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そこでしか体験できないことがある ~ 国際ワークキャンプの魅力

「渋谷若者部」2016年4月19日(火)18:00~19:00放送

【ゲスト】
田名部 実里(たなべ・みのり)さん(大学生)
今野 聖巳(こんの・さとみ)さん(大学生)
浅井 杏里(あさい・あんり)さん(日本国際ワークキャンプセンター)

「渋谷若者部」の第3火曜日は、NPO法人日本国際ワークキャンプセンター(Never-ending International work camps Exchange:NICE/ナイス)の皆さんと一緒にお届けしています。

―― 引き続き『渋谷若者部』の後半です。前半は、ワークキャンプという「滞在型のボランティア」が、世界95カ国で年間3,000件、日本でも50ヵ所で行われている動きがあって、いろんな国の人たちが交流しながら地域に貢献しているという話を聞かせていただきました。

この時間は、ワークキャンプに参加したことがある皆さんが集まってくれました。実際に、海外あるいは国内でどんな経験をしたのか、学生生活をやりながらワークキャンプに行ってみて、その後の大学生活や考え方に変化があったのかどうか、みたいな話も聞けたら面白いかなと思います。

ここから先は、進行役を浅井杏里さんに託したいと思います。

浅井)NPO法人NICE(ナイス)、日本国際ワークキャンプセンターから来ました、浅井杏里といいます。私は今年でNICEに勤めて5年目になりました。大学生の時に国際ワークキャンプというものに出会って、すごくその魅力にハマってしまい、大学を卒業した後、職員として働いています。今日は、女子のメンバーを2人連れて来ましたので、2人の自己紹介をさせていただければと思います。

田名部)田名部実里(たなべ・みのり)と申します。NICEでは"みの"と呼ばれています。大学院で日本語教育の研究をしています。NICEには、大学1年の夏休みに九州の大分県日田市で行われた子供チャンプに参加して、大学2年の夏にはケニアに行きました。3年の春休みにモンゴル、3年の夏にはインドでのワークキャンプに参加しました。

今野)今野聖巳(こんの・さとみ)です。NICEでは"さとみ"と呼ばれています。私は今大学4年生で、大学2年のときにヨーロッパのチェコ、大学3年の冬にはフィンランドのワークキャンプにも参加しました。その他にも、NICEが持っている学生団体のメンバーとして、千葉や埼玉など関東近郊で気軽に参加できる週末1泊2日のワークキャンプを開催してます。

■「ハマっちゃう」ワークキャンプの魅力とは?

―― ケニア、インド、モンゴル、チェコ、フィンランドなど、いろんな国が出ましたね。最初に浅井さんもNICEの魅力にはまっちゃって、と言っていましたけど、どうしてはまったのか、この辺をじっくり聞かせてください。

浅井)ワークキャンプには、一言では言い尽くせないような魅力があるとは思います。国内だったり、海外世界各地で行われている国際ワークキャンプですが、2人はどんなところが魅力だと感じていますか?

田名部)私はやっぱり"出会い"っていうのがワークキャンプの魅力だと思います。多国籍なメンバーがひとつの場所に集まって、地域の人と一緒に活動をして盛り上げていく。合宿のような形で集団生活をしながらの活動なので、「はじめまして」と会っても、寝るのも一緒だし、食べるのも一緒だし、お風呂もずっと一緒なんです。本当に仲良くなって、ワークキャンプが終わった後もFacebookなどでやりとりしていています。地域の人とも仲良くなるし、いろんな人に出会える。その出会いが魅力だなと思います。

浅井)そうですね。本当にワークキャンプでは、同世代の方に限らず、年齢や性別や国籍を超えていろんな方と出会う機会があるので、それはすごくの大きな魅力のひとつだな、と私自身も感じています。さとみはどんなふうに思っていますか?

