元カレのはなし

わたしは元カレが好きで好きで、それはもう気が狂っていた。

恥ずかしながら恋愛経験ほぼ無しで来た人生、恋人と堂々と呼べるパートナーが出来たのが初めてだったからだ。

彼はとある公務員をしている。日々任務に追われ、書類を山ほど作り、寝る時間すらまともに取れず、通常業務に加えイレギュラー業務もあり、いつ命を落とすかもわからない、公務員といえど漆黒企業もいいところだ。

そんな彼は付き合い出した当初はとても頑張ってくれていた。

短い時間でも電話をし、LINEも頑張って返信をし、勤務明けに会いに来てくれたりもしていた。

ただそれは最初の3ヶ月だ。

それ以降は電話もせず、LINEも返信がなく、勿論会えず、相手からわたしへの温度が下がっている事は明確だった。

ここで気付けばよかった。「彼は一人で生きていける」という事に。わたしという存在がただの足枷になってしまっているという事に。

しかしなぜだろう。盲目故にそれを認められない自分がいた。思えば毎日涙で枕を濡らし、Twitterにも「つらい」としか書いていなかったのだから、とっくに破綻していたのだ。

遂に彼は禁じ手を打つ。1ヶ月に及ぶ「未読」スルーだ。これはさすがに精神の辟易を隠し得ない状態になってしまった。

考えるのも辛いのに考えてしまう。連絡をしないと誓っているのに連絡してしまう。

そう、もう立派なメンヘラの出来上がりだ。

賢明な友人は「はやく目を覚ませ」と何度もわたしを諭してくれたが、わたしが目を覚ますにはそこから更に半年ほど要した。


彼には彼に合う女性がきっといる。

幸いにもわたし達の間には思い出という思い出もなく、引き摺る未練すら無いだろう。

彼には彼をしっかりと支える、寛大で堅実な女性に出会って幸せになってほしい。(もう出会っているかもしれない)


彼の幸せを祈って。



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