オノユカ

ものづくり系マーケティング15年 40代/女性管理職/ワーキングマザー 「得意なこ…

オノユカ

ものづくり系マーケティング15年 40代/女性管理職/ワーキングマザー 「得意なことを力を抜いて」仕事と暮らしのアイデアストック。 引き出しを増やす読書レビュー/マーケティングの実例/ライフハックとしての簡単セルフケアごはんのレシピなどを呟いていきます。

最近の記事

【本】たすかる料理 桉田優子

まじで私の人生を変えた本はこれだ。人生というのはパッと切り替わるんじゃなくって、生活の積み重ね、毎日の折り重なり、日々の営み。それらが変えてゆく。著者の桉田優子さんは、台所で自分だけの神話をつむぐ。どうしてそのオリジナルな神話に行き着いたのか、その背景と具体的なレシピを共有してくれるから説得力がある。 そして台所の神話というのは何か特別な経歴や経験だとか、料理研究家だとかでなくても、今ここから自分の手ひとつで奏ではじめることができるのだった。その尊さったら。 それくらい台所

    • 【本】プリズム ソン・ウォンピョン

      今年、子を生んだ。生活は一変して、仕事ばかりしていた時期のこと、その時の感覚を思い出せないほど。まして、恋愛していた時のことは遠い宇宙、むしろ前世のこと?我が身に起こったこととはにわかに信じがたいという有り様。 そして産後のホルモンバランス崩壊も手伝って、過去の恋愛がすべて無駄だった、つまり私の人生って無駄しかなかった… とい暗黒の底に気づいたらいた。井戸の底ですよ(村上春樹)。 井戸の底から這い上がる時の最も良い方法のうちのひとつ、それは読書です。心が弱っている時には無意

      • 【本】ストーリーとしての競争戦略 楠木建

        さて表題の本は、経営戦略を考える際の視点を授ける本、と言えるかなと思います。戦略は、面白いストーリーである必要がある、というのが話の軸。まずこのタイトルが良いですよね。 少し話が脱線しますが、私の仕事は、商品開発を軸にしたマーケティングで、具体的には市場を調べる⇄商品を企画する→売りかたを考える→買ってくれたお客様とコミュニケーションをする、という一連の事柄が発生するのですが、マーケティングの現場でよくあることって、この⇄、→ のところで、ストーリーの繋がりが途切れちゃうこ

        • 【本】世界の終りとハードボイルドワンダーランド 村上春樹

          ミステリーでも、大どんでん返しのストーリーでもない。なのに、ラストにこれほど衝撃を受けた本が他にあるだろうか? いや、無いと思う。 主人公のリアルと意識のふたつの世界が並走し交互に描かれる構成で物語は進む。リアルの世界と言ってもそこは村上春樹の描く不思議な世界観なのだけど、そこで主人公は不条理な事柄に飲み込まれていく。その飲み込まれ方というか、巻き込まれ感が、架空の世界なのにまるで現代社会の理不尽なシステムと人との関係性のよう。現代の政治ってまさにそうじゃないですか?ハイ、

        【本】たすかる料理 桉田優子

          【本】吹上奇譚 吉本ばなな

          ファンタジーとリアリティのあいだを紡ぎ、その淡々とした日常にある光るものに焦点を当てて、わたしたちの視点や視野を優しく揺らす。吉本ばななさんの作品は、わたしのなかでそんな存在だけど、その真骨頂がこの吹上奇譚という長編だと思う。 今年、谷崎潤一郎賞を受賞した短編集「ミトンとふびん」もすごく好きだったけれど、やはり長編というのは、その物語の登場人物と会ったことがあるような、彼ら自身が自分の身近な存在として心に住んでしまうような作用があるもので、意識への残り方、自分のものの見方への

          【本】吹上奇譚 吉本ばなな

          【本】職業としての小説家 村上春樹

          さて、村上春樹のエッセイが電子化された。私が紙で読んだのは、「走ることについて語るときに僕の語ること」、「夢を見るために僕は毎朝目覚めるのです」、「職業としての小説家」のみっつ(ふたつめはインタビュー集だけど)。読書の半分はAmazonのAudibleでするようになり、音声化されている「職業としての小説家」を読む(というか聴く)ことに。 話が少しそれるけど、ビジネス本や自己啓発系の本ていうのは、良い本(=普遍的で示唆に富み具体的でかつ哲学のある内容、が私にとっての良い本)に

          【本】職業としての小説家 村上春樹

          ライオンズゲートとマヤ暦元旦、あたらしいはじまり

          私は美容業界という分野で働いているのだけど、この世界はスピッてる人が多い。占い師がお友達とか、しいたけさんに観てもらったとか、風の時代とか水瓶座の時代とかそういう話が日常茶飯事。とくにセラピストの方は、不思議な世界のことをよく知っている人が多くて、体をつきつめると科学とかだけで分からないゾーンに突入するのかなーと思ったりする。(誰でもってわけでなく一流のセラピストがそういう傾向にある私調べ。) そんなセラピストのうちのひとりに教わったのがライオンズゲートという言葉だった。夏

          ライオンズゲートとマヤ暦元旦、あたらしいはじまり

          ハンドドリップ考

          だいたい目分量、まいにち適当、なわたし。適度に適当にほぼまいにち淹れるコーヒーはほんとうにほんとうに、美味しい。 わたしは、商品とかそのプロモーションとかのいろんな企画をたてたり、そのコピー書いたりするようなまいにちを送っていて、何がいいたいかというと、コーヒーをハンドドリップするとかいう世界は真逆に存在するファンタジーだった。 そして今もなんだかすごく素敵ライフでハンドドリップコーヒーを淹れてるとかいうことでもなくって、わたしが感じているのはただただ行動、行為としてのハ

          ハンドドリップ考

          【本】一滴のわたしたちの、生きてる意味なんて

          ひとつとして同じでない。かといって特別であるなんてこともない。それが家族であって、そして人だってこと。そんなふうに要約してしまうと当たり前すぎてこぼれてしまう、それにまつわる大切なことを、個人的な物語を通して言葉という形に落として、わたしたちに見せてくれる。 これは、村上春樹『猫を棄てる』の読書感想文。 家族って、幸せなイメージの(しかもそれは限定的な)中に入っている必要があるような気にさせられて、でも、そんなことが可能なわけがないのである。無数の家族の単位、その中に無数

          【本】一滴のわたしたちの、生きてる意味なんて

          【コーヒーと雑感】松本、まるもの珈琲

          松本にまるもという老舗の喫茶店がある。 酸味が少なく、苦味の強い珈琲をだしてくれるお店。カフェオレとともに、モンブランを頼むのがお気に入り。松本に行くとよく歩くから、甘いものを補給してまた川の周りをぐるっと巡るのです。 松本は、20歳になる前に亡くなってしまった岡本くんの故郷。岡本くんは私の夫の友人で、私は直接面識はない。でも、夫と出会った頃からずっと岡本くんの話を聞いていたし、それから何度か松本にゆき、彼のお仏壇に挨拶をしてきた。 亡くなる前日、岡本くんは夫(その時は

          【コーヒーと雑感】松本、まるもの珈琲