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フジファブリック、僕なりの15曲

2019年はフジファブリック、メジャーデビュー15周年。本日、2019年11月10日は1stアルバム『フジファブリック』のリリースからちょうど15年。幾つも困難を抱えながらもバンドをグレードアップしてきた歴史、アルバム単位どころか1曲ごとに変貌する楽曲たち、推しポイントは多々あるが。しかし、ストレートに書いてても多すぎてキリがない。なので、好きな曲をピックアップしてその良さに浸りつつ、15周年記念がてらの推し語りとしたい。

選定基準は、今年8月に発表されたファン投票ベスト用の楽曲の人気投票↑。EMI、ソニーミュージック、それぞれのレーベルで発表した楽曲から選ばれたベスト30が発表されているのだけど、この60曲以外から15曲を選んだ。ベスト60曲にはふんだんにフジファブリックの魅力が網羅されているので蛇足なことは承知のうえ。密かに僕が愛する15曲について。リリース順に語る。

(以下のLINE MUSICリンクが僕なりの15曲プレイリストです↓) 

1.桜並木、二つの傘
テロテロしたイントロからいきなり語るような歌い出しに不意を衝かれるし、声を張り上げたかと思いきやもう1度語り出すし、サビはスキャット。どこを切り取ってもクセだらけの和モノ桜ソング。リテイク版がメジャー1stシングル「桜の季節」にカップリングされている。2曲セットで"四季盤-春"って今考えると渋すぎるプロモーション法だけど、本質的で的を射てる。

2.夜汽車
2004年の1stアルバム『フジファブリック』のラストソング。四季盤というリリース形態やMVの質感など、デビュー期のフジは情緒的な面が強い。この楽曲もアコースティックギターとアコーディオンで構築されたイントロや淡々としながらもじわりと沁みてくる曲展開でじっくり浸れる。ふわぁっと鳴り続けるキーボードの音色が、夜が纏う空気を醸し出してくれている。

3.ベースボールは終わらない
野球部だった志村正彦、その少年時代のシーンを思い浮かべるような大人の草野球ソング。軽快に跳ねるピアノとゆらゆらしたギターが、灼熱のグラウンドを再現。サビで弾けるファルセットなコーラスワークにも胸がキュンとなる。上空に映した君の顔は、きっとあの頃の志村少年なんだろうな、と。奥田民生に憧れシンガーを志す前の彼の原風景にも思いを馳せられる1曲。

4.Birthday
2005年の2ndアルバム『FAB FOX』は彼らの音楽の多様さが各ベクトルで詰め込まれたハイカロリーなものだったが、その終盤を彩る温かな瞬間を切り取った1曲。じゃかじゃかしたアコギのストロークが高揚した気持ちを演出している。強い感傷とはまた異なる、ほっこりとした面もこの辺りから顔を出し始める。後の『CHRONICLE』に繋がる、志村の心境吐露曲。でもある。

5.蒼い鳥
個人的には、フジを知ってからリアルタイムで初めて聴いた新曲だった。全然リリースのなかった2006年にフジの存在を知ったので、2007年の年明けに急に出たのがコレで唖然とした。怖い!おかしくなりそう!そんな感想を抱きつつも、7分間を何度も繰り返して聴けてしまう不気味な中毒性。フジに完全に虜になった1曲だった。主題歌だった映画「悪夢探偵」も割と好き。

6.パッション・フルーツ
「蒼い鳥」「Surfer king」と来て、コレ。2007年は濃い。この後に「若者のすべて」が出るのだから振り返っても訳が分からない。この曲も、チャカポコしたリズムにピコピコなシンセが踊るダンスポップチューン。当時としては新機軸すぎたけど、しっかり残るフジファブリック印。このアプローチは、フレデリックやパスピエなどの後進のバンドにも影響を与えてる気が。

7.まばたき
2008年の3rdアルバム『TEENAGER』、唯一の山内総一郎作曲。当時は「僕が作ると暗い曲が多い」と語っていた山内、その真骨頂のようなアンニュイさを帯びた落ち着いたメロディ(とはいえ同時期にはアッパーな「スパイダーとバレリーナ」も作っていたり、作風は既に幅広かった)。そこにうじうじと思い悩む志村の心象が混ざり合っている。理想的なタッグで生まれた1曲だ。

8.同じ月
主にストックホルムで録音された2009年の4thアルバム『CHRONICLE』の中で、「Sugar!!」と共に亀田誠治の編曲で日本レコーディングされた1曲。分厚いサウンドに恋人と別れた男、というか志村自身のやるせない後悔を乗せてある。『CHRONICLE』の曲はだいたい全部そう。パワーポップの突き抜けた音像でなされる生々しい独白。大人になってだんだん分かってきた痛み。