今野)"行ってみるまでどんな人が来るか全くわからない"っていうのがすごく面白いなと思っています。私が今まで行った国外のキャンプは全部ヨーロッパなんですけど、行ってみたら15人中日本人が2人、あとは9割ヨーロッパの人、ということもありました。あとは年齢層がすごく幅広いとありましたが、チェコでのワークキャンプのときは、一番元気ですごく働いていたのが、学生じゃなくて50代後半のフィンランド人のおじさんだった、というのが私にはすごく印象的でした(笑)。

観光では行けないようなところに行けるっていうのも、私はすごく魅力的だなと思っています。観光となると、やっぱり首都とかそういうところが多いと思うんですけど、ワークキャンプは首都から少なくとも3、4時間ぐらい離れた僻地(へきち)でやることが多いんです。絶対に自分で1人だったら行かないようなところに行って、そこで汗水流して働いてみんなと寝食を共にして、素晴らしい時間を過ごせるところがすごく魅力的で好きです。

浅井)そんな感じで、ここぞまさしく田舎というような場所で開かれることが多いんですけれども、日本でもそうで、地方で行われるものがたくさんあります。例えば、長野県のワークキャンプは、集合場所が駅なんですけど、そこから歩いて1時間半くらい山を登った人里離れた所で生活をします。それが逆に魅力的と言ってくれる人も多いと思います。

私自身が学生時代にワークキャンプに参加をする中で魅力だなというふうに感じているのはですね、日本国内でワークキャンプを開催したときの、地域の山を守るおっちゃんたちとの出会いです。それまで、大学時代に専攻していた社会福祉では"高齢者"という言葉を、"サービスを受ける側・支援される側"というような形で扱っていることが多かったんです。でも、実際に私が山の中で出会った、高齢者とはとても呼べないおっちゃんとか、人生のお姉さまがたは、本当にエネルギッシュで(笑)。山の中をすごい高速で上がっていったり、植物の名前をたくさん知っていたり、"生きる・歩く知恵袋"みたいな方々だったんです。そういった出会いもワークキャンプならでは、でした。

■みんなのワークキャンプ体験談 in ケニア

―― 先ほどいろんな国の名前が出たので、どんな場所だったのか、どんなプロジェクトだったのか、大変だったことや危険なことはなかったのか、実際どうだったのか、ひとりひとりの皆さんの経験を聞かせてください。

田名部)私は大学2年の夏にケニアに行ったんですけど、海外でのワークキャンプはそれが初めてでした。何でアフリカに行くの?何でケニアなの?とすごく聞かれたんですけど、私自身、旅がものすごく好きで、アフリカにいつか行ってみたいなっていう思いと、行ったことないから行ってみようっていうような直感的なノリで、ケニアのワークキャンプを選びました。日本人が必ずいるプログラムということで、両親にも、「現地集合・現地解散だけれども、ちゃんと現地では日本人もいるから大丈夫だよ」と伝えたところ、行きたかったら行きなさいと。小さい頃から何でもやりたいって言ったことに挑戦させてくれる両親だったので、そのように送り出してくれました。

ケニアでは、ビクトリア湖の近くにある、生徒が800人のエパンガ小学校に滞在2週間滞在しました。そこでは校庭の隅っこに大きな穴を掘ったんです。何の穴か、想像つきますか?

片柳)何の穴ですか……?

田名部)トイレのための穴を掘ったんです。大体、日本の浴槽の2倍ぐらいの幅で、それを下に15m ぐらいまで人力でスコップで掘って、バケツで砂を汲み上げるっていう作業2週間通して行いました。その上に小屋を建ててトイレにするっていう作業が、私たちが帰国した後に行われているはずです。

あとは、日本人が8人いたんですけれども、800人の子供たちがいるので、休み時間になると1人の日本人に対して100人の子供たちがわぁっと集まってきて一緒に遊ぶっていうような生活でした。

行くまではケニアとかアフリカっていうのは治安が悪くて、ものすごく危険なイメージが多かったんですけれども、行ってみると、エパンガ小学校の地域は本当に田舎で、人も温かくて。子供たちもうちに来てお菓子食べようよとか、すごく親切に優しくしてくれて、私にとっての故郷のような、あったかい場所でした。

浅井)日本の生活とかなり違う生活環境の中で、何か困ったこととか、大変だったことっていうのはありますか?

