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大企業も中小企業も急ぐべき!パワハラ防止法対応

こんにちは。

社会保険労務士法人シグナル 代表 有馬美帆(@sharoushisignal)です。

先日、「注目の法改正等ver2(2020.1.21現在)」にて、今後、様々な法改正があることをお伝えしました。

今日は、その中の5番目である「パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務化」についてお伝えします。

2020.3.16法改正 本文用

労働施策総合推進法という法律の改正により、職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)防止が義務付けられることになりました(本稿では労働施策総合推進法について、わかりやすさの観点から「パワハラ防止法」と表記することにしますね)。


人事労務担当者の方たちは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)問題対応や4月からの新入社員受け入れ等で多忙を極めてらっしゃるとは思いますが、大企業であれば、施行時期が2020年6月1日とまさに目前に迫っています。

一方で中小企業については約2年間は努力義務にとどまるのですが、大企業・中小企業の別を問わず、パワハラ防止は人材確保の面でも、訴訟リスク回避の面でも重要性を増すばかりですので、義務のレベルに関係なく、できるだけ早期に全企業がその対策を充実させるべきだと考えます。


それでは具体的に、法改正に向けてどう対応すればいいのお伝えします。

わかりやすく質問形式で進めていきますね。

①就業規則上にパワハラ防止(ハラスメント防止)規定が存在しますか? 

→Yes ②へ  
→No 
パワハラ防止規定は、法律で義務化されたから定めるという消極的な対応ではなく、昨今の状況を考えると、リスク対応上欠かせない存在になったといえますので、できるだけ早期に積極的な対応をお取りください。


もし、現状でパワハラ防止規定が存在していないということは、就業規則を改訂した時期が、相当前だと推測されます。ぜひこの機会に、全体の見直しも行ってみてください(本音を言えば、パワハラ防止規定が存在していないような就業規則は、社労士目線としては特急対応で改訂したいくらいの「ヤバい就業規則」なのです…。)。


②パワハラ防止規定はすべてのカテゴリの労働者を対象とするものになっていますか(あるいは、すべての労働者対象として作成するつもりですか)?

 →Yes ③へ     
→No
 
たとえば、正社員就業規則にはパワハラ防止規定があるのに、契約社員就業規則には規定がないなどのケースがあり得ます。

そのような状況を放置することは、非正規労働者や派遣労働者に関するパワハラ防止には無関心な会社と解釈されかねない危険すらありますので、至急改訂が必要になります。
対象を「全労働者」に変更する必要性をご理解されたと思いますので、③へ


③貴社は大企業ですか? 


貴社が、大企業・中小企業のどちらに該当するかについては、こちらの表をご覧ください。

あ

資料出所:都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000602881.pdf

→Yes ④へ   
→No 
中小企業の場合、前記の通りパワハラ防止法施行後約2年間は努力義務(2022年4月1日から義務化となるようです)にとどまっていますが、パワハラ防止措置を充実させることは中小企業にとっても前述のように利益になるとともにリスク回避にもなります。


パワハラ防止に向けた規定の整備や後述する相談窓口の設置等は、それ自体が会社から従業員への「ハラスメントを許さない」という強いメッセージとなります。

早期の対応によって「うちの会社は中小企業だからまだまだ」と思っていた管理職に「会社は本気なんだ!これは普段の言動に気をつけないといけない!」という意識変革をさせるトリガーとなるとともに、一般の従業員にも「会社は自分たちを守ってくれる!」という信頼が生まれ、エンゲージメントを高めることが期待できます。
このように、先手の対応により理念がより浸透しやすくなるのです。

弊所が様々な会社のサポートをさせていただく中で感じていることは、会社がゆるい姿勢でいると従業員もそれを察知し、そのゆるさに合わせて「これくらいなら大丈夫だろう」「どうせ会社は何もしないだろう」と、どんどん勝手に服務規律のラインをゆるめて行動してしまうケースが多くなるということです。
これに関しては、パワハラの事案に限った話ではなく、信賞必罰は組織マネジメントの基本なのでゆるがせにはできません。
会社として従業員に何を望み、何を禁じるのかを強く伝えていくことが重要です。

