いつもの風景の非日常『荒川アンダー・ザ・ブリッジ』
毎日同じ毎日の繰り返し。代り映えのしない日々に、ストレスが蓄積されていく。そんな時にリフレッシュする方法は「非日常」に触れる事です。旅行に行ったり、映画を見たりと色々な方法がありますが、手っ取り早いのはマンガの世界に入り込むこと。
「荒川アンダー・ザ・ブリッジ」は、そんな非日常の世界に入り込めるマンガです。
荒川アンダー・ザ・ブリッジのあらすじ
主人公である市ノ宮行(いちのみや こう)は、世界トップクラスの企業の一人息子。文武両道で何をしても一流の超エリートです。
市ノ宮の家訓である「人に借りを作るべからず」という教えを、忠実に守ってきました。
けれどある日、ひょんなことから荒川で溺れかけていた所を、ホームレスの少女「ニノ」に助けられました。
命の恩人である彼女に借りを返そうとする行は、「何が欲しいか」と聞きました。すると、返って来た答えは……。
「私に恋をさせてくれないか?」
荒川アンダー・ザ・ブリッジの魅力① 個性豊かな登場人物
ニノに恋をさせるため、行はニノの恋人となりました。「毎日会わないと顔を忘れてしまう」というニノのために荒川河川敷に暮らすことになります
けれどその河川敷ホームレス村の人々は、行が始終ツッコミをいれてしまうほど個性豊かな人物でした。
ニノ
まず、ヒロインであるニノは、ワンレングスの長い金髪がチャームポイントのクールな女の子。表情は一貫して無表情ですが、行が彼女に「借りを返す」という枠を超えて恋をするようになると、彼女も行に向けて笑顔を向けるようになります。
芯が強く、物理的にも強い彼女ですが、自分の事を「金星人」と名乗り、「地球のルールはよく解らない」といいます。
行はそんな彼女の言動を「電波さん」と言っていますが、人並み外れた身体能力を持っていたり、読者にしか解らないシーンでは水中で1時間以上も過ごしたりと、もしかしたら本当に金星人? と思える謎が多い人物です。
基本一話完結型ですが、彼女の謎を解明するのが根幹のストーリーとなっています。
村長
荒川で暮らす事になった行が最初に会った人物が、「村長」です。しかしこの村長の姿は、なんとカッパ。驚く行の目に見えたのは、背中のチャックでした。
着ぐるみでしょう? とツッコミを入れられますが、村長はあくまでカッパであると主張します。
河川敷で暮らすには、村長に名付けてもらう事が必須ですが、行がもらった名前は「リクルート」でした。以降、行は「リクルート」「リク」と呼ばれることになります。
この村長どうやらニノの謎を知っているようで、人知れずニノを守る行動を取ったり、たまに着ぐるみを脱いだ姿で暗躍したりします。彼の暗躍で、ストーリーが少しずつ進みます。
その他の人物
他にも、ニノに片思いする「星」や、河川敷の教会の「シスター」(男性)、白線の上から絶対に出ない「シロ」や、超能力を隠すために鉄仮面を被っている幼い兄弟など、個性的な人々が登場し、その度にリクがツッコミを入れるのがとても面白いです。
荒川アンダー・ザ・ブリッジの魅力② たまに切ない気持ちにさせるエピソード
基本は一話完結のギャグマンガですが、荒川アンダー・ザ・ブリッジでは、1人1人が誰かに恋をしています。
両想いの恋人同士だったり、片思いだったり、その恋愛模様は様々です。
ぶっ飛んだ言動を繰り返す登場人物ですが、みんな誰かを想う気持ちは真剣で、思わず共感してしまう事も多いでしょう。辛くて切ない気持ちを吐露するシーンは、思わずホロリと来てしまいます。
しかし、基本はギャグマンガなので、最後にキッチリとオチがついているので、切ない気持ちを読後まで引きずることはないでしょう。
荒川アンダー・ザ・ブリッジの魅力③ 巻末の美麗なカラーマンガ
荒川アンダー・ザ・ブリッジの単行本には、巻末にカラーのマンガがついています。本編のギャグとは打って変わった雰囲気で、モノローグと繊細ながらも大胆な筆遣いで、まるで小さな窓から広い世界を見ているような感覚になります。
本編で大笑いした後、最後にあるこの漫画を見ると、外に飛び出したくなるような、どこか遠くの世界に目を向けたくなり、いつもの近所の道もきっと違った視点が見えてくるでしょう。
変わり映えのない毎日を過ごすあなただからこそ、読んで欲しい
いつも変わらない毎日を送っていると、どこか表情が固く、感情が乏しくなってくる気がしませんか?
荒川アンダー・ザ・ブリッジを読んで見てください。笑って、ホロリとして、また笑って、最後に前を向いて歩きたくなるようなマンガです。
休日の朝、前日の寝る前に読むと「明日は外に出てみよう」と思えるはず
きっとあなたにとっての「荒川河川敷」が見つかるかもしれませんね
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