田名部)日本の生活ではあって当たり前と思って生活してきたものの中で、ネット環境ですね。私、けっこうスマートフォンから離れられないような生活を日本ではしているんですけども、行ってみたら両親と連絡が取れないのは心配をかけてしまうのでちょっと不安はあったものの、なきゃないなりに何とかなるかなっていうような生活でした。

あとは夜は電気もなかったんですけれども、ランタンを囲んでみんなで歌ったり踊ったり、すごくいい時間を過ごせました。お風呂もなかったんですけれども、水を浴びて、郷に入っては郷に従えという感じで、ケニアの現地の人たちに近い生活を楽しむことができました。

浅井)すごい、たくましい(笑)

片柳)ケニアは暑いから、水を浴びてもそんなに寒いところではないですよね?

田名部)そうですね。朝と夜はやっぱり寒いんですけど、日中だったら、髪を洗って濡れてもすぐ乾きます。洗濯とかも、私たちのぎこちない手洗いの様子を見て、子供たちが「日本人へた〜!」って言いながら、私達の洗濯物を一緒に洗ってくれたりして。

浅井)逆に助けられたような。

今野)ほんとです。はい。

浅井)アフリカとかアジアとかそういう場所では、水浴びをすることが多かったり、日本とはかなり違う生活環境のわけなんですけども、そういう環境を初めて体験する人も参加者にはすごく多いんですが、だいたい女子は3日あれば慣れます。

田名部)逆に男の子の方が、最後までお腹痛いって言ってることも多いですね(笑)。女子は、最初はその環境を見て悲鳴が上がるんですけど、3日もすればたくましく順応するのがすごいな、というふうにいつも見てます。開放感があって心地良くなってました(笑)。

片柳)全然環境が違いますもんね。動物とかいっぱいいるんですか?ケニアって。

今野)皆さんがイメージするようなライオンキングのような世界は、国立公園内はそうなんですけれども、私が滞在した小学校の周りはいたって普通の日本の田舎のような感じでした。動物は、家畜の牛がゴローンと寝転がってるぐらいで、危ないことはなかったです。

■みんなのワークキャンプ体験談 in ヨーロッパ

浅井)アフリカの体験談ということでしたが、一方で、ヨーロッパでの活動はどんな感じでしたか?

今野)私は今まで、行った2カ国がどちらもヨーロッパでした。アフリカとかインドとは違って、先進国ではあるんですけど、大学2年生の時に初めて行ったチェコは、本当に田舎で、首都プラハから電車で3時間、ローカル線に乗り替えて2時間、そこからさらに歩いて1時間みたいな所でした。

片柳)歩いていかないといけないようなところだったんですね。

今野)バスは半日に1回ぐらいは出てるんですけど、タクシーもないような山奥でした。子供たちが使うキャンプ場をボランティアの13、4名で整備しようっていうプロジェクトだったんですけど、毎日9時から2時まで5時間ぐらいみんなで小屋のペンキ塗りとか、トイレを直したりとか、そんな仕事をしました。

終わったら、携帯は使えないので、家族に連絡を取りたい人は1時間半ぐらいかけて最寄りの駅のパブまで行きました。wifiが唯一通っている場所だったんです。帰り道は日が暮れる前に歩いて帰ってきて、途中が電気も街頭も何もない道なんですけど、木にプルーンとかリンゴがたくさんなってて、みんなで摘み放題みたいな(笑)。

みんな)摘み放題なの?それは大丈夫なの(笑)?

今野)摘み放題で食べて、食べながら帰る。アルプスの少女ハイジみたいな。チェコだけど(笑)。そんな生活をしていました。

さっき、親は心配しないかという話になってたんですけど、私の場合は完全に申し込んで全部決まってからの報告でした。チェコの時は1カ月ぐらい前に言ったんですけど、フィンランドでのワークキャンプなんかは、もう2週間ぐらい前に「あ、そういえばフィンランドに行くことになった」って親に言いました。もう親は「あぁまたか」って呆れ顔ですよね(笑)。でも、NICEはちゃんとした信頼がおけるプログラムなんだっていうのを親もわかってくれてるので、安心して送り出してくれました。

浅井)フィンランドはどういうことをやってきましたか?