この弊所の経験に当てはめると、「ハラスメントを許さない」というメッセージを伝え、規定を整備し、相談窓口を設置することは大企業のみではなく、中小企業でも重要なことであるだけでなく、すぐにでも対応すべきことだと考えます。

対策を放置してパワハラ事案が発生すれば、会社にとって大切な人材を失うことにもなりかねませんし、対外的な信用を失ってしまう可能性もあります。

パワハラ防止策の整備は、ハラスメント事案の発生リスクを減らすだけでなく、万が一発生してしまった場合には、会社側は結果防止のための行動をしていたということで、責任を問われるリスクを減少させる方向に作用することになるでしょう。


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)問題もあって、なかなかパワハラ防止にまで取り組めないと思われるかもしれませんが、いつ終息するかわからない感染症問題への対応に比べたら、パワハラ防止問題はなすべき行動が明確になっています。

規定を設け、相談窓口を整備した上で、従業員に対して「パワハラはするな!何かあったら会社に相談しろ」と強いメッセージを発信し、定期的に研修等で周知啓発を図れば良いのです。


「お金の余裕は心の余裕」と言われますが、現在のように景気や会社経営が先行き悪化しそうな心配が生じると、職場の雰囲気も悪化しかねません。そのような心の余裕のないときにこそ、パワハラも生じやすくなります。だからこそ、早期の対応が必要だと付言しておきます。

これで、中小企業であっても、パワハラ防止法の早急な対応は重要だと理解されたと思いますので、④へ


④現行の規定とパワハラ防止法とを比較して、パワハラ防止法が求める雇用管理上必要な措置で不足しているものを就業規則へ取り込んだ上で、防止体制を整備しましょう。

以下が、パワハラ防止法が求める雇用管理上必要な措置です。

[パワハラ防止法が求める雇用管理上必要な措置]
1.パワハラ防止方針の明確化
2.パワハラ防止に向けた周知・啓発
3.苦情等の相談体制の整備(相談者に対して不利益取扱いをしないこと)
4.パワハラ被害者へのケア
5.再発防止策

これらを具体的にどのように就業規則に落とし込んでいくかについての疑問やお悩みがおありの場合には、ぜひ弊所までご相談いただきたいと思います。


例えば、措置の中の1や2に関しては、以下のような規定案が考えられます(もちろん、この規定のみではハラスメント関連の規定は足りません)。

第◯条 会社は、従業員に対しハラスメント対策研修を適宜実施する。
2 従業員は研修等の会社から提供される機会のみならず、自ら積極的にハラスメント問題に関する情報収集をし、認識を深め、ハラスメント防止に向けて積極的に行動しなければならない。

2項の部分(従業員は研修等の会社から提供される機会のみならず、自ら積極的にハラスメント問題に関する情報収集をし、認識を深め、ハラスメント防止に向けて積極的に行動しなければならない)を、敢えて記載しています。


理由は、昨今の世間でいうハラスメント定義や対応で求められるもののアップデートが速く、会社が実施するハラスメント対策研修だけでは間に合わないレベルだからです。
従業員一人ひとりが、世間でいうハラスメント定義や対応の情報を収集し、現場で対応してこそ、会社としては真のハラスメント防止が実施されていると言えるからです。


従業員一人ひとりが心の中に「ハラスメントを許さない」という意識をもってもらうことが、いちばん大切なことです。そのための重要な第一歩が、就業規則の整備なのです。



おまけ


この度、株式会社TECO Design 代表取締役 杉野愼さまから、貴重なアイデアを頂戴しました!その内容は、上記で書いたような就業規則の規定案を題材にし、「なぜこのような規定にしたのか」という、一語一句の説明をnoteで公開することです。「こう書いては足りない・良くない」という内容まで盛り込むつもりです。

就業規則関連本では、「良い規定」については書いてありますが、「こう書いては足りない・良くない」ということまでは書いていない本が多いので、人事労務担当者にとっては大いに学びがあるはずです。
「読みたい!」という読者の方は、ぜひこのnoteに「いいね」をください。「いいね」をくださると、俄然書く意欲が湧きます!



それでは、次のnoteでお会いしましょう。
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社会保険労務士法人シグナル問い合わせ先 info@sharoushisignal.com
※現在お問い合わせを多数頂いているため、ご要望に添えない場合がございますことを予めご了承ください。





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