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秋雨の予感 「後悔」

10月。ようやく暑さが抜け、涼しくなってきた季節。今はちょうど体育の授業中だが、運動をするにはちょうど良い時期だ。何もない田舎のグラウンドには、やたらと生徒の声だけが響いている。合唱の練習なのか、音楽室の方からはかすかな歌声が聞こえてくる。今日も平和で、そして空が抜けるように青い。真っ青なキャンパスを背景に飛行機雲がすーっと抜けていった。

「ねえ、この街ってさ、ぐるーんと一周、山に囲まれてるじゃん。それがなんかさ、私には壁のように思えるんだよね。閉じ込められるっていうか、なんていうか」
「確かに言われてみれば。けど、そんなこと、考えたこともなかったな」
「私は絶対、この街を出てやるんだ。それで東京に行く!」
「いいんじゃない?」
「なにその上から目線なかーんじ!」
「いや、私は実家がもともと東京だからさ。小さい頃に喘息持ちだったから、空気が良いここに連れて来られたってわけ」
「出たー!さりげなく自慢!良いよね、令嬢は!やっぱり格が違うね〜」
「ん〜なんかちょっと違うきもするけど。けど、私も卒業したら学校は東京にするつもりだよ」
「へ〜もう具体的に決めてるの?」
「なんとなくね。三年の夏の大会まで部活はやるつもりだから、なんとなく入れるまあまあなところって感じだけど」
「じゃ、東京でもよろしく!」
「お互いまだ東京に行けるかわからないけどね」
「行くと決めたら行く!そして、絶対素敵な彼氏をつくる!この学校、ダサいのしかいないからさ!」
「いや、そんなことはないんじゃない?」
「そんなことある!」
「じゃあ、そういう詩瑠久はいないの?」
「いないのって何が?」
「そんなの男に決まってるんじゃん!」
「いないよ」
「ほんとう?怪しいんだよなー。そういう子に限って抜けがけするからな〜けど、確かに男の気配が全くしない」
「ご想像にお任せします」
「そこらへんを詳しく聞くために尋問が必要だな〜。ねえ、この後ウチら遊びに行こうって話になってるんだけど、詩瑠久も来なよ」
「ごめん、今日は無理」
「えー!なんで〜!!」
「大会、近いんだよ」
「でた〜文武両道!」
「文の方はだいぶ怪しげだけどね」
「弓道と私たちで、弓道を取るってわけか!」
「まあ、そういこと」
「即答!けど、次は絶対、だよっ」
「大会が終わったら落ち着くから、そしたら必ず」
「約束ね。あ!!」
「何っ?急に」
「詩瑠久は弓矢で誰かの愛のキューピッドをしてるってことか!私の支援もぜひお願い!」
「それ上手いこと言ったつもり?」
「キューピット詩瑠久。百発百中の腕前」
「射抜くのはハートじゃなくて、的だけで十分だよ」

彼女はふざけて言っていたようだが、思い当たる節があるような気もして内心ドキリとしてた。それともこの子、実はわざと言っているのか。愛のキューピッドの真似事のようなことはしたことがある。けれど、そのせいで傷ついてしまった人がいたことを今でも後悔している。私の勘違いで彼はひどく傷ついた。まさか自分に好意が寄せられているとは思いもしなかったから。

青春の痛みは、きっと誰にでもある。けれど、この話の続きはまた気が向いた時にでもすることにしよう。

Maybe, to be continue...

Shelk 詩瑠久

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