今野)今まで経験したワークキャンプや、みのが言ってくれたものとがらっと違っていました。ヨーロッパって今すごく難民問題で揺れてると思うんですけど、難民の方や移民の方が語学を学ぶ学校でした。北欧には、フィンランドにもスウェーデンにもそういうスタイルの学校が多くあって、デンマーク語で「フォルケホイスコーレ」って言います。150人くらいの方が生活してて、そこに私たちボランティアが13人ぐらいで行きました。

まず、学校なので、先生たちがすべて仕事をしていて、私たちがやることは本当に雪かきぐらいでした。雪かきをしながら、私は何のためにこんなに寒い思いまでしてフィンランドに来たんだろうって思ってたんです。学校にいる生徒さんたちにも、なんか変な人たち来たぞってすごい警戒されて、私たちも仲良くなれなくて・・・・・・ 来たのが失敗だった、もう帰りたいって思っていたときに、学校にいる男の子たちが話しかけてくれたんです。難民としてヨーロッパに行ける方って、体力的な問題とかもあると思うんですけど、男性が多いんです。彼らはアフガニスタンとかソマリアから来た方たちだったんですけど、もうすごく仲良くなって。毎日夜中の3時まで、言葉も通じないのにババ抜きする、みたいな生活をしてて、すごく楽しかったです。最終日には号泣で、日本に帰ってきても目が腫れてる感じで(笑)。サバイバル感があるワークキャンプではなかったんですけど、他文化理解(ライター注:他文化か多文化なのかは要確認)という意味では、これ以上ないワークキャンプだったんじゃないかなと私は思っています。

浅井)ありがとうございます。実はさとみが行ったフィンランドの学校に、私自身も去年の9月に行ってまして、その時も本当にたくさんの難民・移民の方を常に受け入れをしているような状態でした。私が仲良くなったひとりの男の子は、アフガニスタン人だけど、もともとイランに家族と移り住んいて、イランから国を出ることを決めて、90日かけてフィンランドまで陸路でやってきたと聞きました。普通に笑っていれば、そういう背景を全く臭わせないくらい明るいキャラクターの彼だったんですけど、私が帰る前日の夜に、仲良くなったから自分のこれまでの話を共有したいと、90日間のストーリーを聞かせてくれたんです。ドキュメンタリー映画を見ているような、本当に信じられないような旅を90日間して命からがら逃げてきたような人が、その場で今、フィンランド語も学んでいるような状況がそこにはあって、そういう方々と"支援者” と"支援される側"ということではなく、同じ学校の生徒だったり、ワークキャンプのメンバーとして来た学生として対等に仲良く交流できる、というのがワークキャンプの良いところのひとつだと実感しました。

■みんなのワークキャンプ体験談 inインド

本当にいろんなプログラムがあるんですよね。今、アフリカやヨーロッパの話を聞きましたが、インドにも行っていましたよね。インドはどうでしたか?

田名部)一言では言い尽くせないんですけど、まず、インドの一番の思い出が、着いて初日にワーク地までいく電車にだまされて乗れなかったことなんです・・・・・・。初日から半べそで帰りたいなぁって思いながら、デリーの街をさまよってました。ワーク地がデリーから3時間ぐらい電車で移動した所だったんですけれども、駅で日本で取っていた切符を見せたところ、「この切符じゃ乗れないよ」って駅員さんだと思って見せたおじさんに言われてしまい、旅行会社に案内されました。そしたら、あなたが持っているあなたが持っているチケットで到着する駅は洪水が起きていて、今その電車は走ってないから僕たちがタクシーで連れてってあげると言われたんです。「普通だと7万円するけど、君たち学生でしょ?学生だったら半額にしてあげるよ」って言われて、私はおじさんのことを信じてしまいそうになったんですけれども、もうひとり一緒に行った日本人の子は、これはおかしいということに気づいてくれて、どうにか旅行会社を脱出して、日本人宿に泊まり、次の日にチケットを買って、無事にワーク地に到着できました。あとあと地球の歩き方っていうガイドブックを見たところ、全く同じトラブル例が載っていて、単なる私の勉強不足であったんですけれども、初日から散々な思いをインドではしました。

