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マークの大冒険 | 古代ローマ編 もうひとつのローマ史 Chapter:6


前回のあらすじ

マークは大ピラミッドのトトの隠し部屋で見つけたアムラシュリング・グラビティの力を使い、ラーと対峙する。トトの隠し部屋には厳重な暗号がかけられており、これを見事突破したマークにラーは興味を持つ。そして、ラーは「こちら側に来い」とマークに命じる。だが、マークは「誰かの犠牲の上に成り立つ夢なら、そんな悪夢は見たくない」とラーの申し出を断り、再び激しい戦いが始まろうとしていた。

▼前回のエピソード▼
マークの大冒険 古代ローマ編 | もうひとつのローマ史 Chapter:5


「何度も言わせるな。友の犠牲に成り立つ夢など、悪夢でしかない。ボクはあんたを消し、みんなを救う。それだけだ」

「そうか、なら願い通りアヌビスの元に送ろう」

ラーは腕を組みながらそう言い放った。

「送られるのは、あんたの方かもしれないぜ」

「へらず口を」

そう言うとラーは目にも見えぬ速さで移動し、マークの目の前に立っていた。ラーの拳がマークに直撃しそうになる。だが、マークはアムラシュリング・グラビティの力でラーを跳ね除ける。

「やるな、使いこなせてるではないか」

「ギリギリだった......あと少し遅れていたら本当にあの世行きだった」

「それで、貴様にひとつ聞いておきたいことがある。トトの隠し部屋に入ったということは、当然、世界の始まりも見たのだろう?どうだった?」

「とても恐ろしいものだった......」

「だろうな」

「でも、恐ろしさの中に不思議な神秘性があった」

「ほう、面白い感想だ。それを貴様らの言葉で悪という。悪は恐ろしいが、逃れようのない神秘性がある、そういうことだ。世界の始まりを見てどうだ?死にたくなっただろう」

「ああ、心底死にたくなった。これを知らないことが人間にとって最良の幸せだ」

「その通りだ、人は生まれながらにして悪にまみれ、罪を背負っている。だからその罰として命に限りがあり、その人生は悲しいほど短い。だが、我々からのひとつの哀れみとして、子孫を残すという形で別の生きる術を与えてやった。これが我々からの慈悲だったが、人間は何度も我々を裏切ったな。自分たちの生まれも素性も知らずにおこがましいものよ」

「爺さん、話が長いんだよ。さっさと消えてくれ」

「残念だが、消えるのは貴様だ」

次の瞬間、マークはラーとウェスタの総攻撃を食らう。指輪の魔力で重力のシールドをつくり、両者の連撃を何とか凌ぐ。

「クソ、ウェスタの距離が近すぎてラーにまともに攻撃ができない。この近さだと、指輪の力でウェスタまで巻き込んでしまう」

マークは襲いかかるウェスタの腹部に鞘入りの剣を思い切り飛ばした。ウェスタは衝撃で遠くまで引き離され、声も上げられずに地面に倒れ込んだ。

「すまない、ウェスタ。でも、今はこうするしか」

「誰も傷つけないのではなかったのか?先ほどまでそう豪語していたが」

「指輪の力に巻き込まないためだ、仕方なかった」

「仕方ない。その言葉は本当に便利だな。お前ら人間は、いつもそういって約束を破る。仕方ないと理由を付け、自らを肯定する。嘘をつくのはこの動物界でお前ら人間だけだ。他の動物は嘘はつかない。そして、人間は我々神にまでも嘘をつく。この悲しみが分かるか?だから皆、消えれば良い」

「残念ながら、消えるのはあんただ」

マークがそう言うと、彼の目の前が思い切り地割れを起こす。地割れは物凄い勢いでラーを目掛けて進む。そして、ラーを巻き込んだ後もその勢いを緩めずに突進する。地割れは、モーセが海を割った時のような光景になっていた。逆アーチ状に深くえぐれた地面がどこまでも続く。ラーがその衝撃で体勢を崩すと、マークは思い切り近づき、鞘入りの剣でラーの胸に光るファイアンスのウジャトを目掛けて貫いた。ウジャトは粉々に砕け散り、宙に消えた。

「これで終わりだラー。あんたは消える」

「どうしてワシが貴様に消されるのだ」

ラーは立ち上がると、マークにそう言った。

「バカな、ウジャトを壊しても消えない......!?」

「この飾りがどうかしたか?」

そう言うと、ラーは壊れたウジャトの首飾りのチェーンを引きちぎり、投げ捨てた。

「おかしい、確かに降神媒体は破壊したはず。どういうことだ?直接降神?まさか、ウェスタはわざと飾りのウジャトを出しただけ?間接降神の振りだったのか!?いや、違う......!!直接降神ですらない。ラーがただそこにいるだけなんだ。契約も何もしていない。ラーがそこにいる。それだけだ。降神を介する発想は、ボクの先入観に過ぎなかった。目の前で掲げられたウジャトが降神媒体に見えた。さすがはウェスタ、全部芝居だったのか......。ボクが間接降神と勘違いするように芝居を打った」

「マーク、駄目だ!足元を見ろ!!」

マークの背後からホルスの叫び声が聞こえる。

「えっ!?」

マークがホルスの声に驚き足元を見ると、巨大な拘束陣の文様が浮かび上がっていた。

「クソ、身体が動かない!」

マークが気付いた頃には時既に遅し。彼は拘束陣の罠にはまっていた。

「詰んだな、マーク。ウェスタの拘束陣に気付かぬとは。飾りのウジャトを壊して油断し切ったのか?つめが甘過ぎる」

「あなたの負けよ。やっぱり優しさが命取りになったわね」

マークの首元には両側からラーとウェスタの刃物が突きつけられていた。

「そんな......勝てるわけがない。ボクはとんでもない奴を相手に戦っていた」


To Be Continued...


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桜の下のマークとウェスタ


Shelk 詩瑠久🦋

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