9.Hello
志村急逝後に制作された2010年の5thアルバム『MUSIC』。メレンゲのクボケンジと共作していたデモを元に作られた。当時のフジファブリックとしては珍しい打ち込み主体のハイファイな1曲。ちらちらと『CHRONICLE』期の苦悩が滲んでいるが、それでも次の扉を開けようとする胸の高鳴りが描かれている。志村は前を向こうとしていたのだ。その意志が強く刻まれている。

10.アンダルシア
完全な3人体制で作られた2011年の6thアルバム『STAR』。小気味よい歌が多く揃った本作の中でも屈指のポップさを誇る1曲。スペイシーな電子音が効いたサウンドは作曲がキーボード金澤ダイスケ。シュールで掴みどころのない歌詞を担当したのはベース加藤慎一。両者ともこれまではあまり見せてこなかった才気を炸裂させながら、フジファブリックの再始動が幕を開けた。

11.パレード
「次のアルバムは小沢健二『LIFE』みたいになる」と『CHRONICLE』制作時に語っていたという志村の遺志を引き継いだかのような痛快なナンバー。スカパラホーンズが華を添えたゴージャスなサウンドは、フジファブリックの帰還を祝福しているかのよう。こういう恋愛真っ只中のドキドキ感をキラキラした瞳で歌う曲は山内が詞を書くようになってから出てきたなぁと。

12.Light Flight
2013年の7thアルバム『VOYAGER』収録の13thシングル。元気のよい曲が多かった3人体制以降、久しぶりに彼らの持つセンチメンタルな部分を全面に出したバラード。ボーカルを務めることになった山内総一郎の歌心が徐々に開花していく間際の純粋な声が収められた1曲。ノスタルジーを刺激する歌詞も見事な筆致でまとめられており、バンドの強度を確固たるものにした。

13.卒業
2014年のメジャーデビュー10周年を記念した8thアルバム『LIFE』は、メインソングライターとなった山内総一郎の歌う意味やありのままの姿が投影された、山内版『CHRONICLE』とも呼べる作品で。その壮大な人生史を締めくくる、ひときわフォーキーで青春性の強い1曲。誰もが別れを経て新しい世界へと飛び出していく。そんな晴れた気持ちを、神秘的な音像に映し出した。

14.マボロシの街
2015年の企画盤『BOYS』『GIRLS』、そのボーイズサイドに収録。不安より期待がいっぱいで、未来へのイノセントな希望が満ち溢れていた少年時代。記憶の果てにある、あの頃の恋の少し手前みたいなきゅんとなるフィーリングを描いた1曲。「アンダルシア」と同じ座組でこんなにも違う曲ができるのか、とその創作性に震えた1曲。ラスサビ前のCメロの感傷に鳥肌が立つ。

15.the light
2016年の9thアルバム『STAND!!』を締めくくる静謐なナンバー。元々はピアノ弾き語りの予定だったようだが、ヘヴィで硬質なビートをあててアンビエントさやダンスミュージックの風味も取り込んだ1曲に仕上がった。ジャンルレスなバンドであることは言うまでもないが、常に最新の音楽も着目し、それをモノにしていく姿勢はこのバンドを常に生まれ変わらせ続けている。


とにかく、あらゆる角度から切り取れるバンドがフジファブリックである。シングル集でもとんでもない多様性を見せつけるし、センチメンタルな曲、無茶苦茶な曲をそれぞれプレイリストにしてもそのバリエーションの豊かさにきっと驚くことになるはず。15周年イヤーである今年も、既に傑作の10thアルバム『F』や、タイアップシングル「ゴールデンタイム」と、アニバーサリーであることに胡坐をかかずに、積極的なリリース攻勢を続けている。

「志村君が始めたバンドなのだから自分たちに解散する権利はない」と、今年は各地のライブで宣言している。これ程までに刷新された音楽を毎回提示するバンドが永遠に続けることを確約している。こんなにも喜ばしく頼もしいことはない。志村の音楽に魅了され集まった3人が、その「音楽」のために活動を継続していく。当たり前のようでいて実に重要なアイデンティティだ。フジファブリックの最も推せるポイントは、いつだって音楽を中心に存在し、音楽を自由に楽しみ、自身の音楽に真摯に取り組むその姿勢だ。

(フジファブリックのアーティストページへのリンクです↓)

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