを振り返り、再挑戦することでチームを強化している」と語り、そのうえで「各タイトルのキーパーソンと、どのような座組にするか、どのようなゲームをつくるのかを一緒に決めていく」とのこと。「どのフェーズでアサインを決めるのですか」との朝岡さんからの質問には「研究開発をしながら、予算化をするタイミングで正式にアサインします」と栗山さんが回答しました。

「最初に集まった人たちの技術のアッパーが、そのゲーム内で表現できる技術のアッパーになる」と切り出し、「最初の種をつくる、チーミングが一番大事だなというのは改めて思います」と菅さん。「チームづくりをしていくうえで、何かコツは?」と朝岡さんが菅さんに聞くと、アカツキ社の文化の話題に。

「ヒットは狙って出せるかというと100%そうではない。時代の流れ、本当に面白いものをたまたまつくれる人がいるなど、いろいろな奇跡が集まってヒットが生まれると思うんです」と菅さんは前置きしながら、アカツキがなぜヒットを生み出せたのか、解説してくれました。人と向き合って対話を重んじる文化があるというアカツキ社。「自立、規律を大切にして、ルールで縛らない。ガイドラインを示して、個人の規律、自立に任せて、行動をしてもらう文化が組織の根っこにある。そのことが、アカツキ社でヒットが生まれる要因となったのでは」と菅さんは話してくれました。


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テストの結果から、組織上の課題が見えてくる

セッションは、リリース後の話題に突入。これまで、どうやってリリース後の問題を解決してきたのか。朝岡さんが問いかけたのは菅さん。その菅さんが、アカツキ社での問題解決に関わる体制について紹介してくました。

大きくゲーム職能とゲーム事業本部にわかれているというアカツキ社。「縦のプロジェクトに対して、横の職能が全方位、カバーをするマトリックス型の組織構成をしているんです」と菅さん。アカツキ社では職能側にかなり権限が渡されているとのこと。いろいろなプロジェクトに介入できるほか、各プロジェクトのプロデューサー、プロジェクトリーダーが信頼関係を築いているため、部署間の対立も皆無。「それが組織上の強みなんじゃないかな」と菅さんは語ります。

「問題が起きたとき、品質の観点でどのように問題を解決していくのか」と朝岡さんからSHIFTの清水に質問が。「テストの結果から、ある数字が見えてくる。その数字から組織上の課題を抽出します。そして、その課題に対しての解決策をお客様と考えますね」と清水も、品質保証を推進しているからこその意見を述べました。

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スマホゲームの運用フェーズに備えて、ログの事前設計は絶対!

「セッションの視聴者には、たくさんのゲーム開発者がいるかも」としつつ、その方々のために「運用フェーズに備えて、『これだけはやっておいた方がいい第1位』を3人にお伺いしたいです」と朝岡さん。

「最後の最後のログの設計ですね」と答えたのは菅さんでした。「バグをつぶさなくてはいけないことに、みんながとにかくフォーカスをしてしまう。だから、ログを設計して実装するところが最後の最後まで後回しにされるんですよね」と言及。その話を受けて「菅さんのログの話は大事だなと思っていています」と栗山さんも同意。そのうえで、「リリース時に入れたい機能はいくつもあると思いますが、安全にリリースする、サービスを安定して運用することは、将来的なブランドの信用にも関わる。そこを守る機能は絶対に入れといた方がいいなと感じています」。

清水はデバッグ、QAの立場から、運用フェーズに備るべきものについて紹介しました。「運営後に、どういうフローで仕様書を直し、それをQA側に連携するのか。またそれを修正した場合に誰に連携するのか、運用のフローをしっかりと決めておいた方がいいと思っていますね」と清水。そのうえでと話し、「QA側としても、テスト項目のどこを直したらいいのか、仕様と紐づくのでそこさえ決めておけば、手戻りが多発せずにスムーズに修正までのプロセスを回せるのでは」と語りました。

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ゲームのリリース後で大切なのは「継続率」

ゲームのパブリッシャーさんや開発会社さんに「リリース初月のインストール数のうち50~30%が1年後まで残ると考えたとき、初手のクオリティが重要です」と話しているという朝岡さん。そして、「そこから何かが足りない、リカバリーしなければいけないときに、どこかのアセットを足さなくてはいけなくなる。それらが最初の3ヶ月以内で発生する可能性を見越して、半年分のアセットはつくっておいてください」と伝えているそうです。その話を聞き「半年分のバッファをとることが、けっこう主流になってきたかなぐらいに思っています」との見解は菅さん。

運用経験が長い栗山さんには、「リリースしてからフェーズごとに見るべきKPIが変わってくる。どういうところを注目して見ているのか」と朝岡さんが疑問を投げかけました。そんな朝岡さんは、リリース1ヶ月目はリテンションレートしか見ないとのことです。栗山さんも「まず継続率が大事っていうのはまったく同意です」とし、「最初インストールと継続率を一番見ています。ユーザーさんが楽しんでくれていることがわかれば、あとは運営に注力できる。そういう意識が強いです」と話してくれました。

さらに菅さんも同意見の様子。そのうえで、「思ったよりも売上が見込めない場合、提供しているものと、求められていることの間に大きくボタンのかけ違いを起こしている」と話します。「しっかりと触診しながら『課題の本丸』にまずフォーカスをしていかないと、想定通りにいかない理由が明らかにならないなって思います」と菅さん。その意見に朝岡さんも「確かに」と深く賛同していました。

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ゲーム開発で大切なこと「新しい驚きがあるゲームになっているか」

いよいよトークセッションも佳境。最後は視聴者の方から寄せられた質問について、パネラー3人が回答しました。最初の質問は「予算やスケジュールが順調に進行しない要因は何でしょうか?」。

栗山さんがWFS社の場合、「クオリティが未達であることが多い」と順調に進行しない要因を回答してくれました。それを聞いた清水が「未達、達成をはかる、またはクオリティをはかる指標があるんですか?」と質問。社内テストやABテストはやるものの、栗山さん曰く「これなら新しい驚きがあるゲームになるぞ、という最初の構想に対して、プレイ感と合っているか」が指標になるとのこと。「全部が繋がって、通しで見てみたら、『あれ? 意外と足りてないぞ』 というのは、できあがってこないとわからない部分が多い。これがゲーム開発の難しいところだけど、醍醐味」と栗山さん。

そして、ついに最後の質問に。「テレワークで実際、問題は発生しているか」。本日最後の質問にまず回答したのは、栗山さんでした。WFS社では、テレワークの実施において多少なりとも影響があったようです。メンバーのコンディションを知る機会が減少したと話す栗山さん。そのため「雑談のためのZOOMをつくって、それをチャットに展開していたりします。やっぱり対面のコミュニケーションをとる機会は必要ですね」と意図的にコミュニケーションをとるようにしているそうです。

一方、菅さんのアカツキ社ではまったく問題が発生していないとのこと。しかし、「雑談から生まれる、いろいろな可能性が、そもそもなくなってる」と菅さんは話します。「アイデアが生まれるとか、信頼感を重ねるとか、雑談を起点にした、これまでうまく回っていたものが一気にシャットアウトされた」と菅さん。そこでアカツキ社ではオフサイトミーティングなども検討し、現状を打破していくとのことでした。

ここで時間がきて、大いに盛り上がったトークセッションも終了。WFS社、アカツキ社のゲーム開発のキーマンが語った、お話の内容はいかがでしたでしょうか。ぜひ「SHIFT Game Producer Meetup #2」にもご期待ください!

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