銀行システムを守るために、早期のデフレ脱却を

「2017年末の貸出金残高のうち金利0%台の融資は全体の62%に拡大」というのは衝撃的です。

まず、記事でも指摘されている通り、銀行の収益が大きく圧迫されます。仮に預金も貸出もほぼゼロ金利ということであれば、預金と貸出の金利差もほぼゼロということになります。つまり、銀行の主な収益源が消え去ってしまうわけです。

より深刻な問題は、将来、デフレ脱却に成功した場合に、銀行の収益がさらに悪化するリスクがあるという点です。つまり、デフレから脱却すれば物価も上昇し、それに伴って預金金利も上昇します。その時、現状の融資の一部は低金利のままで残りますので、その部分については銀行の利ざやはマイナスになってしまいます。

例えば、将来デフレ脱却に成功して、インフレ率が2%、預金金利が3%となった際に、貸出の一部が1.6%の長期固定金利となっていたりすると、銀行の利益はマイナス1.4%(1.6% - 3.0%)となってしまうのです。

そこで、仮に、銀行の利益を守るために預金金利をゼロ金利のまま据え置くと、今度は、インフレによって預金の価値が毎年2%ずつ目減りしていき、預金者、特に年金生活者の生活が大きく圧迫されることになります。

実際に、アメリカでは、1980年代から1990年代前半にかけて、インフレを退治するためにFRBが金利を大幅に引き上げた結果、住宅ローンの金利と預金金利が逆転してしまい、全米に3,000あった地方金融機関の実に1/3が破綻しました。(これはインフレ脱却の事例ですので、日本の状況にはそのまま当てはまりません。しかし、古今東西、物価や金利の急激な変化に対して、銀行システムは極めて脆弱です。)

このような事態を未然に防止するためには、銀行の貸出のほとんどがゼロ金利になってしまう前に、デフレから脱却する必要があります。そして、それは日銀だけの努力で実現するものでありません。

デフレから脱却するためには、金融政策に留まらず、規制の緩和や、新しい産業の創出について、幅広く検討し、実行していく必要があります。私自身も、フィンテック起業家の一人として、「働く世代のための資産運用サービス」という新しい産業を創出に貢献できればと思います。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26953920V10C18A2MM8000/

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