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【シェア街住民インタビュー】シェア街での学びをビジネスに活用 元メディア編集部長のジーコさん

今回は、シェア街メディア編集部の元部長で、現在は看護師のメンタルヘルスケアサービスの運営会社「Plusbase」(プラスベース)の共同創業者、Co-CEOのかたわら、オンライン経済メディア「NewsPicks」のコミュニティマネジャーを務める氏家(ジーコ)さんにお話をうかがいました。シェア街での経験が、どう今のビジネスに活きているかなど興味深いお話を聞けました。

物事は「運とご縁とタイミング」

現在の仕事や活動について教えてください。

現在はPlusbaseという会社の共同創業者でCo-CEOをしていまして、看護師さんのメンタルヘルスケアのサービスを作っています。
また、副業として、NewsPicksというサービスのコミュニティマネジャーや、それ以外のいろんなスタートアップ系カンファレンスでもコミュニティマネジャーをやっていて、その2軸で活動しています。

日々の過ごし方は。

時期によるのですが、基本、週2、3日くらいNewsPicksの活動をやりながら、それ以外の時間でPlusbaseの仕事をしています。
Plusbaseは今、まだ1期目となります。2021年に前職を辞めて、活動を本格スタートし、2022年1月に登記。3月に資金調達しました。
メンバーは全員業務委託で、アドバイザーを含めて15人ほど。みんなでウェブサービスの開発をしています。

NewsPicksでの具体的な活動は。

NewsPicksの新しい機能である「トピックス」という、著名人ブログのようなサービスの立ち上げに関わりながら、「オーナー」と呼ばれるブログの書き手の皆さんへのサポートや、コミュニティ活性化のための施策を打っているところです。

PlusbaseやNewsPicksで働くまで、どのような経緯があったのでしょうか。

前職で2年ほど過ごした頃、メンタル不調になってお休みをいただくタイミングがありました。
そのくらいの時期に、今のPlusbaseの共同創業者でもあるウィム・サクラという看護師の友人が起業することになりました。
私もメンタルのことがありましたし、「そのサポートをしたい。転職するよりは、その事業の立ち上げに携わりたい」と、当時の会社を辞めることにしました。
私は看護師でもないですし、メンタルヘルスの専門家でもありません。サクラは看護師であり、認定心理士としても活躍していて、彼女はちょうどビジネスに明るい人を探していたところでした。
なので、「医療×メンタルヘルス」の部分は彼女が担当し、彼女の思いを届ける仕事や、会社の運営、そうした諸々のサポートを私が担う、という形でやっています。

そうなんですね!その仕事と、NewsPicksのコミュニティマネジャーの仕事とは、だいぶ活動内容に違いがあるようにも感じますが、ジーコさんの中で繋がっている部分があるのでしょうか?

私は前職を辞める際、「コミュニティの仕事をしたい」と言って辞めているんです。
私は実は一人暮らしをしたことがなくて、ずっとシェアハウスや寮で暮らしていて、人とのつながり、利害関係のないコミュニティ、みたいなものを人生の様々な転換期で経験していて、ずっと「コミュニティづくりに関わりたい」と思っていました。
最初に入った会社は多角的に展開していたものの、その頃はコミュニティの仕事がなかったんです。
なので、辞めることを考え始めた当初は、起業ではなく、シェアハウスのコミュニティマネジャーへの転職も考えていました。
Plusbaseに参画した後も、コミュニティマネジャーの仕事への関心を引き続き持っていたところ、シェア街で知り合った方が渋谷であった異業種交流会イベントに誘ってくださり、たまたま隣の席にNewsPicksのコミュニティチームの方がいらして、事業会社でのことや、シェア街のことを話したんです。
すると、その方が「あ、うちでコミュニティ系のサービスを立ち上げるので、やりませんか?」と誘っていただいた、という次第です。
本当、運とご縁とタイミングだと思います。

そうだったんですね。元々、働く際にどのようなものを求めていたのですか?

