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【2021年決定版】ナチュボンとは?その意味は?語源は?調べてみました!

はじめに

 1回目の投稿は"ナチュボン"について取り上げます。
 私がナチュボン仕草をツイートするたびにフォロワーの方が増えるので、私にとって"ナチュボン"は避けては通れず、最初の投稿にうってつけのテーマなのだと思います。

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ナチュボンの定義・意味

 twitterの機関投資家クラスタではしばしば"ナチュボン"という言葉が使われます。

 さて、このナチュボンの定義や意味は何でしょうか。

 数々のツイートを紐解くと、"ナチュボン"は略称で、正確には"ナチュラル・ボーン・バイサイド(Natural Born Buyside)"※が正式な名称のようです。
 その意味は、twitterのみで使われているネットスラングであるためどの辞書にも載っていませんが、twitter上の文例から私が定義すると、「新卒で機関投資家の運用(フロント)職に就いた人」「新卒で機関投資家の運用職に就き、いかにも新卒で機関投資家の運用職に就いたような性格を持つ人」あたりでしょうか。

 初出がいつ、誰によるものなのかわかりませんが、ツイート検索で遡れる一番古いものはShenさんのこちらのツイートでした。(ただし、過去にもどこかで使われていたような書きぶりですね)

※"ナチュラルボーン"という、場合によっては差別的なニュアンスを含むことができる言葉ですので、私自身は最近使用を控えめにしています。ただし、ここでいう"ナチュボン"に差別的な意味合いは全くないと思われる点については強調しておきたいと思います。そもそも生まれながらにして運用会社の運用職に就いているなんてことはありえませんので。

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"ナチュボン"の言葉の陰

 ここまでは"ナチュボン"という言葉の意味や定義の基本的な確認でした。「新卒で機関投資家の運用職に就いた人」というのは非常にわかりやすいですね。
 一方で、「新卒で機関投資家の運用職に就き、いかにも新卒で機関投資家の運用職に就いたような性格を持つ人」とは? という疑問が沸いたのではないでしょうか。この部分についてもう少し深堀りをしていきます。

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蔑称としての"ナチュボン"とそれを生み出す構造的要因

 話は少し飛びます。
 新卒一括採用を行っている伝統的な日本企業(Japanese Traditional Company)においては、大学を卒業したばかりでビジネス感覚のない新卒1年目の新入社員に対して、時間をかけて丁寧にかつ厳しめの新入社員研修を行うところが少なくないかと思います。「学生と社会人は違う」「社会人としてのマインドを一から鍛える」――なんて表現も珍しくないことでしょう。
 「若い時の苦労は買ってでもしろ」ではありませんが、伝統的な日本企業においては、一般的な新卒1年目は、営業職への配属地方工場での実習など、"下の立場"で"大変な思いをする"ことが多いように見受けられます。

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 一方で、新卒で機関投資家(主に運用会社、信託銀行、銀行や生損保等)の株式や債券等の運用職に就く場合、すなわち"ナチュボン"としてキャリアを開始する場合、いかがでしょうか。
 "ナチュボン"は概して新入社員研修が短く、入社早いうちから運用職としての業務がスタートします。小規模な運用会社では入社1日目から早速アナリストとしての活動が始まる場合もあるようです。

 運用職の具体的な仕事内容はまた別の機会で触れたいと思いますが、この運用職=バイサイドの世界では、誰もが憧れかつ恐れるゴールドマン・サックス証券や野村證券など、いわゆるセルサイド(証券会社)の役員や部長クラスの方が、お客様であるバイサイドに対して営業活動を行います。それは社会人なりたて新卒1年目の新入社員に対してもです。新入社員研修を終えたばかりで名刺交換もおぼつかない配属後すぐのひよっこアナリストに、セルサイド(偉い人含む)の方が「これからよろしくお願いします」とぞろぞろとご挨拶にいらっしゃるところから始まり、新卒1年目の若者に対して日々驚くほど至れり尽くせりなご対応をしてくださいます。
 また、投資先の調査のために発行体に取材等を行う際には、証券会社や発行体に取材をしたい旨と連絡すると、トヨタやソニーを始めとした名だたる大企業の社長や副社長、CFO、IR担当役員、経営企画部長等がオフィスまで足を運んでくださり、"お客様"とまではいかないものの、新卒1年目の新入社員に対しても"株主様"としてご対応してくださいます。

 その様子は山崎元氏の記事にも一部書かれています。

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 つまり、ナチュボンは新卒1年目のときから有名企業の要職に就くような方から接待されるような環境で何年も過ごします。ほとんどの"ナチュボン"の方は「勘違いしてはいけない、謙虚であり続けよう」と意識的に考え、特段おかしなことは起こりません。
 しかしながら、極めてごく一部の"ナチュボン"の方には、接待慣れし、態度が悪くなる人、勘違いし始める人など、一般的な人とは少しズレていってしまう方が出てくるのです。

 スタンフォード大学の研究で「スタンフォード監獄実験」という有名な心理学実験があります。これは一般人を看守役と囚人役に分け、それぞれの役割を演じさせたところ、次第に看守役はより看守らしく、囚人役はより囚人らしく自主的に行動するようになったというものです。
 この話からも、少しズレていってしまう方が出てくるのも想像に難くないことではあります。(だからこそ、ほとんどの"ナチュボン"の方は意識的に謙虚であろうとします。)

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 このようなズレた悪い態度もう一つの意味の"ナチュボン"として蔑称されます。
 例を出すのもはばかられますが、発行体との面談で会社名を証券コード呼びする人面倒なことをセルサイドにやらせる人、悪い決算を出した発行体に対して感情的に怒る人…などが存在するそうです。どこまで事実かどこまで作り話かはわかりませんが、いずれもありえそうな話です。

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 ここで忘れずに触れておきたいのは、ナチュボンといえども勿論特に若いうちは社内の上司や先輩から指導を受けるため、必ずしも接待一辺倒で甘くてぬるい環境にいるというわけではありません。また、当然ながらアウトプットは厳しく求められます。
 しかしながら、運用の世界はチームプレイよりも個人プレイの文化であり、また過程ではなく結果が求められる世界ですので、アナリストやファンドマネージャーとしてのパフォーマンスが良ければ、何かを咎められる機会が世の中の一般的な職種より少ないように思います。これらのことも構造的に"ナチュボン"を"ナチュボン"たらしめている一因だと思います。

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ナチュボンの受容と普及

 このような蔑称される"ナチュボン"は前述の通り、"ナチュボン"の中でも極めて少数派ではあるのですが、どこの運用会社でも一定数いる、あるいはいてもおかしくなさそうで、「あるあるww」ネタであるからこそ、"ナチュボン"という愛称・蔑称が生まれ、twitterにおいて広く普及しているのでしょう。

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終わりに

 以上、ナチュボンの言葉の意味や語源、その構造的な発生の仕組みや言葉の受容・普及について書き連ねてみましたが、いかがでしたでしょうか。
 テーマとしてはとても軽いテーマを選んだつもりでしたが、思ったよりも文章が長くなってしまいました。

 次はもう少し真面目な話をライトに書きたいと思います。きっと。

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