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ひと夏の人間ばなれ 流星編

 流れ星キャンプに参加してみたものの、果たしてこれで良かったのだろうか。古ぼけた校舎の窓から夜空を見上げると今宵も星は流れそうになかった。
 あの日仙人からまとまった金を受け取ることを拒むと、相手は鼻であしらうように
「では星にでも頼むがいい」と吐き捨てた。地を這う如く地道な努力が始まった。陽の高いうちは畑を耕した。夜は夜学に通った。

「小テストをやります」
小さな藁半紙が配られる。漢字の書き取りだと? 平仮名で「すいせい」とある。これはあの太陽系の内惑星でいいのだろうか? なら簡単だ。でも「すいせいのごとく」は、どんな字だっけ? 前後の文脈もなにも無い。もしや、選んだ字でこちらの学力を測るつもりか。思い出せ、出てこい! 鍬を振り下ろす勢いで強く念じた。するとドーンと地響きが立った。校舎が半分吹っ飛んでいた。
「合格です」
キャンプリーダーが黒く染まった顔と部分的に焦げた頭髪で現れた。
「仙人養成夏期講習参加を許可します」

410文字

 合格者は1000人いた。この中の誰の力が隕石を呼んだのか、そもそも『彗星』を書けた奴はいたのか、夏が終わるまでにわかる気がしなかったのだが。

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