私が最初の会社に入った決め手は、「社会課題の解決が事業の起点」という考え方を持っていた点に惹かれたことでした。
元々、私自身、幼少期からボランティア活動に参加することが多くて、社会貢献への関心が強かったのですが、一方で、NPO、NGOとしてやっていくよりはビジネスとしてやる方が近道のように感じたんです。
学生時代にいたシェアハウスは渋谷のど真ん中にあり、有名なスタートアップ企業を作られた方もいました。その当時、2013〜14年頃、ITの可能性やスタートアップの可能性に触れて、ITやビジネスの力で社会貢献をした方が、大きな価値が出せるのでは、と思い、「IT×社会貢献」軸で物事を考えるようになりました。
入社企業を考える際、前職の会社と、ゲームなども展開するメガベンチャーとで迷ったのですが、より「社会の問いの解決」を重視している方ならば、自分の求めていた経験ができるのでは、と可能性を感じて入りました。
そうして入った会社は、会社自体は好きだし、そこで働く人も好きだったのですが、より社会貢献になる道を、と思い、Plusbaseに参画することにしました。

現在は、看護師のメンタルヘルスやコミュニティマネジャーの活動をされています。今、解決できていないことで、こういうことを解決したい、というものはありますか。

まず第一には、医療者のメンタルヘルスの問題です。
医療業界全体的に解決しないといけないことは多いのですが、目下、医療者はすごく疲弊していて、「戦場と同じくらいのストレスで過ごしている」と指摘する論文もあるそうです。
コロナ禍で「医療崩壊」という話題を耳にすることもあるかと思いますが、過酷な環境下にあり、そうした医療者の労働環境を変えていかないと、どんどん医療者の数は減っていきます。
長期的に考えて、そのような状況で日本の医療制度が成り立たなくなるのは危ないことです。まずはその改善に向けてアプローチしていきたいと考えています。

一方、「コミュニティ」に関しては、私には「コミュニティを通して人の孤独を解決したい」という思いがあり、そこで自分が何か提供できれば、と思っています。
コミュニティは単に、「箱」と「人」を用意すればコミュニティか、というと、そうじゃない。
人がいても、運営の仕組みがないと機能しない。そこの知見がまだまだ足りていないように思います。
今の時代、人が組織に属さなくなり、より自由に所属先を選べるようになるなど、自由な環境が多くなれば多くなるほど、縛られない場所、すなわちコミュニティがどんどんできていくと考えたら、しっかり運営し得る人に需要があるのではないか、と思います。
「いかにコミュニティの力が最大限生かされる場所が作れるか」をテーマに活動していきたいと考えています。

シェア街は「心理的安全性」がめちゃくちゃある場所

話は変わり、シェア街はどのように活用していましたか?

PlusbaseやNewsPicksの活動が忙しくなり、今はシェア街のSlackもROM専の状態ですが、イベントに誘われたら(シェア街の中心である浅草橋のゲストハウス&バーの)Little Japanに行くなどしています。
今のシェア街との関わりで言うと、シェア街の元スタッフや住民の方にPlusbaseで働いていただいている、というのがありますね。

2021年の私の1年のテーマは「圧倒的イエスマンになる」だったんです。
誘いを断らず、誘われたら全部行く、と決めていました。シェア街関連のイベントも、誘われたら基本、全部行っていました。
シェア街関連でLittle Japanによく出入りしていると、ゲストハウスということもあってか、思いがけず深い話になるんです。シェア街自体にも「しごと」があり、頼み事が生じることがあるし、普通の飲み会とは違った深い会話もできる。
そういう深い関わりを大事にしていて、エンジニアのゲント君なんかはシェア街のイベントなどでちょこちょこ関わる中で、すごく信頼できるな、一緒に仕事がしたいな、という気持ちが膨らんで、彼のキャリアの話、私の話、とするようになる中で、「手伝ってよ」という話になり、徐々にPlusbaseの仕事も頼むようになった、という感じです。

