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【平成の労務】#02 労働基準法における「昭和からの宿題」

こんにちは。社会保険労務士法人シグナル 代表有馬美帆です。

さて、前回は「昭和の宿題」の例として、労働基準法(労基法)の改正を挙げましたが、平成の間にその宿題を解き終えることはできたのでしょうか。

労基法における「昭和の宿題」のポイントは、「労働時間削減」と「有給休暇(有休)の取得促進」でした。

労基法は平成の間にも何度か改正されています。

まず、平成 5 年(1993 年)の改正を見てみましょう。

労働時間に関しては、「週 40 時間労働」が原則となり、1 年単位の変形労働時間制が導入され、時間外や休日労働の割増賃金率が改正されました。

有休に関しても、付与要件が緩和されています。
有休が付与されるまでに 1 年間の継続勤務が必要だったのですが、今と同じ 6 か月間になったのですね。

以前にこの note でも詳しく取り上げましたが、「リフレッシュする権利」が 1 年も手に入らないのではたしかに長すぎますよね~。

他には、裁量労働制の適用範囲が拡大するなどしています。

どれも、やはり今の「働き方改革」へとつながる改正ですよね。

次に、平成 10 年(1998 年)の改正です。

労働契約を締結する際の明示事項に、「労働時間に関する事項等」が追加されるとともに、36 協定による労働時間の延長の限度等の基準(限度基準告示)を労働大臣が定めることとされました。

当時はまだ「労働省」で「労働大臣」だったのですね!

有休では、取得日数が拡大して、2 年半を超える継続勤務期間について、1 年ごとに 2 日増加(最大20 日)となりました。

今の付与日数になったということです。
この改正でもやはり、「労働時間」と「有休」が改正の二本柱になってますね。20年も前から労働時間の限度基準を定め労働時間を削減しようとし、有休の取得日数増加に向けて手を打っていたのです。

それなのに事態が改善されなかったからこそ、「働き方改革」で労働時間については罰則付きの上限規制が、有休については使用者に年 5 日の時季指定義務が導入されるに至ったということがよくわかります。

「昭和の宿題」という言い方をしてきましたが、ここで大事なことをお伝えしなければなりません。

実はその宿題を解かなければならないのは、各企業の経営者や人事労務担当者の皆さんだということです。
国(政府)は宿題を出す方なんですよね。

この「昭和の宿題」が未だに解かれていないからこそ、平成での「働き方改革」につながったわけですが、企業がサボっていたとばかりは言えない事情もあります。

それは、「平成不況」です。

平成期は景気の大きな落ち込みが何度もありましたが、平成 10 年(1998 年)の労基法改正のころには景気の後退局面にありました。

この不況への対応に各企業は追われてしまい、労働時間削減や有給取得促進どころではない状態だったのです。

そして、その不況への対応策の中心となったのが、「非正規雇用者を増加させること」でした。

正規雇用者は賃金も高く不景気でも容易に解雇できないことから、「雇用の調整弁」として、有期契約労働者や派遣労働者の採用にシフトしていった流れは、皆様よくご承知のとおりです。

この流れは労基法の改正にも反映されます。

平成 15 年(2003 年)の改正は、有期労働契約や解雇(解雇権濫用法理の成文化)についてが主な内容となりました。

法改正はその時代の現状に合わせて行われるわけですが、不況によって労働者の立場が不安定になったことを受けての改正でした。

では、「労働時間」と「有休」はどうなったのか、といえば、平成 20 年(2008 年)に 1 か月 60 時間を超える時間外労働の、法定割増賃金率が 25%から 50%に引き上げられ(中小企業については適用が猶予)るとともに、時間単位で有休が取得できるようになりました。どちらも非常に意義のある改正です

が、この改正で「昭和の宿題」の解決が進んだかというと、そうはならなかったのです。

その理由は、平成 20 年(2008 年)には世界的な不況の原因となったリーマンショックの影響がわが国を襲い、さらに平成 23 年(2011 年)には東日本大震災という未曾有ともいえるレベルの悲劇が起きてしまったということにあります。

これらの影響からようやく立ち直りつつあった、平成 27 年(2015 年)に、現在の「働き方改革関連法」の原型ともいうべき労基法の改正案が国会に提出されましたが、成立することはありませんでした。

そしてようやく、昨年、「働き方改革関連法」の成立に至ったのです。

「働き方改革関連法」の内容をここで詳しく紹介する余裕はありませんが、「昭和の宿題」である「労働時間」と「有休」への解答を各企業にさらに迫るものとなっています。

そして、さらに「平成の宿題」が出されました。それは、「非正規雇用問題への対応」です。
われわれは「同一労働同一賃金」というゴールを目指して、どのように人事労務管理面での改革をするかを問われています。

そして、こちらの宿題には、何と先生(政府)からの「ヒント集」までついています。それが「同一労働同一賃金ガイドライン」です。

「昭和の宿題」も、「平成の宿題」どちらも難問揃いです。
ですが、答えを出さなければなりません。

勉強の悩みについては塾の先生や家庭教師の力を借りることがありますが、人事労務管理の悩みについては、社会保険労務士が大きな力になれるはずです。

ぜひ、令和という新たな時代に、皆様の宿題を解くお手伝いをさせて頂きたいと思っております。

それでは、 次回は、昭和→平成→令和とともに変化した労務を、表とともに見ていきたいと思います。
では、また次回!



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