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【掌編小説】美味しく頂戴いたしました

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【掌編小説】美味しく頂戴いたしました

【掌編小説】美味しく頂戴いたしました

ビルとビルの隙間にある、今どき珍しい屋外の喫煙所で、彼とは出会った。
花壇のレンガをベンチ代わりにして、長い脚を前に出すように座ってタバコを吸っていた。
ビルの合間から太陽の光が差し込むと、眩しそうに瞑ったまつげから光がこぼれた。美しい人だなと思った。
どうしてそんなに見つめてしまったかという言い訳をすると、その動機の半分は、自分の加熱式タバコに火がつかなかったからだ。

美味しそうに煙を吐く

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