元スタッフのだいちくんは、元々はお仕事を頼む関係性ではなかったのですが、キャリアや人生の話などをしているうちに一緒に働くことに。「だいちゃんの人生の踏み台としてうちを活かしてくれれば」と思っています。

シェア街の活動で一番楽しかった思い出などは。

色々ありますが、まずはメディア編集部。
私が入った当時は、元々やっていた方が離れるようなタイミングで、シェア街主宰の柚木理雄さんに「ジーコさんよろしく」と派遣された感じでした。

そこから最初、Nagataさんとあきねえさん、真央さんとで始めて、そこから徐々に人数が増えて、だいたい半年強やっていましたが、常に10人前後のメディア編集部員を維持しながら、いろんな住民ライターさんとお仕事をマッチングしたり、編集部としてSNS運用などの新しい取り組みもやってみたりしているうちに、メディア編集部のメンバーから「こういうことしたい、ああいうことしたい」と言ってもらえるようになりました。
嬉しかったですし、編集部の再立ち上げというか、今の形にする一助になれた、というのがすごく良かったなと思いますね。

あとは、シェア街の運営サイドにいたので、シェア街の理想とする形と現状とのギャップがある中、どこをどうしたらシェア街がより良くなるか、という議論を毎週していたのも勉強になりました。
理想と現実、民主主義、お金を回すことの難しさ、などを考えさせられ、いろんなことに思いをめぐらせるきっかけになったな、と思います。

他には、「ジーコのフィットネス道場」と「カルチャースクール」というオンラインきょてんを作りました。
フィットネス道場は、本当は他の住民が作ったもので、私の名前をつけられていじられた印象ですが、「健康になろう」と目指したきょてんでした。
スクールは、シェア街の住民やスタッフの人たちの中にはいろんなスキルを持つ人がいるので、「誰でも先生、生徒になれるのでは」と講座を開く活動をしていました。手話、ブロックチェーン、英語など、いろんな講座を毎月2、3個やる、という形でした。
でも、私はみんなの活動に入り込むことよりも、運営側として全体を見ながら、こういう仕組みがあると良いよね、ということに重きを置いていて、「住民として楽しむ」という活動は意外としていないかもしれないです。
どちらのきょてんも、私が忙しくなってから誰も引き継いでいない感じなので、誰か引き継いでください!
ぜひ、カルチャースクールのリバイバルをお願いしたいと思います(笑)。

ジーコさんが考える、シェア街の魅力を教えてください!

シェア街は圧倒的に、私の中では安心感があったな、と思います。
すごくゆるいし、誰でも受け入れる。心理的安全性があった。前職である程度疲弊していた時期に参加したので、自分のメンタルの回復のきっかけにもなりました。「おかえり」「ただいま」と言える関係性があり、すごくしょうもない話を夜中までできたし、何を発言しても誰も否定しない。誰も求めてこない。自分らしくいられる。すごく生き生きしていられる。
そういった意味で、仕事に疲弊していたり、ゆるいつながりがなくなりがちだったりする社会人の方には良い場所だな、と思いますね。

NewsPicksでのコミュニティマネジャーやシェア街の経験が今につながっていることは。

今、NewsPicksでは約60人のオーナーさんのケアをしています。
60人を塊として見て、仕組みとしてぶんぶん回すのも大事だとは思いますが、「参加している◯◯さんと自分」で信頼関係を持つ、というのがファーストステップだと思っています。

シェア街でも、住民さんがたくさんいましたが、どんなに人数が増えても親密性を大事にして、「一人一人を知りに行く」ということを意識していました。名前、人となりを一致させていく、ということがすごく大事だな、と思っていて、効率よくなくてもやっていました。
NewsPicksでは、4人の担当者で回す中で、私は60人全員にヒアリングしました。そこで関係性を築いて初めて、コミュニティにいる人たちが主役、この人たちがいて良かった、というコミュニティになるのでは、と思います。
NewsPicksというツールを活かして、豊かにするのが私の役目なのですが、求めているもの、不満に感じているものを丁寧に拾い上げて、打ち手を考えていく。本当に、シェア街の経験や学びが活きていると思いますね。
もちろん、60人、100人と数が膨らんでいくと、ある程度の効率性も大事ですけれどね。

