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マークの大冒険 フランス革命編 | もうひとつのフランス史 自由を求めて

前回までのあらすじ
ヴェルサイユ宮殿の庭園地下で天空神ホルスを閉じ込めた器ウジャトを取り戻したマーク。彼は奪われた黄金の果実を取り戻すべく、ホルスの協力を得て革命家ロベスピエールと対峙する。だが、果実を手にしたロベスピエールはホルスを見ても動じず、その様子にマークたちは不穏な空気を感じていた。



1793年、パリ___。



マークとホルスは、ロベスピエールの軍勢に突進していく。だが、マークの目にはロベスピエールが左手に果実を握っているのが映った。

「やはり果実を......!」

マークは果実を目にして焦りを見せた。そして、ロベスピエールが握る果実からは、稲妻が勢い良く放たれた。稲妻は彼の味方までも巻き込んで、周囲のものを薙ぎ倒していく。

「狂ってやがる、味方まで!?さすがはロベスピエール、味方の命など何とも思わぬというか!」

マークはロベスピエールの行動を見て、にわかに驚いた。ロベスピエールを取り巻いていた彼の部下と支持者たちが何名もバタバタと倒れていく。何とか稲妻を交わしたマークとホルスだが、ロベスピエールの後ろで待機していた新たな兵士たちがマスケットの銃口をこちら側に向けている。そして、その銃口から無数の弾丸が発射された。マークはアムラシュリングの力で複数の盾を展開するが、弾丸は盾をいとも簡単に貫通する。

マスケット
16〜19世紀に使用された銃。初期の銃ゆえ発射までに時間がかかり、1分間に2発程度しか撃てないため、扱いはかなり難しい。至近距離での戦闘では不向きで、刃物の方が素早く軍配が上がる。この難点を克服するため、先端に刃物を取り付けた銃剣が開発された。マスケットという言葉自体が「銃」という意味を持つため、一般でよく使われる「マスケット銃」という言葉は正確には不適切である。


「ひえぇ、いにしえの武具では歯が立たない。もう、そういう時代じゃないってことか。クソう、飛び道具には敵わん!ホルス頼む、守ってくれ!!」

マークがそう言うと、ホルスが壁となった。庇うようにマークの前に立ったホルスは、両腕を交差して守りの姿勢を取る。マスケットから放たれた弾丸をホルスの黄金の肉体が弾き返す。

「まずい、マーク。短期決戦で決めないと確実にお前がやられるぞ!!」

「分かってる!」

そして次の瞬間、マスケットの弾丸の嵐から息もつかぬ間で巨大な破裂音が炸裂した。

「クソッ、何しやがった!」

ホルスが悲鳴を上げるように叫んだ。貫通はしなかったものの、ホルスの胸が大きく窪んで痛々しく歪んでいた。

「大砲だ......」

マークは大砲の巨大な銃口がこちらに向けられていることに気付いた。

「舐めやがって、小細工を!クソ、エジプトから離れ過ぎている。神域内なら。ここがメンフィスなら、こうはならん。クソが......!!」

ホルスは、苛立ちを露わにした。

メンフィス
古代エジプトの神々の総本山。古い歴史を持つ都市で、エジプト宗教のセンターにあたる。


(近代戦争では、さすがのホルス神もキツイということか?世界から神々が消えていったのは、人間の近代化と武器の発展の影響なのかもしれない。神々は人間によって滅ぼされていった......?)

マークは戦いながら、そんなことを自問していた。

「マーク、さすがにあれはやばい。俺の身体でも、お前を守り切れない。アムラシュリング・グラウィタスであれが来た瞬間、重力を反転させるんだ!お前に貸したその指輪は、ただの飾りじゃねえぞ」

アムラシュリング・グラウィタス
グラウィタスはラテン語で重力の意。3本目のアムラシュリングで、重力を操るその強力な力から「王たる指輪」と呼ばれている。


「そうか、そうすれば大砲も防げる。暴発も狙えるかもしれない。さすがはホルス」

「宝の持ち腐れじゃ困るぜ」

「うん、やってみる」

マークは、大砲の破裂音が響くと同時にアムラシュリングに念じた。だが、隣には肩が半分欠けたホルスが立っていた。

「何してる?あれを弾き返せと言っただろう!」

ホルスは強がっているが、負傷でその声は先ほどより弱々しいものになっていた。

「違う!反転させた重力がさらに反転させられて無力化されている。これも果実の力なのか!?」

焦るマークたちを見て、ロベスピエールは不敵な笑みを浮かべていた。

「嘘だろ!?それに、さっき電撃で倒れた死体たちが動いているぞ!これも果実の力なのか?」

「禁じられた術、屍を操るネクロキネシスか。俺ら神でさえ扱える者は限られるが、普通はあんな卑劣な手は使わない」

マークは目の前の光景に愕然とした。先ほど果実の電撃の巻き添えになって倒れた兵士たちの遺骸がマークたちを目掛けて勢い良く突進して来る。その動き方は人間の制御を完全に超えたもので、まさに人形だった。遺骸の猛突進を何とか交わすマークとホルスだが、次の遺骸の列が彼らを襲おうとしていた。

「気味が悪い......」

マークは、遺骸の突進を前に完全に怯んでいた。

「奴は完全に果実を使いこなしてる。使い方を研究し尽くしているようだ。マーク、何か策はあるのか?」

「......」

マークは、驚きの光景を前に完全に沈黙していた。

「俺はもう保って僅かな時間だ。ここは一旦引こう。俺がハヤブサになってお前を逃す」

「でも......!」

「いいから行くぞ!!」

ホルスは黄金のハヤブサに姿を変えると、両脚でマークを掴んで勢い良く飛翔した。ハヤブサの甲高い鳴き声が周囲に響く。そして、そのスピードは凄まじく、銃弾の追撃も許さなかった。

「臆病者め、逃げるとは!腰抜けの王党派が!!最期くらい潔く首を捧げれば良いものを。だが、無様に逃げる奴らこそ、堕落した王党派に相応しいか。お前ら、必ず奴らを見つけて処刑しろ!」

王党派
その名の通り、国家に王を戴く王政支持者たちのグループを指す。ひとくちに王党派と言っても、過激派と穏健派などの派閥が存在する。マークは生前のルイ16世と親交があったことから、ロベスピエールら山岳派から王党派の一味と思われている。


ロベスピエールは、大空に消え去っていくマークとホルスに罵声を浴びせながら、不気味な笑顔を浮かべていた。



To Be Continued...



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フランス軍の装いをするマーク



Shelk🦋

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