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平成のベストアルバム31

なんか大晦日が来たみたいな気分で過ごしている平成最後の日。とっくの昔に選出は終わっていたけれど、コメントつけながらしみじみと過ごしました。全曲が完璧に配置された文句なしの30枚を50音順に、そして音楽を聴くことのルーツになった1枚をプラスワン。こういうものが好き、という自分を令和にもしっかりとパスして、好きなものばかり聴いていたいものです。

1.andymori 『andymori

一発目のドラムの音でブチ上がらない人間なんている?!剥き身ですっ転がり続けるロックンロール、野性を迸らせて輝くゼロ年代最後の奇跡だ。激しく苛立ちを募らせる面も、牧歌的に流れゆく表情も、どちらも彼らの等身大であり、鳴らしたかった姿なのだろう。もう居ないバンドだけど、再生すればテイクイットイージーってまた同じ声で繰り返してくれるんだろうね!

2.シュノーケル『EQ

これぞ!っていうキャッチコピーが無いと売れづらい風潮は2000年代ずっとあった気がして。勢いづく同世代バンドの傍らで"妄想系ロック"であったり、"3人とも眼鏡"であったり、迷いながらもメジャーで試行錯誤を続けたその結晶。ナードかつ繊細な心情を幅広いアレンジで見せるバラエティとアイデア豊かな12曲。西村晋弥を喉から絞り出すような歌い方がとても好きだ。

3.きのこ帝国『渦になる

このバンドは歴史を追って聴けば分かる通り、ソングライター佐藤千亜妃の魂の解放がそのままディスコグラフィーに映し出されている。その起点である本作は、未整理で混沌とした生活感情がぶつけられている。暗闇の底からじっと光を見つめているような、絶望の淵でそっと希望を摘み取ろうとしているような。轟音の中で儚げに移ろう清澄な歌声に吸い込まれそうになる。

4.LILI LIMIT『a.k.a

彼らにとって唯一のフルアルバムとなってしまった。解体・構築を自在に繰り広げるスマートなトラックに、クールさと愛嬌を織り交ぜた詞世界、一貫して涙腺を揺らしてくるメロディの三位一体が心地良い。洗練されきったアートワークからも分かる通り、どの界隈にも属さない(せない?)異端さが強みであり、この業界を乗りこなすには歪すぎたのかなぁ、と思っている。

5.星野源『エピソード』

2011年の3月に「くだらないの中に」がリリースされたこと、偶然なんだろうけど、やはり大きな意味を感じる。<僕は時代のものじゃなくて あなたのものになりたい>というフレーズは今では別の大義を持つけど、当時はこの作品を貫くテーマとして温かく鳴り響く。フォーキーな質感を大事にしつつ、今に通ずるグルーヴも徐々に獲得しつつある。過渡期ならではの旨味。

6.パスピエ『演出家出演

匿名的な存在からメジャーへと向かっていく時期、徐々に表舞台へと開け放たれていく様子が刻まれたメルクマールな一作。ハイパーな音楽偏差値を持ち寄って緻密に構築された特有のレトロフューチャーサウンド、コケティッシュなボーカルで繰り出されるしなやかなポップソングたち、今でもライブの場で重要であり続けている曲が多いのも、良い1stアルバムの証拠だろう。

7.GOING UNDER GROUND『かよわきエナジー

カントリーロードをがっつり引用して許されるの、彼らくらいだよなぁと感嘆せざるを得ない。青き日々の欠片たちがほろほろと零れ落ちてきて思い出のくすぐったいところに辿り着いてくる。独り暮らしを始めてから聴き狂っていたのは寂しさの現れだったのかも。マックスバリュで買い物した帰り道、夕暮れ時の町外れで聴いた記憶。佐賀の田園風景が目に浮かぶ。

8.私立恵比寿中学『金八

戯れ合って笑い合う日、悲しくて悔しくて泣いちゃう日、どんな日々も眩しい音楽へと変えて僕らの元へと降り注いでくる。アイドルを辞めた女の子の心情を描いた「蛍の光」を最後に置くことで、アルバム全体を泡沫の如く消えた日常のように聴かせてしまう構成もあまりにも切なくて尊い。エビ中を謳歌する日々、その永遠と刹那を表裏一体で描いた鮮烈な成長記録。

9.フジファブリック『CHRONICLE

志村正彦・存命時のラストアルバム。パワーポップを主体としたシンプルなアレンジが際立った一作。ナイーブな心情吐露が生々しく綴られた歌詞も、過去作と比べると強い人間味を与えてくれる。派手さはないのだけど、「同じ月」とか「バウムクーヘン」みたいな、キュンとなるメロディで普遍的なことを歌う姿もフジファブリックがこの後に引き継いでいく魅力の一つだ。

10.UNISON SQUARE GARDEN『CIDER ROAD』

ポップであることを突き詰めると狂気すら孕んだ過激さを帯びることがビシビシ伝わる1枚。聴いてると血圧が上がりまくり。キラキラしながらもバチバチに鬩ぎ合うグルーヴ、ストリングスもホーンもピアノも丸呑みした全部盛りなアレンジ、栄養過多だよ、、と苦笑する程にはエクストリームな62分。セカイ系を通過しながら「僕」と「君」の物語に仕上げた歌詞も素敵。