だからといって、インドが嫌いになったわけではなく、むしろ今もう一度行きたい国の上位に入っています。

無事にワーク地についてからの2週間は、ものすごく濃密なものでした。移動しながら地域の小学校やおうちを訪問する文化学習のようなものも含まれたワークキャンプで、いろんな生活をしている人に会って、食事や住居環境を体験して、一言じゃ言い表せないような、いろんな文化がごちゃまぜになっているなぁと思いました。いろんな宗教も混ざっているし、地域によっても、まったく異なる生活をしていて。食べるものも、日本だとカレーってひとくくりにされてしまうような味のものが多いんですけど、すごい辛いのもあったり、辛くないのもあったり甘いのもあったり。本当にいろんな文化が混ざっている国で、もう一度体験しにインドに行きたいなと今は思っています。

浅井)たくましいですね。最悪の初日からの挽回がすごいですね。

田名部)帰りは日本人の女の子2人で電車に乗ってたんですけども、たくさんお菓子をくれるいいおじさんに会って、さっきとは打って変わってハッピーな気持ちで帰ってくることができました。

浅井)ハッピーエンドだったということですね。あぁ、よかった(笑)。

田名部)私達が1日遅れて到着するっていう連絡をしたときにも、インドの現地団体の方がすごい丁寧に対応してくれて、ウェルカムって歓迎してくれました。その時はフランスと韓国からワークキャンプメンバーが来ていたんですけれども、彼らも遅れてきた私たちを優しく迎え入れてくれて、本当に温かいワークキャンプでした。彼らとは今でもFacebookで繋がっていて、そのうちのひとりは日本に遊びに来たときに案内して、ご飯も一緒に行きました。

浅井)その後も、つながっているっていうのはすごく良いですね。

■みんなのワークキャンプ体験談 in 日本

浅井)では、海外のキャンプの話を今聞いていたんですけど、国内でも1年間に約50ヶ所くらいでワークキャンプが行われています。実は、みのは国内のキャンプにも深く関わってきたわけですけども、その話もちょっと聞かせてもらってもいいですか。

田名部)はい。私がワークキャンプに初めて参加したのは大学1年生のとき、2012年の夏休みでした。英文科に所属していたんですけれども、英語をなかなか話す機会がないと感じていました。もともと興味があったボランティアと、英語を使う環境が整っている国際ワークキャンプが、インターネットで出てきた瞬間、これは運命だと思って興味のあるプログラムを探して応募しました。そこで応募したのが大分県の日田市で開催されている長期の子どもキャンプ「子ども村」というプロジェクトでした。そこでは日本人の子どもたち30名ぐらいが、2週間のキャンプ生活を行うっていうプログラムで、子どもたちの安全を見守る、子どもたちとワクワクするような遊びを考えるのがワークチャンプの役割でした。

日田の山の大自然の中で、子どもたちがやりたいことが自由にできる場所っていうのをコンセプトに、班ごとに朝ごはんを考えて火起こしからして、朝ご飯を食べたら川に飛び込んで思いっきり遊んで、今度は昼ご飯作って、また食べ終わったら午後のアクティビティをしました。お風呂も自分たちで薪で沸かして入りました。

子ども村も20年以上の長い歴史があるんですけれども、最初はなかったお風呂も、ワークキャンプとか他のスタッフと一緒に作り上げた手作りのものがあります。

片柳)土地は毎年同じところでやってるんですか?

田名部)2年前から新しい場所になりました。日田市内なんですけれども天ヶ瀬(あまがせ)という場所で廃校活用した子どもキャンプを行っています。

片柳)毎回プログラムが行われるときには、前に参加した人が作り上げたものがあるんですね。つながってる感じがいいですね。

田名部)そうですね。新しい場所になって去年で2年目だったんですけれども、やっぱり初めての年だと、地域の方も「なんだろうこの団体は?子供たちは?」ってちょっと遠目で見るような感じだったのが、昨年は「これ、おじさんに手伝わせて」「この野菜とれたからみんなで食べて」ってどんどん関わってきてくれました。毎年来てくれる子も多くて、私たちスタッフも、子どもたちの成長を感じてますし、毎年会えるのがすごく嬉しいです。

浅井)日本人もそうなんですけど、わざわざ海外からリピーターとして毎年参加するような人もいるんですよね。

田名部)そうなんです。私が初めての年に一緒に同じ班で子どもを世話していたスペイン人の男の子がいるんですけれども、彼は去年帰ってきてくれて、一緒に活動できたのが同窓会のような気分で、とても嬉しかったです。