効率を求める中でどのような工夫をしていますか。

効率化かどうかは分からないですが、「必ずしも自分がしなくても良いこと」はなるべく、誰でもできるものに分解して、人にお願いをする、ということを意識をしていますね。
「お願いするのは悪いかな」と考えて、人に何かを頼めない人、というのも多いとは思いますが、私はすぐ人に仕事をお願いするタイプです。意外と人って、頼まれる、頼られると嬉しいもの。そこは、自分の会社でも、NewsPicksでも、シェア街でも、自分の抱えている仕事を小さくして細かに人にお願いしています。それも、コミュニケーションの良いきっかけになるし、自分の手を離れると、別のことに時間を使えます。

あと、これも効率なのかは分かりませんが、コミュニケーションの場では、個人同士のDMもすごく大事だと思うものの、グループ全体にとって必要なこと、会社全体、組織全体が知って損がないことはなるべくオープンな場でやりとりするようにしています。
アットメンションで、みんなが見ている場所で話をすることで、心理的安全性の担保にもつながるし、みんなに見せることでみんなの意思疎通がしやすい。二度手間ではなく、その場で完結します。それは、柚木さんから教わったことでもありますね。

コミュニティをつくる中で、NewsPicksでもシェア街でもやっていきたいことをさらに詳しく聞いても良いですか?

コミュニティって、評価がつけづらい部分があると思います。
価値はすごくたくさんあって尊いものだと思いますが、それがなかなか理解されない。
コミュニティマネジャーという仕事に興味がある人は多いと思いますが、お給料はそれほど高くはない。ストレートに会社の業績につながるか、といえば、そうでもない。オンラインサロンというものもあるにはある一方、一般的にはなかなかコミュニティにお金を払うほどの価値が認識されていない現状はありますが、それを価値あるものにしたいと思います。

これはまだ、私の「勝ち筋」とまで言えるものではありませんが、やりたいなと思っていることが二つあります。
一つは、コミュニティを生かしたマーケティング。
コミュニティマーケティングという言葉もあるのですが、ネット系広告やマーケティング手法は現在、すごく飽和していて、Googleでどんなに広告を打っても購入されるかと言えば、すごく難しい。一方、Apple、Slackなどの外資系企業はファンの人たちのコミュニティを大事にしていて、俗に言う「Product Led Growth」(営業やマーケティング活動をプロダクト内に取り組むことで事業の成長を促していくモデル)をやっている。例えば、SlackやZoomは最初は少人数で使っているうちにその便利さが伝わって、どんどんその利用者のコミュニティが広がる中で、さらに便利に使おうと有料会員になる。そうやって、コミュニティの力で良いものが普及する、というマーケティング手法なのですが、その手法を活かすことでコミュニティの価値を高められないだろうか、と思っています。
もう一つはまだ勉強不足なのですが、Web3(分散化の思想やブロックチェーン技術を背景とした次世代のワールド・ワイド・ウェブ)やNFT(ブロックチェーン技術を活用した代替不可能なデジタルデータ)、DAO(分散型自立組織)といった新しい概念が面白いと思っています。
NFTアートは、人、コミュニティが価値を決める。ファンがいっぱいいて盛り上がれば価値が上がり、製作者も次のアートを生み出す意欲が湧く。そうすると、今後の社会の流れとして、Web3、DAO、NFTの進展具合によってコミュニティの需要が高まると思うので、そうした場でのコミュニティマネジメントにも興味があります。

住民のみなさんや、これから住民になりたいと思っている人にメッセージをお願いします。

シェア街という環境を活かすのは人それぞれ。
入ってみて、いろんなところに行き、いろんな人に出会ってみて、いろんなイベントに参加してみて、どんどんそこの環境を活かしてもらいたいな、と思いますね。つまりは「楽しみましょう」ということです。ぜひぜひ参加して、楽しんでみてください!


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