11.サカナクション『sakanaction

自分たちがどういう存在であるべきか、何を残していくべきか、考えに考えすぎるあまりここから6年間アルバムが出ない事態になるわけで。そんなこと微塵も予想もしてない折に、まさにシーンのトップランカーへと踊り出た季節をパッケージしたバッキバキな作品。「ミュージック」という1つの到達点のような曲もあり、セルフタイトルを冠するに相応しい正確さがある。

12.米津玄師『diorama』

ボカロシーンを通ってきていなかったので、ROCKIN'ON JAPANに載っていたこの不気味なジャケットは新鮮なものに映った。曲を聴いたらさらに衝撃、BUMP、RADの文脈にそぐいながらも、アクの強い節回しと乾いた歌声が圧倒的な新世代感を見せつけてくれた。箱庭的に作り込まれた架空の街でのはみ出し者たちの群像劇というコンセプトも、神聖な没入感を与える。

13.クリープハイプ『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ

2012年以降のギターロックブーム、その口火を切ったメジャーデビュー作。鬱屈した毎日を金切り声で叫び続けたインディーズ時代の名曲たちが、容赦なく押し寄せる。緩急ありながらも、どれも今しかないという鬼気迫った12曲。フェス的な快楽からは遠いはずなのに四つ打ちバンドの筆頭になったり、この後待ち受ける怒涛の活動を目前にした、ギラついた視線を感じる。

14.BUMP OF CHICKEN『jupitar』

2000年代以降のロックバンドたちを語るうえで、"線の細さ"と"信者"という切り口っていうのが絶対にあると思うのだけど、その大ボスが2002年に投下したメジャー1st。孤独と向き合い、自らの実存性について自問自答し続けている藤原基央の「天体観測」周辺の感情が渦巻いている。「メロディーフラッグ」がとても好きだ、いつ聴いてもその切実さに身震いをしてしまう。

15.さよならポニーテール『青春ファンタジア

形無きガールズグループの2nd。癒しのエッセンスは残しつつも、メンバーが増えたことでボーカルの折り重なりも豊潤になり、音楽性はより華やかに。つまりは実態のないアイドルとしての姿を手に入れた意欲作。首謀者・クロネコのJ-POPに対するサブカルチャー越しの憧憬が、特有のフェティシズムと共に刻印されてある。ほっこりのフリした濃い目のこじらせポップ。

16.大森靖子『絶対少女

アンダーグラウンドは東京にしかないんだよ、と歌った彼女の音楽が僕の元まで届いてくれた。アコギを温かく聴かせることせず、意志を無加工に吐き出した歌声とともに、鋭くグサグサと突き刺してくる。神経を尖らせて拾い上げた生活の描写は無数のカルチャーの先で轟いたオリジナリティの塊。<君も可愛く生きててね>という言葉が僕の中の"女の子"を拡張させ続ける。

17.ストレイテナー『TITLE

今でこそ人間味たっぷりのイケてるおじさんたちという印象だけど、初めて聴いた時は歌ってる事象の曖昧性や抽象性ゆえ、すごく幻想的で尖ったロックバンドってイメージだった。そんな時期、溢れるアイデアを3ピースの熾烈な演奏で構築したエネルギッシュなメジャー2nd。アジカンのソルファ的に、この作品を今の4ピースで録り直したテイクも聴きたい、なんて妄想。

18.ザ・なつやすみバンド『TNB!』

大学1年の夏に聴いて、あまりのノスタルジーに発狂しそうになった思い出。彼女たちが初めて作ったという「自転車」が特に危険で。この曲のシメの歌詞がこの世のものとは思えない尊さ。<世界が忘れそうなちっぽけなことも/ここではかがやく/振り向かないよいま/あと少しくらい君と笑いたいなぁ>ですよ!読むだけで号泣。この一節がアルバム評としても機能してる

19.the pillows『PIED PIPER

avex移籍後、人気上昇が止まらぬ状況下で届けられた15th。「Ladybird Girl」「Tokyo Bambi」「New Animal」というタイプの異なる3つのシングル攻勢だけでも極上の仕上がりだったけど、アルバム曲もどれもハイクオリティ。「No Surreder」と「Across the metropolis」が共存してるって贅沢。メロディの胸キュン率も異様に高くて、僕の好きなピロウズが詰まってる。

20.ももいろクローバーZ『バトル アンド ロマンス

自分がアイドルを聴くきっかけとなった重要作。今に至るまで、スターダストプロモーションのグループを偏愛し続けてるのも、このアルバムにみちみちに詰め込まれたオルタナティブなポップネスと、それでいて純真なるエンターテイメント精神の両立が、スタダにはしっかりと受け継がれ続けているから。生まれ変わったら自分もスタダに入りたいって、思いませんか、ね!