浅井)そんな感じで濃い時間を過ごすので、きっとリピーターも多いんだろうなというふうに思います。

実は昨日オフィスに、その子ども村に参加をしていた男の子がやってきて、次は彼が国際ボランティアに参加をしたいということで、どんなプログラムがいいかなと職員と相談をしてるような場面を見かけました。

子どもたちも小さい時に外国人ボランティアの人達と一緒に過ごした経験があって、その後大きくなってからも彼らの人生の中で大きなものとしてつながっているんだなぁと、活動の意義を改めて感じました。

■そこにはワークキャンプでしか得られない経験がある

―― みんなって最初に行くときはすごく緊張したと思うんですけど、その前に、こういうワークキャンプに行こうって思う、その入口は何なんでしょう?

たとえば、何かと何かを比べてワークキャンプを選んだとか、夏休みや冬休みにどうやって過ごそうかなって考えてワークキャンプにたどり着いたとか、そもそもボランティアとかに結構関心があって参加してるのかな?

浅井)確かに。そもそもなぜワークキャンプに参加をしたか、そのきっかけの部分ってどんな感じですか?

今野)私は1番最初に参加したのは大学2年の夏だったんですけど、単純に、安く、長くヨーロッパに行きたいっていうモチベーションだったんです(笑)。本当はバックパッカーみたいな感じとか、単純に観光として行くことができたんですけど、お金はかかるし、なるべく長期間行きたいし、できれば首都だけじゃなくてもうちょっとコアな所に行きたいなって。そんなわがままな願いを「ヨーロッパ 安い 長期」ってGoogleで打ち込んで、出てきたのがNICEでした。あ、ワークキャンプっいうのがあるんだってそのとき初めて知って、ボランティアをしながら、ヨーロッパのコアな部分に行けて、しかもすごく安いというのが当時の私には衝撃的でした。そこからヨーロッパに行って、絶対に普通の観光だけじゃ得られない経験ができるっていうところで、もうワークキャンプ。観光よりも旅行よりも断然ワークキャンプてっていう感じになりました。

浅井)実は私もすごく理由が近くて、ヨーロッパとか自分が興味のある国に長期間行ってみたいな、留学だと高いな、とかそういった自分の個人的な都合で探していたというのが結構大きな理由かなと思いますね。あとは大学の先輩が、ある日「私、タンザニアに行くことにしたの」って言っていて、まずタンザニアってどこですかっていう質問からして、よくよく聞いてみればワークキャンプで行くんだよっていうことを教えてくれて、そんな世界があるんだってすごいびっくりしたのを覚えています。それからワークキャンプに縁があって参加をしたなというふうに覚えています。

みのはどんな理由で参加しましたか?

田名部)私は青森県の八戸市出身なんですけれども、震災で津波が沿岸の地域を襲ったときに、友人に誘われて瓦礫撤去のボランティアに関わって、私たちボランティア受け入れてくださる地域のボランティアの方を見て、"ボランティアを受け入れるボランティア"もあるんだっていうことを知りました。ボランティアしに来たのにボランティアされてる、というようなことに疑問を持つようになって、もっとボランティアのことを知りたいって思うようになりました。あとはボランティア活動でいろんな人に出会えたので、大学で上京したらもっと幅広い分野でボランティアしてみたいって思って、英語を身につけたいなっていう私のわがままを叶えてくれるようなプログラムも多いワークキャンプに参加し始めました。

片柳)皆さんの話を聞いている、海外に興味があるというのがきっかけになっていますが、国内で日本人だけでボランティアをする機会っていうのももちろんいろんな団体で沢山あると思うんですけど、やっぱり海外でやることの意義は何ですか?魅力は今たくさん聞かせていただいたんですけども、これがあるから格別なんだっいうものはありますか?

