「消しゴム顔」④ あるいは気になる花

「少し早いですが夏休みの宿題はやはり植物の観察日記でしょうか」
「今年は種まきできなかったからなあ」
学年主任をはじめみんな乗り気でない。奈々は書きかけた朝顔の文字に消しゴムをこすりつけた。朝の字が消えて「⬜️顔」の文字が残った。
噂が広まった。
「きいた？今年の夏休みの宿題⬜️顔の観察日記だってさ」
「⬜️って？」
「消しゴムじゃない？」
みんなさっそく花屋に走る
「消しゴム顔の種ください」
するといつもの店員とは違う奇妙な老婆が現れ「ちょうど入荷したところだよ」と答えた。植木鉢に土を入れその種をまき、如雨露で水をかけた。ザラザラの蕾からオレンジ色の薄紙のような花が開いた。もしかして栽培禁止の阿片かな？　失礼ねアタクシ漱石の小説にもなった虞美人草ですのよ。言うが早いが今度は人気海賊漫画の主役が食べたというゴムゴムの実のなる芽が出てきた。すごい。芥子ときて今度はゴム？　さあ仕上げのカオは？　
それは誰も知らないカオスの花だった。

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