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感染するカニバリズム!一口かじったらダッシュで逃げろ!「地獄の謝肉祭」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(585日目)

「地獄の謝肉祭」(1980)
アンソニー•M・ドーソン監督

◆あらすじ
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ベトナムの戦場でカニバリズム(人肉嗜好)に取りつかれた2人の兵士。帰還後、彼らは忌まわしい記憶から逃れようとしながらも人肉の味が忘れられず、生肉を求めて大都会を彷徨する。彼らに襲撃された人間は次々と食人鬼と化し、大都会は地獄絵図となる。(Filmarksより引用)
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『カニバリズム(食人)が感染する』

というありそうでなかった斬新なアイデアをベトナム戦争帰りの軍人たちの物語に旨いことマッチさせており、カニバリズムシーンの物足りなさやチープさは少々気になりましたが個人的にはかなり楽しめました。

原題は「Cannibal Apocalypse」なので、直訳すると「人食い黙示録」や「人食い大災害」等でしょうか。その中で「地獄の謝肉祭」という、一見意味は合ってなさそうですが雰囲気的にバッチリな邦題をつけた方は相当センスがありますね。

捕虜になっていた部下を助けようとしたら腕を噛まれてしまった主人公•ノーマン(映画.comより引用)

ちなみに謝肉祭とはカーニバル(carnival)のことで、語源は俗ラテン語の『肉を(carnem)取り除く(levare)』に由来するそうです。元々は特定の日に開かれた『肉に別れを告げる宴』のことで、断食の前などに行うのが一般的だったそうです。

そのため本来は宗教的な意味合いがありましたが、現在ではどこの国(カトリックの文化圏)でも年中行事や観光行事にしていることが多いようです。

なので「地獄の謝肉祭」は「地獄のような思いで肉に別れを告げる宴」なんだと考えると中々に深いメッセージが感じられます。

ちなみに監督を務めたアンソニー•M・ドーソン氏は60〜90年代に掛けて様々なミリタリー系やカルト系映画を数々生み出しており、「ポイント・オブ・デッド/復讐捜査線」(’97)以降は作品の発表はなく、残念ながら2002年にお亡くなりになられています。

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Filmarksより引用

◇ノーマンはベトナム戦争の指揮を取っていた際、部下のチャールズとトミーが飢えに堪えられずに人肉を貪っているところを目撃。ノーマン自身もトミーに腕を噛まれてしまい、帰国してからも頻繁にその時の悪夢にうなされ、さらには生肉を見ると衝動を抑えきれなくなっていた。ある日、PTSDで入院中だったチャールズが一時退院するも映画館で女性を襲ってしまい、さらには逃走時に数名を殺害してしまう。

という導入から

ノーマンの説得で警察に自首をするもその際に警官に噛みつき、さらには収容された病院でトミーと結託して暴動を起こし、看護婦の肉も食いちぎる。彼らに噛まれた者は同じように人肉を欲するようになり、あちこちで人が人を襲う事件が発生。チャールズたちに不思議な連帯感を抱いたノーマンや看護婦は彼らと行動をともにし、あてもなく闘争劇を繰り広げる。

という中盤以降へと繋がっていきます。

最後まで何の説明もないまま『カニバリズムが感染』という設定をやり通しており、それが治るワクチンなどが作られることもなく、最後の最後まで希望のない暗い展開は個人的にはかなり楽しめました。

主人公•ノーマン(映画.comより引用)

ですが世間一般の評判はあまりよろしくないようで

◇ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」から“人喰い”の要素だけを取り出して作られた亜流ホラー。もっともらしい説明の無いまま、カニバリズムを伝染病のように扱った設定に根本的な無理が有り、いくらイタリア製だとてここまで無茶だと楽しめる筈がない。兵士という設定を活かしたアクションがある訳でもなく、陰湿な展開に終始するお話もいただけない。(allcinema.net解説より抜粋)

と中々に酷評を喰らっています。

確かに『ゾンビのゾンビじゃない版』ですし、「カニバリズムの人間に噛まれた人もカニバリズムを発症する」という突飛な設定を「狂犬病みたいなもの」で片付けてしまうのも少々さみしくはありました。

ノーマンの腕をかじるトミー(映画.comより引用)

主人公であるノーマンは人間性や葛藤みたいなものがあまり深いところまで描かれていないため、極端に言えば「人肉食べるのをずっと我慢してる人」くらいにしか見えませんでした。

なもんで、蚤の市で立て篭もって警察に包囲されたかつての部下•チャールズへの説得やラストの妻に対する思い等もあまり伝わってこず、最後まであまり主人公っぽさが感じられませんでした。

チャールズは狂気性が感じられてすごくインパクトがありました。(映画.comより引用)

カニバリズムを全面に押し出している割には『衝動を抑え切れずに一口噛んだら騒ぎになったので、ダッシュで逃げる』という中途半端なシーンが多く、グロ描写のインパクトが弱かったです。『生きたままの人間をむしゃむしゃと貪っていく』みたいな迫力のあるシーンが一回くらいあってもいいような気もしましたが、この作品の暗めのテイスト的には合わないと思います。

(映画.comより引用)

冒頭ではベトナム兵や民間人を無差別に殺害していたノーマンたちが終盤では下水道に逃げ込み、銃や火炎放射で武装した警官に追い込まれていきます。

私はこの逆転現象が起こっている二つのシーンに、戦争に対するアンチテーゼを感じました。

雰囲気たっぷりの老刑事さん(映画.comより引用)

ところどころ無茶で説明不足感は否めませんが、何を描きたかったのかはすごく伝わってきますし、暗めの展開も個人的にはかなり好きでした。好き嫌いは分かれるかもですが私は面白かったです。

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