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【働き方改革】産業医・産業保健機能の強化とは?

こんにちは。社会保険労務士法人シグナル 代表 有馬美帆です。

先日、オフレコ話をたくさん盛り込んで、セミナーで講演してきました!
株式会社iCARE様主催の産業医向けセミナーで、テーマは、「法改正をチャンスにする!IPO企業完全攻略法」です。


いよいよ4月から順次施行される働き方改革関連法のうち、特に「産業医・産業保健機能の強化」を中心にご説明させていただきました。

このテーマは、産業医の方々だけではなく、企業のHR担当者の方々にとっても対応必須な内容です。そこで、noteでもできる限りご紹介することにします。

今回の法改正ですが、HR担当者にとっては対応の手間が非常に多く、どうしようか頭を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。


なんと、それらの対応のほとんどを解決してくれるHRテクノロジーがあります!
それが、健康管理業務効率化クラウド「Carely(ケアリー)」です。
今回のセミナーは、産業医と企業、そしてHRテクノロジーの連携によって、働き方改革に対応しようということがテーマの1つでもありました。


皆様、Carelyがどんなものか気になりますか?
気になりますよね。今回の記事ではその詳細をご紹介できませんので、CarelyのウェブサイトのURLを載せておきます。ぜひ御覧ください! https://www.icare.jpn.com/services/carely/

<セミナースケジュール>
セミナー当日のスケジュールは、次のとおりです。

お陰様で大盛況のセミナーとなりましたが、noteでHR担当者の方々向けに重要と思われるポイントをまとめてお伝えすることにします。


なお、「4.創業~IPOにおける労務スケジュール」と「7.メンタルヘルス不調者発生と経営者の心情変化のプロセス」の2つについては、残念ながら外部に公開できないお約束なのです。大変残念ですがご了承ください(参加された産業医の先生も、公開禁止ですからね♡!)。


<働き方改革関連法における産業医・産業保健機能強化とは?>
それでは、経営者やHR担当者が知っておくべき、働き方改革関連法における産業医・産業保健機能強化について、当日の資料とともにご説明します。

産業医目線からの法改正
今回の法改正は、企業側だけではなく、産業医側にも新たに対応を要する点があるというのが特徴です。産業医の要対応事項をまとめたものが、以下の表となります。

産業医の要対応事項の中で興味深いのは、「健康管理実施に必要な情報を労働者から対面やアンケート等で収集」できると明確化されたことです。明確化されたことで、今までよりも攻めの健康管理が実施しやすくなったといえるでしょう。


企業目線からの法改正
企業が対応しなければならない点を、以下の2つの表にまとめました。

 
企業目線からの法改正対応については、3つの注目すべきポイントがあります。いずれも厚生労働省の通達で定められたものです。


第1は、産業医へ情報提供をする義務が課されましたが、その期限が「2週間以内」とされたことです。
法律には、「速やかに」と定められることもある中で、今回「2週間以内」という明確な期限が設けられました。
企業が2週間以内に産業医の先生に情報提供をしていなければ、法律に違反したことになるということです。


第2は、残業時間が80時間を超えている従業員がいなくても、産業医へ情報提供しなければいけないとされた点です。
「今月は残業時間が80時間を超えた従業員はいませんでした」と2週間以内に情報提供をしなくてはなりません。


第3は、企業から産業医へ連絡するときは、書面やメール等の記録として残るものが望ましいとされた点です。
情報提供義務を果たしている証拠ともなりますので、書面やメールでの連絡体制を整えてください。


<なぜ残業80時間以上が一つのボーダーラインなのか?>
そして、よく「残業80時間以上」と耳にしますよね。
なぜ残業80時間以上が、健康管理上のボーダーラインになっているのか、その理由をご存知でしょうか。
この答えが分かりやすく書かれたものは、意外と見つかりにくいので、この場でお伝えします。下の表をご覧ください。

なぜ、残業80時間以上がボーダーラインなのかというと、メンタルヘルス維持に必要だといわれている「睡眠時間6時間」がカギになります!