浅井)海外渡航する方法はすごくたくさんあって、留学だったり、インターンだったり、いろんな選択肢があると思うんですね。その中で私たちがやってる国際ワークキャンプというのは、ボランティア活動の一種ではあるんですけど、誰かを支援するために行くっていうような一方向の支援型というプロジェクトではなくて、現地に住み込みながら地域の人と一緒に働くというのをスタンスとして大切にしています。単純にボランティアって楽しいんだっていうのをすごく感じやすいというふうに思っています。

私は初めてのワークキャンプが単純に楽しかった、そこで出会った人との出会いがすごく素敵だったっていう本当にシンプルな理由で心を動かされて今ここにいるのかなというふうに思ってます。

いろんな選択肢や情報があったと思うんですけど、留学とかインターンとかじゃなくて、ワークキャンプを選択するという理由ってあったりしますか?

田名部)その地域の人、その国の人と同じ生活スタイルを経験できるっていうのが、やっぱり旅行ではできないので、ワークキャンプならではの魅力かなと思います。

―― さっき検索でワークキャンプが出てきて行ったってありましたが、旅行だと、向こうでのんびり過ごすとか、自分の好きなように過ごすっていう魅力がある気もするんだけど、ワークキャンプって現地で割と働かされますよね。働かなきゃいけないんだ、というのがマイナスにはならなかったの?

今野)私も小さい頃から、旅行は国内と国外とか連れて行ってもらったりしてましたが、例えばハワイに行ってビーチに寝そべってという旅行もすごく楽しいんですけど、帰ってきた時に何が残るかっていうと思い出、写真、お土産とかですよね。私は小さい頃からなんかもうちょっと欲しいなって思って。だからといってボランティアがしたいって思ったことは特にはなかったんですけど、先ほどのフィンランドのワークキャンプはもともとヨーロッパの国、特に北欧の社会福祉にすごく興味があって、そのプログラムを見つけて行ってみました。

社会のあり方、日本との違いはもちろん、難民の方の受け入れや、社会制度の背景、払ってる税金とかで移民・難民の人とかの生活を支えてるんだっていうことをその滞在を通して知れたので、そこは絶対に旅行をして観光だけをしていたらわからなかっただろうなって。

あと、ヨーロッパは英語がすごく通じるところが多いんですけど、私が行ったところは結構田舎っていうこともあって、通じない方も多かったんです。そうすると、コミュニケーションが取りたくても取れないっていうもどかしさがあったのですが、帰ってきてから自分でその土地のことをものすごく本を読んで調べるっていうことがあって、1カ月半で15冊ぐらい本を読みました。知りたい知りたいという意欲がもうわき起こって、これはワークキャンプならではだな、と実感しましたね。

片柳)何か学びたい、というきっかけになるんですね。

今野)そうですね。それまではテレビの世界だったものが自分と近いものに感じられたり、リアルな体験としてそれを学ぶ経験がすごくあるので、好奇心をかき立てるのかなというふうに思いますね。

田名部)私もアフリカに行く前までは、"アフリカ人"って思ってたけど、"アフリカ人"というくくりが"ケニア人"になって、"ケニア人"が"エパンガ小学校の子"っていうふうになって、その子どものお家に行ったらその個々の繋がりになって、どんどん濃いつながりになって、その地域を知ることにもなりました。ワークキャンプならではだと思います。

浅井)今こうやって素敵なことばかり言ってますけど、ワークキャンプって世界各地からいろんなバックグラウンドを持った人が集まるので、中にはトラブルがあったりとか、メンバー同士でケンカしちゃったりとかっていうのも、もちろん起こり得る活動です。だけど、ワークキャンプはツアーではないので、ひとりひとりがワークキャンプを作る一員なんですね。なので、何かトラブルがあったらみんなで話し合いをして、解決に向けてみんなで一丸となって、次のステップを踏むことができるというのもワークキャンプの一ひとつの魅力だなというふうに感じています。

■女性が多い? ワークキャンプの参加者たち

―― あと、前半ではワークキャンプに参加する人は圧倒的に女性が多いっていうこと言ってたんですね。皆さんは何でだと思いますか?

浅井)確かに、ワークキャンプは7割くらいが女性なんですね。日本だけじゃなくて世界各地から来るボランティアも同じです。何か思い当たる節はありますか?

片柳)海外の参加者とも何で来たの?みたいな話にはなるんですか?

