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外国人母子支援と医療通訳に関するトークイベントのご報告③

クラウドファンディングへのご支援、ありがとうごさいます。

今回は、8月27日に開催した在日外国人支援事業スペシャルイベント「日本での出産や子育てを支えたい~外国人母子の健康を守る現場の声を届けます~」の第3回目のご報告として、医療通訳者のお話をお届けします。報告の最後には、イベント時にいただいたご質問にも回答いたします。

第3回:医療通訳者として感じること、思うこと


イベントでは、通訳歴20年以上、シェアの医療通訳者としても10年近く結核やHIV等の通訳に携わり、ここ数年は母子保健分野の通訳でも活躍中の、中国語の通訳さんと、ベトナム語の通訳さんより、お話していただきました。

まず、お二人からは、医療通訳の特徴として、

「通訳者は、自分の意見を足さず、引かず、話していることをそのまま通訳 するのが基本ですが、例えば在留資格等に関する話になった際には、保健師さんたちも外国人ではないため、通訳しているだけではどうしても患者さんとの間で話がかみ合わなくなる時があり、その時は、あくまでも通訳者の意見としてですが、少し知っている知識を伝えたり、対象者にもう少し詳しく状況を聞いたりすることがあります。
HIV等では、一通り説明が終わった後に、患者さんが泣き出し、不安に思っていることを話してくれる時があるのですが、その時は気が済むまで話してもらうようにしています。医療通訳は、その場その場で、臨機応変に対応しなくてはいけないと感じています。」

と、その場で、スムーズにそして満足のいく話が行えるように、臨機応変な対応が求められるといったお話がありました。また、

「初めて発達の検査に関わる場面の通訳を行った時に、臨床心理士の説明するデリケートで抽象的な説明を理解し、正確に通訳することに時間がかかり、事前準備が十分できていなかったと感じたことがありました。今後は、通訳支援内容を把握できるよう、クライアントから必要な情報を積極的に求めていきたいと思っています。 
通訳者が適切な通訳を行うには、事前に十分な情報が得られ、あらかじめ現場で出てきそうな言葉を予習してから通訳に臨めることがとても重要だと感じています。通訳者は守秘義務を守ることを徹底するよう課せられており、通訳依頼者と通訳者がお互いを信頼して、事前に、通訳場面で必要な情報や対象者の背景等を共有しておけることは、とても大切だと感じています。」

と、通訳を行う際に、その場の状況を汲み、対象者と依頼者双方に寄り添い、適切な通訳を行っていくためには、事前の情報共有が大切であることについて話して下さいました。

次に、母子の通訳に関しては、

「母子の通訳は、必要な情報を伝えることもですが、お母さんたちの思いや疑問をしっかり聴いて、保健師さんたちに伝えていくことで、お母さんたちは抱えている不安が解消され、すっきりした様子になっていくので、そんな様子を見ると、役にたてて良かったなと感じます。」

「結核等の場合も母子の場合も、対象者に寄り添いながら励ましの気持ちで通訳を行っていますが、特に母子の場合は、お子さんは生まれたばかりで将来はこれからなので、両親が不安そうにされている場合は、通訳内容は変えずに、ポジティブな言葉は2回繰り返すなど、前向きに励ます感じで関わっています。そうすると、両親はお子さんに良い期待をいっぱい持っているので、表情が明るくなっていき、その感じは悪くないかなと思っています。」

といったお話がありました。また、母子の通訳に携わる中での思いとして、

「妊婦さん・お母さんは、生まれてくる子ども、生まれてきた子どもを大切に育てていきたいと思い真剣に質問し、助産師さん・保健師さんはそれに真摯に答えている、そんな母子保健の場面で通訳を担っていることに満足感を持ちつつ、日本の母子保健によって外国人のママとパパと赤ちゃんたちも幸せに過ごせることを祈っています。」

「同じ女性として、日本に住んでいる外国人のお母さんが、気持ちよく子育てできると、育てられた子も良い子になって、将来日本の社会に何らかの形で関わってくれればいいなと思っています。」

と、医療通訳者という立場から、外国人母子の幸せを願う、あたたかい思いを話して下さいました。

日本に暮らす外国人妊産婦さんとそのご家族が、必要な情報やサービスを得て、安心して、そして幸せに子育てを行っていけるように、医療通訳者の皆さんと一緒に、今後も活動を続けていきたいと思っています。

お話してくださった医療通訳者のお二人

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〇イベント時にいただいた質問へのご回答〇
イベント当日には時間が取れず、いただいた質問にお答えすることができませんでしたので、こちらにて回答させていただきます。似たようなご質問はまとめさせていただいたこと、回答させていただくご質問は、イベントに関係するものとし、すべての質問にはお答えでいないことをご了承ください。

Q3.日本国内に医療通訳者の方は何人ぐらいいらっしゃるのでしょうか。どの地域(都道府県)に何人くらいいらっしゃるのかもお聞きできればと思います。

医療通訳者に関しては、正式に国家資格として登録するような仕組みがなく、また一人の通訳者が多数の団体に登録している場合もあり、全国でどのくらいの方がいらっしゃるのかは当会では把握していないのが現状です。

Q4.昨年「医療通訳」(英語)の勉強をして資格を取得いたしました。今後、どのようにしたら医療通訳者としてサポートさせていただくことができますか。

当会での活動にご関心をお寄せいただき大変ありがとうございます。今後当会で医療通訳者の募集を行っていく際には、ホームページやうさぎクラブ(メーリングリスト)でご案内いたしますので、ご応募いただけますと幸いです。

Q5.地域で継続した制度として定着させるためには市町村など自治体との協働が欠かせないと思います。財政難の中でも自治体に期待できる分野、NPOなどが寄付などで活動をつなぐ必要がある分野などご経験上教えていただけますと有り難いです。また協働までもっていく際に必要なことはどのようなことでしょうか。

自治体は、法律や制度で決まっている事業を実施する必要がありますので、これらの事業の成果につながることであれば、比較的連携しやすいのかもしれません。しかし、そうでないものは、現場の保健師さんなどが日々必要だと感じていることがあっても、積極的に実施し、事業化まで持っていくには難しく時間がかかると思います。この後者のほうについては、自由が利くNPOなどで問題や活動の必要性などを顕在化させていくようなことができるとよいのではないかなと、個人的に感じます。
また、自治体(保健センター等)との協働で進めていくためには、NPOなど自身も自治体の現場の方々が困っておられることを理解するように努めることが必要だと思います。そして、自治体の方々が、直接かかわる機会のある外国人母子ケース以外で、実際に外国人母子がどのようなことを思い、困っているのか、知ることができるような機会を一緒に作っていくことも大事だと思っています。
そのうえで、一緒に、解決したい地域の課題の共通認識をもって、それぞれの強みを活かしながら何ができるか一緒に考えていけると、少しずつよい方向へ向かっていけるのではないかと感じています。(山本裕子)

在日外国人支援事業担当 松尾沙織

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