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オンラインライブを観た㉑(10.30 tricot/11.1 カクバリズムの文化祭)


10.30 tricot メジャーセカンドフルアルバム「10」スペシャル配信ライヴ「10」

tricot、今年2枚目のフルアルバム『10』のリリースを記念したスタジオライブ。2月の『真っ黒』がシックな仕上がりだったのに対し、『10』は幅も広く抜けの良い印象。リモート制作によって生まれた多彩な楽曲、例えば「あげない」は1フレーズのループの中で見せるメロウさがあり、「WARP」ではラップめいた関西弁のまくしたても導入。音源だけでも驚きがあったが、ライブでは中嶋イッキュウ(Vo/Gt)がハンドマイクでの歌唱だから更に驚き。10周年ということで総括するわけでなく、この瞬間にも新たな形状を獲得していく。中でも中嶋に加え、キダ・モティフォ(Gt)、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba)の3人で歌の掛け合いで見せる「サマーナイトタウン」の爽快さったらない。

『真っ黒』からのみならず、歴代アルバムを満遍なく掠める過去曲のチョイスも良かった。吉田雄介(Dr)のしなやかなプレイが光る「18,19」から怒涛のライブ(ダイブ?)ソング「99.974」へと引き上げ、『10』1曲目の「おまえ」への流れは白熱した。ところで「おまえ」、本当にtricot?と思う程に真っ向勝負なビート。もはやこれ程シンプルなサウンドデザイン、シンプルな言葉遣いですらtricotになってしまうのだろう。テクニカルな「悪戯」も、サビはドレミファソラシドで駆け上がる健やかなメロディだし、複雑にも簡潔にもどちらにも伸ばしていける現在地がある。その究極は口笛の音色と日常描写の先に切ない世界観を広げる「炒飯」だろう。つくづく驚きの多いバンド。

終盤「幽霊船」以降のしんみりと聴かせる流れも素晴らしい。「Laststep」が10年越しのバンドアレンジを果たし、クライマックスを彩る大曲としてリブートされた歓びよ。絶対リアルライブで聴くからな!ラストは近年のシメ定番、さっぱりとした「メロンソーダ」。<人類はずっと滅亡しないじゃない>という歌詞は諦念が滲んでいたはずだが今はなんだか安心感すら覚える言葉。暴発的なエナジーを蓄えながら、この時代をもtricotは生き延びた。

<setlist>
1.あげない
2.WARP
3.右脳左脳
4.よそいき
5.サマーナイトタウン
6.ポークジンジャー
7.18,19
8.99.974
9.おまえ
10.あふれる
11.悪戯
12.なか
13.炒飯
14.幽霊船
15.Laststep
16.メロンソーダ


11.02 カクバリズムの文化祭 "SUMMER STAGE"

安全安心のグッドミュージックブランド・カクバリズムによる事務所イベント。無観客の恵比寿LIQUID ROOMにて収録されたSUMMER STAGEを観た。ヤシの木とスモークでさながら真夜中の海辺のようなシチュエーションの中、1組目はスカート澤部渡の弾き語り。「在宅・月光密造の夜」と違い、エレキギターによる演奏。より寂寥感を増した「標識の影・鉄塔の影」、穏やかな「離れて暮らす二人のために」(大好き)もぽつんとした気分たっぷり。アコギにある温かみとはまた異なる質感だ。「ストーリー」や「回想」では激しいカッティングも交えた熱のあるプレイでひと盛り上がりした後、岡村靖幸「カルアミルク」のカバー!シンプルな伴奏の中、澤部さんの柔らかくもソウルフルな歌声がぴったりくる。チョイスは意外なようでいて、その芯はすごく近いような。「君がいるなら」「駆ける」とじっくり聴かせた後に「静かな夜がいい」でシメ。そういえば、ラスサビ前でギターを弾かないアレンジがちょっと変わってた!ジャキジャキって入れてくるの、ドキドキする。

カクバリズム所属ではないがゲストバンドとしてHomecomingsも登場。畳野彩加(Vo/Gt)の弾き語りは何度かコロナ禍でも観たことあったがバンドセットの映像は久々に見る。たった4曲だったがかけがえのない時間を慈しむような丁寧な演奏だった。と見せかけて「Cakes」のギターソロなんか超太い音だし、ところどころに垣間見れるロックバンドとしてのタフさも健在。長くアンビエントなオープニングを付与して鳴らされた「Blue Hour」のループ感にはすっかり酔いしれてしまった。色を塗り足していくみたいなグルーヴだ。

キセルも素晴らしかった。のどかでありながらサイケデリックな風味もある。6曲しかやってなかったのか?と思う程、時間が雄大に感じられる。お兄ちゃんのほうが長野の居住地から配信していた「寝言の時間」でのアレンジを基に再構築された2人の音で紡がれる新verの楽曲たち、よりオーガニックな耳触りである。カクバリズムの選手層の厚さを思い知れる文化祭だった。

<setlist>
スカート

1.標識の影・鉄塔の影
2.離れて暮らす二人のために
3.ストーリー
4.回想
5.カルアミルク(岡村靖幸)
6.君がいるなら
7.駆ける
8.静かな夜がいい 

Homecomings
1.Hull down
2.Cakes
3.Blue Hour
4.Songbirds

キセル
1.手紙
2.君と旅
3.覚めないの
4.くちなしの丘
5.草葉の陰まで
6.たまにはね

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