表を見て頂くと分かる通り、睡眠時間を毎日6時間確保しようとすると、1日のスケジュールはどうなるでしょうか。

所定労働時間が9:00~18:00の会社の場合、まず、起床時刻は、朝食や通勤時間を考えると7:00くらいでしょう。
起床時刻の7:00から逆算し、睡眠時間6時間を確保するには、深夜1:00までには就寝する必要があります。
そうなると、22:00には会社を退社しないと、通勤時間や夕食やお風呂の時間が確保できません。

これが、睡眠時間6時間を確保するための「ぎりぎり」のスケジュールです。


22:00まで働くということは、1日あたり4時間は残業していることになります。

1か月の平均所定労働日数を仮に20日として、残業4時間×20日の計算をすると、80時間という計算結果が導き出されます。
先ほど、「ぎりぎり」と書きましたが、これ以上残業すると、当然睡眠時間が6時間を下回ることになってしまいます。それではメンタルヘルス維持は困難になりますし、フィジカルな面でも悪影響が出てしまうでしょう。

いわゆる、「過労死ライン」の残業時間には、80時間超と100時間超というものがあります。
80時間でも大変なことなのですが、100時間超となれば、勤務日1日あたり1時間も睡眠時間を削っているということです。

睡眠は生命維持のために必要なものですから、それは文字通り「生命」を削ることになってしまいます。


これらの理由により、残業時間を80時間というボーダーライン以内に抑えることが、心身の健康を保つ上で重要になります。
この理由付けに筆者が気づいたときは、脳内に衝撃が走りました!「睡眠時間6時間」は本当に「ぎりぎり」だと実感できたのです(厚労省もこの「ぎりぎり」のラインの意味をもっとアピールした方が、国民に刺さると思うんだけどなー) 。
なぜか分かりやすくはアピールされていないので、ぜひ皆さんは暗記しておいてくださいね。


<「産業医・産業保健機能の強化」は企業側から仕掛けていく攻めの姿勢で>
「産業医・産業保健機能の強化」の言葉を、最近よく使われている言葉で言い換えると「健康経営の促進」が当てはまると思います。

産業医・産業保健機能の強化も健康経営も、法律対応のみを行うという守りの観点ではなく、従業員の健康を企業が予防し、ひいてはエンゲージメント向上にまでつなげるという攻めの観点で企業側から仕掛けていくべき項目です。


以上がセミナーでお話した内容の重要なポイントのご紹介でしたが、noteの読者の皆様には特別に、 当日のセミナーではお伝えしきれなかった点を記しておきます。


法律には、私が勝手に「宿題」 と呼んでいるものが記されています。
それは、「猶予措置」や「努力義務」というものです。

これらは制度の実施について「待ってあげるよ」「がんばって取り組んでみてください」という定め方をされています。

実は、働き方改革関連法にも「宿題」があります。


その「宿題」の1つが、「勤務間インターバル制度」です。

これは勤務終了後、一定時間以上の休息時間を設けることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保する制度です。
EUではすでに「24時間につき最低連続11時間の休息期間を付与」する指令が存在します。

たとえば、11時間のインターバルを制度として設けた場合、22時まで残業をした労働者は、翌日の9時までは出社できないことになります。
先ほどの「ぎりぎり」のラインとちょうど合いますね。 

この制度は、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」という聞き慣れない法律に努力義務として定められた「宿題」です。


学校の「宿題」は、先生から出されてすぐにやる必要はありませんよね。
ですが、サボったら後で大変なことになります。
それと同じで、法律の「宿題」も取り組まないでいると、努力義務が義務化されたり、猶予措置がなくなったりした時に大変なことになってしまいます。

「勤務間インターバル制度」も「努力義務だから…」と後回しにせず、自社に取り入れることができないか積極的に検討してみてください。


以前の記事でもお伝えしましたが、「働き方改革」は「休み方改革」でもあります。
睡眠時間の確保や有給休暇取得によるリフレッシュは、生産性向上のための「基盤」だという認識を持つ必要があります。
設備投資も企業経営の基盤を固める上で重要ですが、人材への投資も重要だという意識を持てるか否かは、もうすぐ終わりを迎える平成の次の時代では、これまで以上に問われることになるでしょう。


「働き方改革関連法」には「平成の宿題」 とでも呼ぶべきものがいくつもあります。
なかなか答えの出せない難問ばかりですが、一つひとつの「宿題」に真剣に向き合う意識を持つことが、「休み方改革」や健康経営につながります。


働き方改革関連法は、「健康経営を働き方改革の基本に据える」という、従来とは違った次元の意識を要求される法律の数々です。
ぜひとも経営者やHR担当者の方は、産業医の先生やCarelyと連携して意識改革を果たし、攻めの健康経営を実現してください。
筆者も、ご依頼いただきました企業の皆様を、攻めの姿勢でサポートさせていただきます。


社会保険労務士法人シグナル問い合わせ先 info@sharoushisignal.com
※現在お問い合わせを多数頂いているため、ご要望に添えない場合がございますことを予めご了承ください。

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