21.Enjoy Music Club『FOREVER

あの娘がカラオケで歌った曲が頭から離れなくなったり、予定もなく家にいる夏休みのことだったり、目的なく夜通しお喋りしたことだったり、あぁこれ知ってる場面だなぁと、にこにことしみじみしながら聴いてしまう。ラップというものに苦手意識があったけど、そういうマインドだからこそ綴れるリリックがあり、そしてそれは狂おしい程に生活にタッチしてくる。

22.マキシマム ザ ホルモン『ぶっ生き返す!』

劇画タッチのフリして実は赤塚不二夫・作みたいなところが可愛くて堪らないバンドだ。彼らを知ってしまうと、他のラウドバンドだとどうも物足りなく。そのハイカロリーで脂ぎった楽曲に、日本語の響きに新たな命を吹き込む歌詞、そしておもしろ至上主義なとこ。「ぶっ殺す」の真逆をタイトルに冠した、地獄の底からポジティブへ、みたいなスタンスもカッコ良すぎる。

23.フレンズ『ベビー誕生!

根っこがオシャレな人間ではないので、2010年代後半のシティポップな潮流には芯からは着いていけなかったのだけど、フレンズだけはフェイバリットになった。てかこれはタウンポップなんですよね、日常を生きる僕たちが口ずさんで輝く、そういうポケットサイズなグッドミュージック。心地よくステップを踏みながら、何となく君を思い浮かべて、少し切なくなれる音楽。

24.レミオロメン『HORIZON』

2000年代前半のfromライブハウスなロックバンドで、唯一お茶の間へとダイブして成功した彼ら。ポップソングとしての強度を高めた、筆走りすぎな小林武史の華やかなプロデュースも、状況を加速させる追い風として作用している。終盤、「粉雪」を挟む2曲「紙ふぶき」と「流星」が特に素晴らしい。彼らの本質は、空気感を立ち上げる風景描写であることを強く示す。

25.チャットモンチー『耳鳴り

平成のアルバムタイトル大賞でしょう。こう名付けるに相応しいヒリヒリ感がある。クラスの隅っこで滾らせている思いを炸裂させた等身大で鮮烈な楽曲たちは、ガールズバンドという存在を再定義し、後世へと計り知れない影響をもたらした。僕個人には女の子の恐ろしさみたいなのを教えてくれたな、<だからあなたは私を手放せない>ですからね、<だから>の怖さよ!

26.monobright『monobright two』

「アナタMAGIC」や「あの透明感と少年」のようなポップに弾けるナンバーもあれば、「踊る脳」や「WARP」といった変態的でストレンジな曲もあり、「涙色フラストレーション」や「別の海」といった聴かせる歌モノもある。人間のがそれぞれの曲を貫き彼らのカラーに染め上げている。ラストの「歌も僕との妄想」「music wonder」で溢れ出す音楽愛にもグッとくる。

27.ELLEGARDEN『RIOT ON THE GRILL

今に至るまで、自分の中ではパンクロック=エルレという図式で固定されすぎているくらいには絶対的なレジェンド。シーンを駆け上がっていく中で届けられた4th。どこまでもヒロイックでマッチョな在り方を我々に見せてくれながらも、思い悩んだ内情も明け透けにしてドキュメントで在り続けた彼らの、最高潮の記録。情けなさすらも直線的なサウンドでぶん投げてくれる。

28.小沢健二『LIFE

90年代の大半をバブバブ言いながら過ごした身としては、その世代というのを感知するのがなかなかに難しく。しかし、エヴァとオザケンには当時のフィーリングが真空パッケージされている気がして。バブル崩壊の先で繰り広げられる軽やかな恋愛模様、そのまま人生観へと接続していく切実な筆致は、不安定な今を生きる僕らにも届く。このウキウキはハリボテじゃないよ

29.Base Ball Bear『(WHAT IS THE)LOVE & POP?』

輝かしいタイアップラッシュ、その先で待ち受けていたはずのキラキラの未来から少しズレて到着したのは、過去と今を往来しながら自問自答し続ける、小出祐介の心象映像だった。<100があるなら100が欲しい>彼の、<一生消えぬ感覚>のストイックな追求。それがラブであり、ポップであることに帰結していくからベボベって本当に面白い。ついていきたいと思えるのだ。

30.ASIAN KUNG-FU GENERATION『ワールド ワールド ワールド

2008年の3作は全て屈指の名盤揃いでどれを選ぶか迷ったのだけど、塞ぎ込んでいた季節を通過して、「新しい世界」へと突入せんとする冒険譚のような今作を。セッションの果てで手にした多彩なサウンドで描き出す世界と自分の在り方を探る心の旅。夜~朝へと時系列で辿り、徐々に開け放たれていくコンセプチュアルな作風は、血の通ったメッセージを伝えるのに最適。

31.ORANGE RANGE『musiQ

ベストトラックで言及したトンガリキッズが出ていたMステに一緒に出演していた彼ら。そこで知ったのだけど、何だか楽しそうで凄く良かった。そこから音楽を好きになっていくので、本当の意味での原点かも。音楽性としては今はそこまでど真ん中じゃないけれど、バリエーションが豊かであったり、メロディが良かったり、好きなポイントとして重要なものが揃っている。

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