浅井)だいたい初日か2日目くらいにオリエンテーションがあって、その時に自己紹介を兼ねてどうしてこのワークキャンプを選んだの?とか、どういう気持ちでここにやってきたのっていうこと共有する時間があったりするんですけど、みんなほんとにホリデーというか、たまたま休みがあって日本に来るからワークキャンプに来たみたいな感じの人もいれば、日本のこういうとこでボランティアしたかったっていうボランティアしたいという気持ちが強い人もいたりします。

確かに男性が少ないのはどうしてですかね・・・・・・

田名部)私がアフリカに行った時も、8名で行ったうちの6名は私と同じ19歳の女の子、2名が男性で、男女比は女性の方が圧倒的に多かったんです。何ででしょう(笑)。

浅井)例えば、リタイアされた高齢者の方々が自分たちでボランティアグループなど作って活動されてる方って日本でもたくさんいると思うんですけども、そういう時もやっぱり女性の方が圧倒的に多いなというふうには感じています。コミュニケーションの取り方といいますか、他の人とコミュニケーションとりながら、輪を築きながらやっていく力というか、好奇心みたいな部分はもしかしたら女性の方が大きいのかなと思ってるんですけど、それが本当の答えなのかちょっとわからないですね。

―― 3日たてばどんな環境でも順応できちゃうところとかですね。

さっき社会福祉の勉強とかっていましたけど、わりとそういう分野のことを勉強してるのは関係ないですか?

今野)私は大学自体がバイリンガル教育を推奨している背景はあるんですけど、私自身の専攻は公共政策・地方行政みたいなところで、英語、国際関係、国際協力とかを勉強している感じじゃないんです。漠然と海外に興味があったのもそうですし、英語とか語学を学びたいとか、海外に興味がある、他国の文化を勉強したいっていう人には女の人が多いような気はします。だからと言って、男の人がそういう人興味ないとかではなくて、エンジニアの勉強してるけど、休みのときは必ずワークキャンプに来る男の子もいて、そのモチベーションはもう、深いですね。何を考えて、どういう思いでワークキャンプに来たのかっていうのはいろいろだと思います。

―― うん。でも、一見ワークキャンプっていうと現地に滞在して、さっきの穴を掘ったりとか、結構肉体労働ですごい大変っていうような印象もあるんだけど、実際には現地の人たちや仲間とコミュニケーションとったり、文化を理解したりとか、すごくコミュニケーションを大切にした活動なんだと思うんですよね。そういったところが、ただ単に体を使うだけではない複合的な交流ができるんですね。

田名部)ワークキャンプは自炊があるので結構女性が活躍できる場も多いのかなとは思います。

浅井)あとは国際ワークキャンプということでいろんな国の人が参加をするので、英語も使うんですけど、英語力が高い人がコミュニケーションをたくさん取れているかといったらそういうわけでもなくて、英語力がなくても誰かと何かを共有しようという思いがあって、行動に移す人がすごくコミュニケーション能力高いなというふうに見てて思います。コミュニケーションをが好き、違う文化の人とコミュニケーションとってみたいっていう人がすごく向いてるのかなと思いますね。

―― 先ほど今野さんはフィンランドから帰ってきて本を15冊くらい読み始めたっていう話がありましたけど、田名部さんも日本に帰ってきてどうでしたか?

田名部)私は大学時代は英文科に所属していて、当時は海外に興味があったんですけれども、帰国して、自分が日本人であるということをすごく意識するようになりました。坂本龍馬は何した人なの?とか歌舞伎ってどういうもの?って聞かれる中で、日本人としてもっと日本のこと知らなきゃいけないなっていうふうに感じました。そして、日本に興味を持ってくれている外国人のために何かがしたいという思いで今は大学院で日本語教育の勉強をしています。なので、ワークキャンプが私の進路にいい影響を与えてくれました。

―― 本当に2週間ぐらいの滞在でも奥が深いというか、いろんな気づきや発見のきっかけになるんだなということがわかりました。

浅井さん、今野さん、田名部さん、ありがとうございました。

浅井、今野、田名部)ありがとうございました。

⇒ 日本国際ワークキャンプセンター(NICE)のホームページはこちら

【聞き手】嵯峨 生馬・片柳 那奈子

【テキストライター】張 筱さん

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