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【本】ストーリーとしての競争戦略 楠木建

さて表題の本は、経営戦略を考える際の視点を授ける本、と言えるかなと思います。戦略は、面白いストーリーである必要がある、というのが話の軸。まずこのタイトルが良いですよね。

少し話が脱線しますが、私の仕事は、商品開発を軸にしたマーケティングで、具体的には市場を調べる⇄商品を企画する→売りかたを考える→買ってくれたお客様とコミュニケーションをする、という一連の事柄が発生するのですが、マーケティングの現場でよくあることって、この⇄、→ のところで、ストーリーの繋がりが途切れちゃうことだと感じます。物理的に担当者が変わったり、関係者が増えたりとかで、実務的事項の複雑さが増す側面もあります。例えば、
『商品の企画は良かったけど、売り場を作れなかった』とか『売上初速はよかったけど、お客様のアフターフォローがいまいちだった』とか。
ただ、本質的な課題はそういった実務的側面よりも、経営戦略上のストーリーの秀逸さにかかっているというのが主論。 

たしかに良い売り物、良いサービスは、このすべての一連の流れの中で、⇄、→ のところも文脈がスラスラと繋がるようなストーリーや世界観がある
んですよね。というのも、お客さんって、買う(もしくは体験する)ためにお金を払ってくれる道筋までに、いとも簡単にドロップしてしまう。一度買って、また買うかどうかのポイントでも、リピートするに至らないことも多い。そのドロップポイントは大体この狭間にあるように思います。ストーリーが途切れちゃうと、興味も失ってしまう。むしろ忘れちゃう。

オンラインでの買い物が当たり前になった今はより、それを実感しやすい実務家も多い気がしますが、「良いビジネスは、ストーリーが秀逸だ」と2010年から言っている楠木先生(一橋大学の教授です)、すごい。

スタバは、コーヒーを売っているのではなく、サードプレイスとしての空間、ムード、時間などの情緒的価値までまとめて売っている。これは誰もが実感する一例ですよね。
(ちなみに、本書が発売された2010年前後はそうだったと思いますが、今スタバはまた戦略を変えていると個人的には思います。店舗拡大し顧客層がより大衆化した流れで、売り物や売り方も変化しているのかなと。)

話を戻すと、そういう興味を惹かれる具体例を用いた、スイスイ読めるエピソードばかり。「ヒット商品の作り方」とかのいわゆるマーケティング本を読むよりも、マーケティングや経営の本質に触れる読書になるはず。

ものづくりや経営に関わることは、秀逸な物語を読むように、引き込まれる面白さがあると、心から思う。
マーケティングや経営に関わる方、これからそういった仕事に就きたい方。
分厚いけれど、まだならばぜひご一読を。

『ストーリーとしての競争戦略}
楠木建 2014年

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