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きたあかりのコロッケ

家族旅行に出かけました。
昔から、自分の親との家族旅行は苦痛でしかなくて、旅行の楽しみというものがよくわかっていませんでした。

ヨーロッパ、アメリカに行くことが多かった親との旅行。
出発の朝は起床アラームがなる15分前に父の大きな声で叩き起こされ、どれだけ荷造りを小さくしたかを比べられ、荷物が多いとけなされ少ないとほめられ、さらに改善点を課せられる。
現地では、ローカルのように振る舞うことを求められ、10年前と同じ決まったお店に行き、決して高級店に入ることは許されず、貧乏旅行の美徳を語られるのでした。

ベタな観光名所も行かなくはないけれど、だいたい訪れるのは美術館で、ひとりで作品を見ていると父がすすすっと寄ってきて個人的な作品の解説をしていくのだった。

だから自分で旅行や、美術鑑賞の経験について主導的に理解する余韻がなかったので深く思いを巡らせることは少なかったし、多少買い物はしたとしても、本当に豊かな時間の使い方はわからなかった。

食べたいものも食べれないし、行きたいところにも行けない。親の知り合いにあって、親が過去に訪問したところに、親のタイミングで行く。

つまるところ、いわゆる親の過去をめぐり、肯定する旅ばかりでした。

「これが最後の家族旅行だよ」
と親は言いつつも、20代半ばくらいまではちょくちょく私を海外に連れて行っていました。まあ成長した私を、親の知り合いに会わせることも目的のひとつではあり。

最近ようやく、結婚して自分の家庭ができて、家族旅行って楽しいもんなんだなあ、と実感しました。

小さい子がいるから無理をせず、お互いのペースになんとなく合わせ、行きたいところの優先順位を考慮しつつ、調整する。
コミュニケーションがきちんと成り立つ旅行、というのを人生で初めて経験して、目から鱗でした。

もちろん子供って、旅行のタイムラインを全く理解してないので、中日に家帰りたい、とか、旅行先の特産物食べない、とか言い出すじゃないですか。

今回ももれなく、ご飯がやだとごね始めて、チェックアウトしたホテルに帰りたいだの、うなぎがやだなど言いだしまして、結局デパートの地下でなんの変哲もないシャケおにぎりとコロッケを食べました。
でも食べさせている間、私は、こういうことしてもらったことがあるんだろうかと涙が出てきて、いやあったのかもしれないけど少なくとも記憶にはなくって、すごく気持ちがしんどかった。

私の親の口癖は、「私を子供扱いしなかった」。親の自慢で、平たく言うと親の都合に付き合わせてきたということなのですが、私は子供扱いされたかった時があった。ファンシーな文具も洋服も欲しかったし、みんなが遊ぶコンピューターゲームも欲しかったし、旅行中も子供らしいご飯を食べたかった。

今、私は自分の子供に、自分のものさしだけで判断することなく甘やかすことができてるのだろうか。夢中で、コロッケを食べる子供を見ながら考えたら無性に泣けてきたのでした。
子供が半分残したきたあかりのコロッケは甘くておいしかったです。

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May the force be with you.
ファッション、映画、ときどきファミリー。
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